電車にのっていたら、「金持ちになる男、貧乏になる男」というサンマーク出版の新刊広告が目に入りました。数百人以上の億万長者に会って、金持ちになる人の考え方がわかったとのこと。広告には、対照的な存在として、貧乏になる人の考え方も記されています。


「この手の本、あきずによく出るよなー。」

「ナポレオン・ヒルが、、鉄鋼王カーネギーの依頼で、成功者500人にインタビューしてまとめた成功哲学が、1900年代前半にベストセラーになったけど、以来、同じパターンの本が出続けているよなー」

「金持ち父さん貧乏父さんなんて本も、ちょっと前にベストセラーになったっけ」

「そういえば、スピリチュアルビジネスでよく見かける穴口恵子さんも、何かの研修ツアーで会ったお金持ちがいかに素晴らしい人か強調して、あたかもお金持ちイコール素晴らしい人格者のようにお話されていたけど、この手の本を沢山読むと、穴口さんのような価値観になるのかな」


などなど思いつつ、大事なことに気が付きました。


この手のお金もうけ本が、なぜ米国から多数発信されているか?そこには、日本人はほとんど知らない米国の宗教的背景があります。


キリスト教プロテスタントのある学派では、「予定説」という考え方があります。この予定説、欧州では異端とされていますが、その異端とされた人達が新大陸へ渡航して米国が誕生したといういきさつがあり、米国のキリスト教においては、主流の考え方です。


何が特徴的なのか。予定説によると、ある人物が神の救済にあずかれるか(神の国に入れるか)どうかは、生まれた時から予め決定されているというものです。この人生で、どんなに善い生き方をしようと、教会にいくら寄付をしようと、神がその人を救済するかどうかには、全く関係が無いというのです。


じゃ、善い事しようと悪い事しようと、一生けん命生きようと自堕落に生きようと、どうでもいいじゃないか!となるかと思いきゃ、そうはならなかったのです。


どうなったか。米国人キリスト教徒は、「私は神から救われることを予定されている人間なのです」と証明しようとするようになったのです。


その証明の証が、成功者になること。お金持ちになること。


この辺の理屈は私もよくわからないのですが、金持ちになると人は善行をするらしいのです(笑) 神の意思というか神の見えざる手のようなものが働くそうなのです。


ただし、政府が、金持ちから高い税金を取って貧乏人に回すような、人為的所得移転を行なってはいけない。自由な状態にすればするほど、神の意思が働きやすくなるので、税金を取るような「不自然なこと」をしてはいけないそうなのです(苦笑)自由な状態にしておけば、神の意思が働いて、金持ちは立派な振舞いをし、貧乏人を救いあげもするというのです。だから米国人の金持ち・成功者は、チャリティーに積極的なのです。それは「私は救われる予定の人間です」と社会に証明する行為なのです。


だから飽きもせず、「どうやったら金持ちになれるか?成功者になれるか?」という本が長年大量に売れ続けるわけです。


さて、じゃ日本ではなぜ売れるのか、不思議になってきますね。金持ちになるための啓発本が好きな人は多数いますが、おそらくほぼ全員、上記のような宗教的背景は無いはずです。


では、ただ単に金が欲しい・成功したい、というだけなのでしょうか?それでは、あまりにも浅ましいです。で、そういう浅ましい人間は成功しません。


日本でも、実は「日本で金持ち・成功者になる人の研究」というのも、雑誌PRESIDENTのような所がやっておりまして、収入の多い人で、前述したようなビジネス書・自己啓発書の類を読む人は、ほとんどいません。


じゃどういう本を読むかというと、専門書です。あるいは歴史書のような硬派で読み応えのある内容のものを読みます。ビジネス書・自己啓発書の作家さんで成功している人達も、普段は難しい本を読んでいます。


己の職業に対して、いかに誠実に自分を磨き続けられるか。結局は、そこが一番大切なことなのだと、一人の社会人として認識する次第です。