ふとした瞬間、自分はなんて美しく成長したのだろう、と思うことがある。
それは街中のショウウィンドウに映る姿や、鏡に映る何気ない顔を見てだ。
決して鏡を見ていると意識している時の表情ではなく、むしろ何も考えていない時にそれは起きる。
思い返すと、25歳を過ぎたあたりからそう思うことが増えたが、いつか逆に衰えを感じるのだろうか。あと数ヶ月で29歳になる藤本理紗はぼんやりと考えた。
世間ではアラサー真っ只中と言われる年頃で、少しでも若いうちが結婚するには有利と考えて焦る友人も多い中、理紗は少々違っていた。
若い頃よりも、今の方がはるかに男からもてるからだ。
普通、大学時代や20代半ばまでが女の全盛期で、それからは徐々に衰えを感じるらしい。
しかし理紗の場合、若い頃は生まれ持った猫目や、若さゆえの瑞々しく張った肌が、どことなく全体的にきつい印象を与えていた。
社会経験の長さもあるだろう。理紗は名の通った短大の英文科を卒業した。
このご時世、短大卒は珍しいが決して理紗は後悔していない。
いくら勉強を頑張っても、自分は国立大学や有名私立大学に行けるほどの能力はないことを早々に理解していたからだ。
MARCHレベルの大学に行き、好きでもない勉強を4年間もするのなら、同じくらいの知名度と好感度がある短大へ行き、早くに就職する道を選んだのだ。
例えるならば、蛹の期間を持て余し、早く蝶になりたいと願う気持ちだ。
早くから社会に触れた分、学ぶことも多かった。それは仕事だけに関わらず、振る舞い方や人からどう見られているかなどだ。