【どうする家康・感想】第25話「はるかに遠い夢」 | たべあるにっき〜ご飯とお酒と芸能と〜

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「大河ドラマ」というのは「歴史年表の授業ではない」というのが良く伝わる回だと思った。

 

有名な五徳の「十二か条」を、瀬名が書かせたという描写が最高に良かった。

 

現実としても、あの内容は「あることないこと書かれていた」と言われているので

 

瀬名が、自分と信康のみを的にするために書かせたのなら納得いく流れだ。

 

瀬名の覚悟と慈愛、それを受けた五徳の覚悟。

 

見事としか言いようがない。

 

於大たちと別れを惜しむ瀬名が

 

「ここの草花をお持ちくだされ」

 

と築山の草花を分け与えていたのも印象的だった。

 

花はいつか種を生む、その種が芽吹きやがて花を咲かせる…

 

そうやって瀬名の意思が受け継がれていくという演出なのかもしれない。

 

信康の最期も見事でした!

 

父・家康の策通りに動けば、自分たちの命は助かる。

 

しかし、『徳川の家』という命を後々脅かしてしまう。

 

信康が、きっと誰よりも信頼していたであろう七に

 

「我が首を…しかと、信長に届けよ。儂が徳川を守ったんじゃ。見事、務めを果たしたと父上に…!」

 

と叫ぶように言うのがもう切なくてたまらない。

 

それでもどうしても介錯ができない七の気持ちも辛すぎる。

 

瀬名と信康になんとしても生きて欲しいという家康に

 

「貴方が守るべきは、国でございましょう」

 

と叱る瀬名も切なすぎた。

 

最初のころ、国を背負わされた…と言った家康に「ずいぶん思いものを背負わされましたなぁ」

と答えた瀬名が頭をよぎった。

 

後の世がどれだけ自分を悪辣な妻だと罵っても平気だと、

 

何故なら本当の自分は家康のなかにちゃんといるのだから…と。

 

家康さえわかっていてくれればいいのだという言葉に涙が溢れました。

 

泣きじゃくる家康に「弱虫、泣き虫、鼻水垂れの殿じゃ」と、

 

あの小さなころにかけた言葉をかける瀬名。

 

この回のために、幼少時代からを子役ではなくこの二人に演じさせたのだと私は思っています。

 

家康から預かっていた兎を返し

 

「いいですか。兎はずっと強うございます。狼よりずっとずっと強うございます」

 

という、瀬名の言葉も染みた。

 

家康は、きっとこの先も、弱くて優しい心を持ったまま強くなっていくのだろうね…。

 

茨の道だ。

 

最後に映ったのは、幼いころの思い出なのだろうか。

 

花がたくさん飾られた小さな籠舟に、女雛と男雛。

 

しかし、よく見ると舟に乗っているのは女雛だけ。

 

男雛は寄り添うように、でも船の外に置かれている…。

 

「はるかはるか遠い夢でございましたな」

 

女雛だけが舟で行ってしまう布石と、瀬名の言葉。

 

そして、家康の慟哭。

 

聞いていて、心が痛くてたまらなかった。

 

そして、瀬名と信長が自害したことを知った信長の怒り。

 

信長なりに家康にはあんな思いをさせたくなかったという思いもあったのだろうか。

 

同時に眠れる獅子(家康)を起してしまったかもしれないという思いもあったのかもしれない。

 

瀬名が悪女という記述は全て江戸時代になってから書かれたものという事もあり、

 

もしかしたら、真実はこうだったのかもしれないと思わせる、新解釈の回だったと思います。

 

しかし、役者陣が本当にすごい。

 

瀬名役の有村架純さんに対して、ネットなどでは一部で

 

「こんな若い瀬名はおかしい」なんて批判されていましたが、なにをいわんやだ。

 

ちょっとした仕草、話し方、所作にも少しづつ年齢を重ねたからこそ…

 

というものを滲ませている。

 

最後の最後まで「どうする家康」の瀬名らしく、

 

前向きで、家康の事、ひいては徳川の家、

 

三河という国のことを誰よりも大切に考えた戦国の女性らしい女性だった。

 

本当は、そうではなく、ただただ二人で生きていきたかっただけの

 

たおやかな女性だからこその「はるかはるか遠い夢でございましたな」。

 

見事に演じられていた。

 

瀬名を死なせたくなくて泣きじゃくる家康に

 

「弱虫、泣き虫、鼻水たれの殿じゃ」と言いながら、

 

そっと家康の腹を撫でてあげる瀬名の姿にも涙が出た。

 

築山から分けた草花が、いつか江戸でも駿府でも芽吹いたら良いな…と本気で思った。

 

いつかまた、あの花で飾られた穏やかな舟に

 

女雛も男雛も乗れたらいいなと感じさせる瀬名を演じ切った有村架純さんに

 

惜しみない拍手を送りたい。