知識としては知っていても、『戦い方が変わった』という出来事をこうも突き付けられると
さすがに、きた。
長篠の戦は、織田・徳川勢の圧勝で終わった。それは知っている。
しかし、それは今までの戦とは全く異なるシステマティックな戦い。
攻めかかってくる武田軍を、馬塞ぎの柵の隙間から火縄銃で撃つ。
撃ち終わった兵は後ろ回り、準備をしていた兵が最前線に出て撃つ。
入れ替わり立ち代わり銃から放たれる砲弾に、成すすべもなく倒れていく武田軍。
運よく火縄銃から逃れ柵にたどり着いた者は、容赦なく槍で突かれ死んでいく。
先陣を切ったあの山県昌景でさえも織田の元に辿りつけない。
その様子を呆気に取られた様子で見る家康たちをよそに、
「面白ぇように死んでいく~!実に愉快でごぜぇますなぁ!」
大はしゃぎする秀吉に、怒りがこみ上げる。
一体何丁の鉄砲を用意したのかと問う家康に、秀吉は冷静に「三千」と。
「最早兵が強いだけでは戦には勝てん。銭持っとるもんが勝つんだわ!最強たる武田兵も、虫けらのごとくだわ!」
と高笑いをする様には言葉が出なかった。
ムロツヨシさん、本当に凄いな。
舞台で放つのと同じサイズの演技を、TV画面に持ってくる(でも出すぎてない)
秀吉と家康の相いれなさが浮き彫りになって、すごくいい。
信長の、「最強の強者たちの最期を慎んで見届けよ。武田勝頼、見事なり」は、
これはそのまま『兵力』での戦の終焉を意味する言葉なのであろう。
兵の強さが競われる今までの戦であれば、勝頼は見事。
だがその時代は終わったのだと告げるような信長のセリフと、
それをうわ塗るように「総がかりじゃあ!一匹残らず殺すがやぁ!」と、
人を殺す事を楽しんでいるかのような秀吉の声にゾッとした。
そしてグッときたのが、家康の涙。
静かに、
誰にも気が付かれないくらいに静かに
一筋の涙が…たまらなかった。
徳川が信長の臣下となり、下された命は勝頼の討伐。
設楽原の戦で「これは、戦にございまするか…?これはなぶり殺しじゃ…」
呆然と言っていた信康は、先陣に立ち兵を鼓舞し、敵を倒し続けていく。
返り血を浴び、敵を殺し、その武功を自慢げに話すその様子は、箍が外れてしまったような、
そうすることでしか己を立たせられないのであろうという事が見てとれて切ない。
そんな信康の姿を見る瀬名も…。
織田の戦術としては間違っていないが、
圧倒的な力と恐怖で他者を制するものは、その過程で様々な軋轢を生み、
それが未来の不安の種となりやがて己の足を掬ってしまうのだなぁと、
深く考えさせられた回でした。