平成30年1月20日(土)熊本テルサ「テルサホール」にて熊本県老人福祉施設協議会主催平成29年度第35回熊本県老人福祉施設研究大会が開かれました。特別養護老人ホーム蕉夢苑は第35回大会にして初めて研究発表をしました。蕉夢苑の管理人と竹馬くんは熊本県老人福祉施設協議会の研修担当委員と書記の立場で裏方の仕事を仰せつかっていましたので、午前8時に会場入りしますと、私たち2人を除く関係者全員がすでに集合していて、しかも受付や配布資料の整理を済ませてありました。8時15分からリハーサル室にて簡単な打ち合わせ会が終わると、竹馬くんは駐車場係として外に飛び出していきました。4人が駐車場係に割り当てられていましたが、体調不良などの理由で急きょ2人で行うことになったので、竹馬くんは大変でした。午前9時から受け付け開始でしたが、準備が整っていたので会場に来られた方にはすぐに受付を済ませてもらってホール内に入ってもらいました。10時からの開始まで十分な時間の余裕がありましたから、スムーズに受付が終りました。さて研究発表者は15組。蕉夢苑は7番で、午後開始1番の発表でした。

 

さて、発表内容は以下のとおりでした。

老施協研修大会熊本県大会 杉村主任発表

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「稼働率99%をめざして」役割を果たす。特別養護老人ホーム蕉夢苑 杉村大樹

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まずは、御多分にもれず、施設の紹介をさせて頂きます。特別養護老人ホーム蕉夢苑は、社会福祉法人 宇医会立で、事業は、特養(50床)の他に短期入所(20床)通所介護、訪問介護、居宅介護支援、ケアハウスを行っております。場所は宇土半島の八代海側、国道266号線から少し上った丘の上にあり、四季折々、また朝な夕なに表情を変える八代海を望むことができるのも、施設のセールスポイントの一つです。近くに来られた折には、是非一度、お立ち寄り頂ければと思います。

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さて、今回当施設の目標としまして、特養の稼働率を99%といたしました。 当施設では、この数年稼働率が95%前後で推移していました。95%という数字を高いと感じるか、低いと感じるかは皆さんに委ねますが、やるべきことをやって95%を超えないのか、やるべきことをやらないで95%なのか、そこから取り組みはスタート致しました。

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ただ、その日の業務を行う事に慣れきっていた現状を変えなければならないと各部門ごとに稼働率が低い現状を把握し、課題を持ち自分達の役割を果たしていこうということから取り組んだ結果をここで報告させていただきます。今回発表します数字は、平成28年4月1日から平成29年3月31日までのものです。 ちなみに取組みの前年にあたる平成27年度は94.7%の稼働率でした

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稼働率99%の達成に向けて、3本の柱を立てることにしました。「3本柱」響きがいいですね。甲子園バックスリーン3連発の「ランディーバース、掛布、岡田」の阪神タイガースのクリーンアップを思い起こしますけどね。ちょっと古かったですかね。 蕉夢苑は①入院者を減らそう、②その人の最後を蕉夢苑で、③退所から入所までの期間を短く、この3本の柱を軸として取組みを行いました。

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まず、①入院者を減らす取り組みについてです。平成27年度の入院者は15名でした。 なかでも、高齢者の入院の原因となりやすい、肺炎が10名、骨折が2名と8割を占めていました。この現状を受け止めて、改善に取り組みました。

 ●先に、結果を見てもらいますが、平成28年度は、肺炎は1名、骨折は1名と、入院者数も9名となり改善を図る事ができました。

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入院者を減らす為の取り組みの一つとして、肺炎による入院を減らすことに重点を置きました。水分が足りないと「むせ」が起こりやすくなる為、水分摂取への取り組みを行いました。 一人一日あたり1500mlを目安としました。もちろん、個人差がありますし、持病がある場合にはDrに事前に相談し水分量を調整しています。水分摂取表を活用し、毎日の水分量を把握します。水分摂取量が少ない人には、職員が働きかけを行います。

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お茶やコーヒー、ゼリーなど本人が好む物を提供しています。また、糖尿やカロリー制限がある人には、お茶などで対応を行っております。水分摂取を行うことで、意識レベルの低下を防ぎ、嚥下の改善にもつながりました。

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入院者を減らす為の取り組みとして、二つ目は、機能訓練の実施、生活リハビリの実施です。出来るだけ、臥床の時間を減らし、離床の時間を増やしていただくように利用者の方にも声掛けを行っています。食事は基本、食堂です。3食とも食堂で行われる方が9割を超えていますが、ベッド上での食事を希望される方は、健康上に問題が無ければ、せめて1食だけでも食堂でという働きかけをおこなっています。

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 機能訓練も、例えば「買い物にいく」「自宅に帰る時間をもつ。」といった本人の意欲につながる目標をもってもらい、そのためにはどういうことをしていかなければならないのかを検討した上で、本人にも理解していただき、機能訓練や生活リハビリを行っています。日常生活動作についても、より安全に行えるようにということを目標として取り組んだことで、転倒骨折といったケースが減少しました。

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入院者を減らす取り組みの三つ目は、口腔ケアの実施です。まず食事形態について、入所時や入所後も、必要に応じて見直しを行っています。「なぜ、この人はこの食事の形態なのか」という問題意識を常に職員が持つようにして普段から観察を行い、本人の状態に合わせて食種の変更を随時行っています。

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 歯科医の訪問診療が定期的に行われており、出来るだけタイムリーな情報交換や連携を行っています。 食後の歯磨きや口腔ケア、義歯の管理といった、当たり前のことを確実に実行できるようにしてきました。そのことで、誤嚥性肺炎や他の病気の予防に繋がりました。 「水分摂取」「機能訓練」「口腔ケア」の3点の他にも、要因はあるとは思われますが、 それらの相乗効果で、誤嚥性肺炎や骨折されて入院される方が減少いたしました。  

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続きまして、2本目の柱「その人の最後を蕉夢苑で」ということで、看取りのことです。 平成27年度の当苑の退所者の経緯ですが、18件の退所があっており、その内、蕉夢苑での看取りは6名でした。

●こちらも、先に結果を見てもらいます。奇しくも平成28年も18件の退所があってい るので比較しやすいのですが、蕉夢苑での看取りが12名と前年度の2倍となってお ります。

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施設の取り組みとしては、普段から、本人にはもちろんのことですが、面会に来られた ときなどに、家族の方にも安心感を持って頂くことに努めてまいりました。基本的な事にはなりますが、接遇や家族とのコミュニケーションを少しでも取れるように力を入れてま いりました。また、事前には「蕉夢苑で看取りを」と希望されていても、実際、そういう判断を迫られる場合に不安になられる家族がいらっしゃいます。そういう場合も随時、変更が出来るということなど説明を行い、家族と話し合いの時間を重ねてまいりました。ありがたいことに、本人や家族から「住み慣れた蕉夢苑で最後までお願いします。」と言われる事が多くなりました。

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 稼働率99%を目指して、3本目の柱です。退所から入所までの期間を短くです。まず、平成27年度の退所から、次の方が入所されるまでの期間です。18名の方の退所、入所があっております。年間通して225日間の空床期間がありました。平均空床期間12.5日となります。つまり、退所があって次の方が入所されるまでに12日間かかっているということです。

 ●それが、28年度は、このようになっております。27年度と同じく18名の方の退所、 入所があっており、年間通しての空床期間が89日と前年比136日間短くなっています。  平均空床期間も4.9日と、退所から入所まで5日とかからなかったことになります。

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では、どのような取り組みをしたのかと申しますと、まずは、入所待機者の方の状態を早目に確認しに行く事を行っております。ベッドが空いてからの確認では、入所までの段取りなどを考えますと、どうしても日数がかかってしまいがちです。待機者の方の状態や本人、家族の意向を早目に確認しておくことで、速やかな入所に繋げることが出来ています。 次に、当苑のショートステイからの入所を増やせたことです。待機者の方の担当ケアマネジャーと調整を行い、もちろん本人、家族とも話を行った上でのことですが、ショートステイを利用していただき、蕉夢苑での生活になれて頂くようにしました。

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ショートステイ利用中に家族にも生活状況を見て頂き、施設職員との情報交換を行う事で、その時点での施設入所が本当に適しているかを判断していただく機会にもなりました。 施設側としても、施設職員が本人の身体状況や利用時の生活状況について知る事ができるというメリットに繋がっています。結果として、退所者が出た場合に、空床を作らずにスムーズな入所につなげる事が出来ています。

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以上の①入院者を減らそう、②その人の最後を蕉夢苑で、③退所から入所までの期間を短くの3本柱への取り組みによって、

 ●平成28年度は99%の稼働率を達成する事ができました。

 ●ただ、1年間だけではなく、2年、3年と続けていくことが大事です。ちなみに今年度も99%の稼働率を維持出来ております。

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今後の施設での課題として、3点をあげました。まず「骨折にこそならないが、転倒を繰り返される方がおられます。」

●たまたま、骨折に至っていないとだけで、いつ骨折入院になってもおかしくないわけです。その方へのどうすれば転倒が防げるかという根本的な対応が行ていません。むずかしいですね。

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2点目として、看取りの対応について、家族としては気持ちが変わられることもあります。

 ●当苑としては、タイムリーに家族の気持ちに寄り添う事が出来ることを理解していただくように努めていかなければならないと思っています。

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3点目として、待機者も短期間に状態変化があり、入所の順番が回って来ても、入所困難な状況がありました。冬場など、時期的影響もあると思いますが、

 ●待機者の方の状況については、常にタイムリーな情報収集が必要だと思っております。

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これからも、自分達のやるべき役割をしっかり果たしていく事で、稼働率99%を目指していきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。