南弘明氏作曲による『月下の一群・第3集』は上智大学グリー

クラブの委嘱により1985年に曲が完成され、同年の第20回

記念交歓演奏会にて初演されました。


この曲は1集及び2集と違い出版社より楽譜が出版されていません。

(なお2集の楽譜も現在絶版・・・悲しいことですが・・・・)

南弘明先生の自筆譜への書き込みから各曲の作曲日は以下の通りと

なっています。(S=昭和です。)


1.唄 ・・・ S60.5.1

2.太陽 ・・・ S60.4.11

3.シャンソン ・・・ S60.3.20

4.輪踊り ・・・ S58.3.2

5.人の一生 ・・・ S60.3.30


4曲目の「輪踊り」だけ2集の作曲時期と被っていますので、もしかしたら

この曲は2集に収められていた可能性があったかもしれませんね。


さて月下の一群第3集の1曲目はタイトルもそのものズバリの「唄」です。

1・2・3集、それぞれ核となる曲がありますが3集は1曲目の「唄」が

この3集でもっとも中心的と言っていい曲だと思います。

というか、この曲は月下の一群の一連のシリーズの中でも最も「月下の

一群」らしいというか、終始レベルの高い旋律の美しさ、情感あふれる

曲想で、月下の一群を作曲してきた中でたどり着いた一つの境地の

ような感覚を聴く度に覚えるのです。


この曲は形態としては2集の「夜曲」に近いもので、序盤は主旋律を

トップテナーが担当し、他パートがハミングでからんで曲が膨らんで

いくといくものですが、この曲も孤独・達観・渇望・・・といった感情の

うごめきが曲として美しく昇華されていて胸がしめつけられるような

気持ちを覚えます。


第3集の中で1曲だけどれを推薦するか、といえば間違いなくこの

「唄」をお勧めします。

それほどのマスターピース(最高傑作)です。


続く。