堀口大学訳詩、南弘明作曲の月下の一群シリーズの第2集は1集から
6年後の昭和58年(1983年)秋から翌年昭和59年(1984年)の2月
にかけて作曲されました。
南弘明氏は340編の元の訳詩集「月下の一群」から、恋の喜びや
はかなさ、ロマンティシズム、青年らしい陽気さ、美しく弱いものへの
優しさなどをうたったものを選んで作曲した、と述べてます。
この第2集も前回同様に広島崇徳高等学校グリークラブの委嘱により
作られたもので、高校生のような若い世代が感情移入できような青春を
歌いあげる詩を選んだのは想像にかたくないかと思います。
第1集は比較的シンプル路線に徹した部分が有りますが、この2集以降は
合唱もピアノのも音楽的に深みを増していて、歌い手としてはより合唱の
楽しみを奥深く味わえる作品群になっています。
さて、月下の一群第2集の1曲目は詩自体は結構有名な「雨の巷に」です。
1集の1曲目「小曲」は3集通しての全体のイントロみたいでしたが、2集は
1曲目からホ短調による激しいインパクト有る和音がsfで鳴らされ幕を明け
ます。そこからおもむろに降りしきる雨のようなピアノの伴奏と共に合唱が
悲壮感全開で入っていきます。
途中にテンポが緩み、アカペラでベース・バリトンパートで主旋律が回ってくる
ところもあったりする所が2集以降はバランスよく4パートに役割を与えての
曲作りになっているのが判るかと思います。
劇場型の曲ではありますが息の長い丁寧な旋律と伴奏の細かい音の
粒のコンビネーションは作曲のアプローチとしては“海よ”に近いものを感じ
させます。
(でも結果としては“海よ”とは全く違う個性に仕上げてるのはさすがですね。)
もともとの詩の内容のせいもありますが、曲全体を通じて悲しみを歌い上げる
というよりは悲しみを叫ぶような感じの曲で、明るい雰囲気は微塵も見せずに
最後まで進んでゆき、失意の雰囲気のまま曲は終わります。
私は実際に団員として歌ったのは月下の一群ではこの2集だけでは有りますが
コーラスを味わう面白さという点ではやはり1集より2集の方が上だとは
思っています。
(聴く音楽としては個性がよりはっきりした1集はとても判りやすくて求心力が
あるのは認めます。)
まあどちらが上か、と順位付けることもあまり意味のない事ですが要は私として
2集も1集に劣らずとても素晴らしい曲だというのが言いたいのです・・・
そして次はいよいよ月下の一群の全15曲の中で私が個人的に一番
大好きな世界観の「あの娘」です。
つづく。