『ホトケドジョウの生存権訴訟』の判決要旨

                       2010.4.20 東京地裁

主文1.落合川の埋立工事が違法であることの確認を求める部分 

     と原告落合川・原告ホトケドジョウの本件訴えのいずれも

     却下する。

   2.原告渡部・山口・佐藤・永田のその余の請求をいずれも棄

     却する。

   3.訴訟費用は原告の負担とする。


判決

1 原告住民の主張する落合川に関わる環境権・環境利益を保護すべき憲法上・実態法上の根拠なく、その要件・効果等の範囲が明確でないことからすれば現時点では、法律上保護される利益に該当すると認めることはできない。

 自然環境から生ずる恵沢を認めるとしても、その範囲を画する事は困難であるからこれを景観利益と同列に扱うことはできない。

 従って、原告住民の主張は採用できない。従って、原状回復・損害賠償請求も理由がない。

2.今後いかなる工事が行われるか明らかでない以上現時点で本件埋立工事の違法を確認しても今後の工事により起りうる紛争の解決に資することになるとは認められない。従って訴えの利益がないので不適法であり却下は免れない。

3.当事者能力は民法そのたの法令 に従う旨を定めており、かつ、自然物・動物に当事者能力と権利義務の主体性を認める法令上の根拠はないから、これらを原告とする訴えは、当事者能力を有しないものを原告とする訴えとして不適法である。

 以上によって、原告住民らの原状回復・損害賠償請求は、いずれも理由がないのでこれを棄却し、本件違法確認の訴え並びに原告落合川および原告ホトケドジョウの訴えはいずれも不適法であるから却下する。


原告の見解

違法の中身にいらないで門前払い同然の当事者能力のみでの判決である。5時間にわたる専門家の証人尋問も9回の公判、その間の進行協議、全部無視されている。

 この判決が4年もかかった『ホトケドジョウの自然の権利訴訟』の結末とは情けない。日本の司法のレベルが問われる。本年10月名古屋である世界『生物多様性』の会議に出席する日本代表は恥ずかしいと思うことだろう。

 文責 原告渡部

落合川の小渓谷を保全する会 会報19号           2010年1月9日


落合川の「ホトケドジョウの生存権訴訟」

 11月10日 証人尋問は論理で圧勝!!


証人 宮崎淳一(山梨大準教授)(専門ホトケドジョウ)

1) ホトケドジョウハ絶滅しても誰もすぐには困らない。がホトケドジョウの進化過程を明らかにすることによって、日本列島の形成史が解明される。それは氷河期からの生き残りである、湧水にしか生きられない、何万年も交雑がない等の理由によって列島の造山によって隔たればDNAが違ってくるからです。

2)東京では絶滅に近いホトケドジョウが1000匹以上いたということは驚異に値する。それは生息・繁殖環境として非常良かったと推定される。

3)問題なのは、都が魚類学会のガイドラインを守らずに放流したことだ。

4)都がガイドラインを守る必要がないとしていることも問題である。

証人田中規夫(埼玉大院教授)(専門河川工学)

1)旧川を残す方法はあるし、積極的に残している事例がある。

2)埼玉県の市野川のように、蛇行部分をショートカットして放水路を作り、洪水時のみ放水路を利用し平時は旧川に流すやり方がある。

3)落合川の例でシュミレーションをした場合、2流路方式(旧川に流す)だと最大30cm、上流分流部を半分に絞ると10cm、全部を塞ぐと6cmの本川の水位を下げる治水効果がある。

4)落合川の場合、旧川を残すことは可能であり、湧水は保全できてデメリットはない。

5)落合川の上流部を塞ぐ方式なら都の言う80cmの掘り下げは必要ない。

6)その場合、都の言う流水による侵食は問題にならないから籠マットくらいの護岸でよい。

7)都の言う3mの管理用通路はそもそもこの程度の短い小河川に必要ない。

必要というなら日本中の小河川が全て埋めたてられてしまう。

8)原告が提案したビオトープ案は、川幅の広がっている範囲から始まっているから都の言う治水上の問題はない。

後は次号に

会報19号は2月9日までなら、まだ図書館・公民館・市役所等にあります。


「ホトケドジョウ生存権訴訟」関連情報です。

1) 判決は2010年4月20日13:10 東京地裁527法廷で判決があります。

これまでの経過

1)2006.2.18 落合川埋め立て反対第1回市民集会

2)2007.3.27 3月市議会で「下流をオープンカットで」意見書を都に提出→下流約40mオープンカットになる。

3)2007.6 都議会へ「落合川を埋めるな」請願(5649名)提出→10月不採択(自・公)反対

4)2007.8.10 「落合川埋め立て工事差し止め原状回復を求める」訴訟を東京地裁に提訴

5)2007.10.9 第1回公判

6)以後 公判5回、進行協議(和解に向けて話し合い)7回目で決裂

7)2009.9.1 第6回公判

8)2009.11.10 第7回公判

9)2010.1.19 第8回公判(最終弁論陳述)


市民運動として立ち上げてから来月で満4年となります。

「ホトケドジョウ訴訟」を提訴してから3年半になります。


原告の主張

1)湧水3500t/dの旧川の埋め立てに反対する。

2)ホトケドジョウの生息・繁殖地の壊滅に反対する。

3)治水上からも旧川を残すのが正解である。

4)護岸工事は充分出来る。3mの管理道路など要らない。

5)小渓谷とその景観は貴重だ、残すべきだ。

被告の主張

1)湧水は導水管で導水するから大丈夫だ。

2)ホトケドジョウは全部捕獲して下流に放流から充分保護される。

3)治水上の影響はない。

4)3mの管理道路は必要だ。

5)景観より公共の利益が優先する。


藤田弁護士の最終陳述で述べられたのは

1)09年9月の調査では湧水流量は5分の1に激減している。

2)09年11月の調査では放流地点上下流合わせ300m間のホトケドジョウの捕獲数はたった4匹だった。08年8月1500匹捕獲放流した。殆んど全滅である。

3)埼玉大田中教授(治水専門)のシュミレーションによる計算で示された証言で治水効果は明らかである。

4)口交省の通達等によっても中小河川には管理道路は義務ずけられてない。

そうでないと日本中の5~6mの河川は全部埋められてしまう。

5)09年10月の「鞆の浦埋め立て免許差し止め訴訟」判決で「景観利益」が住民に「法律上の利益」として認められた。