松陰のブログ

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村田昭治氏監修・フィリップ・コトラー氏著の『マーケティング・マネジメント(第四版)』という書籍を紹介する。

マーケティングに携わっていて、コトラー氏を知らなければモグリだと言われるほど、コトラー氏はマーケティング界では有名です。コトラー氏は『マーケティング・マネジメント』という書籍を何度も改訂しています。私が読破したのは第四版です。

コトラー氏は、マーケティングとは、「交換過程を通して、ニーズ(必要性)とウォンツ(欲求)を満たすことを意図する人間の活動である」と述べています(11頁参照)。ニーズとは、人間生活上必要なある充足状態が奪われている状態を言います。ウォンツとは、そのニーズを満たす(特定の)ものが欲しいという欲望です。インテンションは、与えられた条件内で、満足を与える(特定の)ものを手に入れようという意思決定です。マーケティングは、ウォンツを創造し、ニーズを充足させるものを示すものです。そして、マーケティングは購買する意志(インテンション)を導き出そうとするものです。市場とは、ある製品に対する、現実または潜在顧客全員の集合を言います(12頁参照)。

マーケティング戦略とは、変化していく市場環境や競争状況にある面では無関係にまたはある面では対応しながら、相当期間その企業のマーケティング・エフォート(努力)<エフォート各要素の投入水準、ミックス、配分>を誘導する目的、基本政策、考え方の基準の集合です(65頁参照)。中でも、このフィリップ・コトラー氏著の『マーケティング・マネジメント(第四版)』という書籍では、マーケティング・ミックスを中心に展開しています。マーケティング・ミックスとは、企業がターゲット市場に影響を行使するために使う、統制可能な変数とその水準の集合です。顧客の反応水準に影響を与えられる変数で、企業が統制可能な変数は全て、マーケティング・ミックスの変数です。基本的なマーケティング・ミックスのリストを作る試みは、いくつもなされています。その中でも、マッカーシーの4P(プロダクト、プレイス、プロモーション、プライス)と呼ぶ四因子分類法は有名です。この4Pを詳細にこの書籍では解説しています(66頁参照)。

プロダクトは製品のこと。製品とは、注目、取得、使用、消費を目的として市場に提供されるものであり、物的対象、サービス、パーソナリティー、場所、組織、そして、アイディアを含むものと定義づけられています。製品には区別しておいた方がよい三つのレベルがあります。その最も基本的なレベルは中核製品と呼ばれる、消費者が何を求めて製品を買うのかという根本的な問いに答えるものです。中核製品は、中心の便益またはサービスのことです。中核製品に、物理的対象物の場合、機能、品質、スタイル、ブランドネーム、パッケージといった五つの特性が加わって、実体を伴った正式な製品となります。正式な製品を獲得することにおいて受容され経験されるベネフィットの総体を、拡大された製品と言います(305頁参照)。

プレイスはマーケティング・チャネル、物的流通のこと。ほとんどの製造業者は製品を様々なマーケティング媒介業者を通して最終需要家に販売しています。マーケティング・チャネルは、チャネル段階数によって分類することができます。製品とその所有権を消費地点へ移動する何らかの業務を行うひとつの機関が、ひとつのチャネル段階を構成します。生産者と消費者は全てのチャネルに存在するので、中間業者の段階数だけでチャネルの長さを表示します。0段階チャネルはダイレクト・マーケティング・チャネルと呼ばれ、1段階チャネルは、消費財の場合の小売店や生産財の場合の代理商など、ひとつの媒介業者が存在する場合を言います。チャネル数が増えごとに、2段階チャネル、3段階チャネルとなっていきます(348頁参照)。物的流通とは、原料と最終製品を顧客のニーズに合わせ、利益を得る形で、出発点より使用、消費地点へ物理的に移動させる流れを計画し、実行する業務の集合です。物流には、少なくとも14の業務があります。それは、販売予測、原材料調達、生産計画、流通計画、内部向け輸送、原材料受入れ、在庫管理、注文処理、包装、工場内在庫、船積み、外部向け輸送、現地在庫、顧客サービスです。物流の目的は、適切な製品を適切な場所へ、適切な時に、最少の費用で届けることです(371頁参照)。

プロモーションはマーケティング・コミュニケーションという広告、販売促進、パブリシティなどのこと。企業は様々なグループに対して、彼らの信頼と好意を獲得するため、自らを効果的に売り込んでいく方法を知らなければなりません。信頼性、先進性、そして社会的責任といった点によい評価を確立しえた企業は、他の企業に比べて非常に有利な立場に立ちます。というのは、消費者は、結局のところ、その企業が信頼できるからその製品を買うということが多いからです。顧客の信頼は、満足できる製品やサービスと、効果的なコミュニケーションを通して築かれるものであり、どちらか一方でも欠けてはなりません。現在、多くの企業が、その企業のアイディンティティを明瞭に示すような総合的コミュニケーション・プログラムを開発することの重要性を理解しています。コミュニケーション分野は、歴史的には、まず人的販売から始まり、次に広告、販売促進、最後にパブリシティが発展してきた経緯を持っています。広告とは、有料の媒体を使って、提供者(企業)名を明示して行うアイディア、製品、サービスの非人的提示とプロモーションのこと。人的販売とは、顧客との会話を通じて行うプレゼンテーションのこと。販売促進とは、製品やサービスの購買を喚起するための短期的インセンティブのこと。パブリシティとは、新聞・雑誌などにニュースとして取り扱われたり、無料でテレビやラジオで好意的なプレゼンテーションを受けるといった方法による製品やサービス・事業体に対する非人的な需要喚起のことです(383頁参照)。

プライスは価格のこと。価格設定には、売上高、利益、製品の市場の位置づけなどの点から価格の大枠を決める価格戦略と、それに基づいて設定された範囲内で市場の状況変化に応じてきめ細やかな決定をする価格戦術とがあります。価格は製品自体とともに最も重要なマーケティング・ミックスの要素を構成しており、また原価と共に企業収益を造出する要因になっています。価格は原価の積み上げだけで決められていて、市場の状況や顧客の心理が反映されていないわけではありません(328頁参照)。このプロダクト、プレイス、プロモーション、プライスという四つの要素を駆使して市場にアプローチし、企業価値を高めていくのがマーケティング戦略なのです。そして、マーケティング戦略を組織的な部分(457頁参照)と予算や費用対効果的な部分(485頁参照)でコントロールしようとするのがマーケティング・マネジメントです。フィリップ・コトラー氏著の『マーケティング・マネジメント(第四版)』を読めば、企業の営業活動の基本が学べます。特に商品とは何かについてのイメージが鮮明になって行き、その商品がどのように消費者の手に渡っていくのかというプロセスを理解できると思います。企業に勤める方々には非常に有用な書籍だと思います。

土岐坤・中辻萬治・服部照夫共訳、M・E・ポーター著『競争の戦略』という書籍を紹介する。

土岐坤氏・中辻萬治氏・服部照夫氏共訳、M・E・ポーター氏著の『競争の戦略』という書籍は、企業が取り巻く環境に対して、どのような戦略を打っていけばよいのかを提示している書籍です。企業をひとつの主体として見た時、環境を構成する要素との間に関係という意味の連鎖があり、その関係によって対応する方法が異なってくるのです。要素間の関係の在り方を認識することが重要です。

競争戦略とは、会社の努力の対象(目標)と、そこへ到達するための手段(ポリシー)の合成のことです(7頁参照)。会社がどれくらいうまく目標に達成できるかの限界を決める、広範な視点から戦略策定に影響する四つの要因があります。それは、会社の長所と短所、戦略実行者達の個人特性という内部要因と、業界の好機と脅威(経済的と技術面)、社会からの期待、の四つです。会社の長所と短所とは、資金源、技術特性、ブランド知名度など、物的資産と人的技能の面で、競争相手と比べてどこが強くどこが弱いかのプロフィールです。戦略実行者達の個人特性とは、選択された戦略を実行する責任を負った主要経営者や他の管理者のやる気と能力です。業界の好機と脅威とは、業界の動向、および、より広範な環境です。業界にどんな好機と脅威が予想されるかによって、競争の環境、どんなリスク、どんな報償があるかが決まるのです。社会からの期待とは、政府の政策、社会問題、慣習の変化、その他諸々のことが会社にどう影響を及ぼすかという点です(8頁参照)。

競争戦略をつくる際の決め手は、会社をその環境との関係で見ることです。中心になるのは、会社が競争を仕掛けたり仕掛けられたりしている業界です。業界構造の在り方は、会社が今後とりうる戦略に大きな影響をもつだけでなく、競争ゲームのルールを大きく左右させるのです。決め手は、これら外部要因に対する処理能力の会社間の差違なのです。競争状態を決めるのは、基本的に五つの要因です(17頁参照)。五つの競争要因とは、新規参入の脅威、代替品の脅威、顧客の交渉力、供給業者の交渉力、競争業者間の敵対関係です。業界の競争が、既存の競争業者だけの競争ではないことを示しています。こういった広い意味での競争のことを、広義の敵対関係と名づけています。極端な場合は、経済学で言う完全競争です。新規参入は無制限、既存の業者は誰一人として供給業者および顧客に取引上の圧力をかけられず、全ての企業、すべての製品に能力と品質上の差違がないために、全く自由な競争が行われている場合です。産業構造の分析、すなわち「構造分析」の狙いは、経済および技術の構造に基づく業界の基本特性を発見することです。この特性の上に、企業の競争戦略は策定されなければならないのです(20頁参照)。

競争戦略とは、業界内で防衛可能な地位をつくり、五つの競争要因にうまく対処し、企業の投資収益を大きくするための、攻撃的または防衛的なアクションです。特定企業にとってのベストの戦略とは、つきつめていうと、その特定企業の環境を計算に入れてつくられた特異な戦略に他なりません。しかしながら、最も広い意味で戦略を考えると、長期的に防衛可能な地位をつくり、競争相手に打ち勝つための三つの基本戦略があることが分かります(55頁参照)。五つの競争要因に対処する場合、他社に打ち勝つための三つの基本戦略とは、コストのリーダーシップ、差別化、集中です(56頁参照)。この三つは、それぞれ一つの原理によって一貫しているのです(この三つの戦略は、別々にも、組み合わせても利用できます)(55頁参照)。個人的な見解ですが、コスト競争、つまり安売りの過熱化はチキンレースのような戦いに繋がり、結局、業界内の全ての企業から利益を奪う、どの企業も幸福になれない不毛な結果を生む可能性があるので、あまり勧められない戦略だと考えています。

競争戦略とは、競争相手よりもすぐれている点を生かして、その価値を最大にするように事業を位置づけることです。したがって、戦略策定の主眼は、綿密な競争業者分析にあります。競争業者分析の目的は、競争相手の今後の戦略変更の内容とその成功の可能性を探り、他の同業者が新たに採用する有効な戦略上の動きに対する各業者の反応を予測し、さらに将来発生すると思われる業界内での変化や、業界を超えた幅広い環境面での変化に対する各競争業者の対応を知ることです(73頁参照)。孫子の「彼を知り己を知れば、百戦して殆うからず」です(『孫子の兵法』守屋洋著 61頁参照)。競争業者分析は、四つの診断的要素からなっています。それらは、将来の目標、現在の戦略、仮説、能力です(74頁参照)。

競争業者の将来の目標、仮説、現在の戦略、能力の分析が終わると、三つの質問の答えを見つける作業をすることになります。この作業によって、競争業者がどのような反応をするかについての全体像を知ることができます。攻撃的な動き。競争業者がこれから行おうとしている戦略変更を予測することです。(1)現在の地位での満足度、(2)予想される動き、(3)予測される動きの強さと重大さを推定します。防衛能力。この業界の企業なら採用が可能と思われる戦略上の動きの一覧表と、今後発生すると思われる業界内および環境面での変化の一覧表を作成することです。(1)弱点、(2)挑発、(3)対抗行動の効果の一覧表を作成し、推定します。競争分野の選定。ある企業がとった行動に対し、必ず競争相手が対抗行動をとるものと仮定すると、戦略上での問題点は自社にとって最も有利な競争分野はどこかということになります。最も有利な競争分野とは、競争相手の体制が整っていなかったり、戦おうという熱意が欠けていて、競争を極力避けているようなマーケティング・セグメント、ないし戦略領域のことです(99頁参照)。

一つの業界内での競争に勝つための戦略には、実に様々なものがあります。しかし、そのような多種多様な戦略も、以下のような次元を切り口にすれば分類できます。専門度、ブランド指向度、プッシュ型かプル型か、流通業者の選択、品質、技術のリーダーシップ、垂直統合、コスト面での地位、サービス提供度、価格策定、力、親会社との関係、自国ならびに事業を行っている国の政府との関係などです。ある企業をこれらの次元上に描き出すと、それが企業の地位を示す全体図になります(180頁参照)。

業界の今後の変化を予測するのに、製品ライフ・サイクルというコンセプト(概念)が重要です。この考え方は、業界は数多くの局面あるいは段階を経て発展していくというものです。その段階は、導入期、成長期、成熟期、衰退期となっています(217頁参照)。M・E・ポーター著の『競争の戦略』という書籍の中盤は、この製品ライフ・サイクルの各段階における戦略を述べています。この書籍で興味深い概念は、移動障壁という概念です。ある業界への新規参入を妨げる要因、すなわち参入障壁は、その業界固有の特性とみなされてきました。参入障壁を生み出すと考えられてきた主な業界特性は、規模の経済性、製品の差別化、業界変更コスト、コスト上の利点、流通チャネルとの関係、資金力、政府の方針でした(187頁参照)。参入障壁を形成している基本的な経済上の要因は、より幅広い言い方をすれば移動障壁ということになります。業界内の戦略グループは、それぞれ固有の移動障壁をもっており、それが企業間の収益性に格差をもたらしています(188頁参照)。確かに参入障壁が高ければ、新規参入を防げ、その業界内で利益を独占できる可能性が高まるのですが、私はこの箇所を読み、独占禁止法との関係はどうなるのだろうかと少し疑問を持ちました。

M・E・ポーター著の『競争の戦略』という書籍は、実に論理的に業界分析や企業分析の枠組みを提示している良書です。素晴らしい書籍には、時代を超えた普遍性があります。このM・E・ポーター著の『競争の戦略』という書籍もそのうちの一冊だと思います。

令和7年10月1日、戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝生、村井友秀、野中郁次郎著の『失敗の本質-日本軍の組織論的研究-』という書籍を再読破した。

令和7年3月6日、本年(令和7年)1月25日に私が尊敬していた偉大な経営学学者の野中郁次郎先生がご逝去なさっていたことを知りました。野中氏が亡くなり、野中氏の書籍をネット検索していると、多くのホームページで野中氏の代表作に『失敗の本質-日本軍の組織論的研究-』という書籍を挙げていました。私見ですが、私は野中先生の代表作は絶対に『企業進化論』だと思っています。しかし、ネットでの評価もあり、学生時代に読破した『失敗の本質-日本軍の組織論的研究-』をもう一度読んでみようと思い、読破しました。野中郁次郎先生への哀悼の意を込めて読みました。私は民主主義国家であるアメリカとの日米同盟の強化が望ましいと思っているので、昔の我が日本国とアメリカ合衆国との不幸な戦争についての話を取り上げるのは本意ではありません。日本とアメリカとが永遠に友好な関係が続くことを望んでいます。ただし、この『失敗の本質-日本軍の組織論的研究-』という書籍は太平洋戦争(第二次世界大戦)中の日本の軍隊の組織的な問題点を取り上げ、どういう組織が機能するのかということを記述した書籍です。温故知新。人類は過去の失敗から学び、進歩してきました。この太平洋戦争中の日本の軍隊の失敗から学び、組織のあるべき姿が教示されれば有意義なことだと思います。日本の大東亜戦争史を社会科学的に見直してその敗北の実態を明らかにすれば、それは敗戦という悲惨な経験の上に築かれた平和と繁栄を享受してきたわれわれの世代にとって、きわめて大きな意味を持つことになるのではないか(ii頁参照)

開戦前の状況についての真相が徐々に明らかになるにつれ、国力に大差のある国々を相手とした大東亜戦争は、客観的に見て、最初から勝てない戦争であったことが理解された。それゆえ、なぜ敗けたかという問いは、なぜ敗けるべき戦争に訴えたのか、という形の設問に転化し、歴史学や文明史・精神史の立場から様々な解答、説明が与えられた(2頁参照)。しかし、本書はむしろ、なぜ敗けたのかという問いの本来の意味にこだわり、開戦した後の日本の「戦い方」「敗け方」を研究対象とする。いかに国力に大差がある敵との戦争であっても、あるいはいかに最初から完璧な勝利は望みえない戦争であっても、そこにはそれなりの戦い方があったはずである。しかし、大東亜戦争での日本は、どうひいき目に見ても、すぐれた戦い方をしたとはいえない。本書は、なぜ敗けたのかという問題意識を共有しながら、敗戦を運命づけた失敗の原因究明は他の研究に譲り、敗北を決定づけた各作戦での失敗、すなわち「戦い方」の失敗を扱おうとするものである(3頁参照)。

『失敗の本質-日本軍の組織論的研究-』では、ノモンハン事件、ミッドウェー作戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦の六つの戦いをケーススタディとして挙げています。ノモンハン事件は、作戦目的があいまいであり、中央と現地とのコミュニケーションが有効に機能しなかった。情報に関しても、その受容や解釈に独善性が見られ、戦闘では過度に精神主義が誇張された(14頁参照)。ミッドウェー作戦は、作戦目的の二重性や部隊編成の複雑性などの要因のほか日本軍の失敗の重大なポイントになったのは、不測の事態が発生した時、それに瞬時に有効かつ適切に反応できたか、否であった(39頁参照)。ガダルカナル作戦の失敗の原因は、情報の貧困と戦力の逐次投入、それに米軍の水陸両用作戦に有効に対処しえなかったからである。日本の陸軍と海軍はバラバラの状態で戦った(67頁参照)。インパール作戦は、しなくてもよかった作戦。戦略的合理性を欠いたこの作戦がなぜ実施されるに至ったのか、作戦計画の決定過程に焦点をあて、人間関係を過度に重視する情緒主義や強烈な個人の突出を許容するシステムを明らかにする(92頁参照)。レイテ海戦は、“日本的”精緻をこらしたきわめて独創的な作戦計画のもとに実施されたが、参加部隊(艦隊)が、その任務を十分把握しないまま作戦に突入し、統一指揮不在のもとに作戦は失敗した。レイテの敗戦は、いわば自己認識の失敗であった(120頁参照)。沖縄戦は、相変わらず作戦目的はあいまいで、米軍の本土上陸を引き延ばすための戦略持久か航空決戦かの間を揺れ動いた。特に注目されるのは、大本営と沖縄の現地軍にみられた認識のズレや意思の不統一であった(154頁参照)。

一体、なぜ日本軍はこうした失敗をおかしたのであろうか。各々の作戦に現われた戦略と組織のどこに問題があったのか、それにはどのような共通の特性が存じるのであろうか。こうした問題意識に基づいて、六つの敗け戦の中に表出した日本軍の組織的な特性を明らかにしていくことを課題としている。組織としての日本軍の失敗を組織論の観点から論じようとするものである。六つのケースに共通して見られる作戦の性格を明らかにしてみよう。

(1)複数の師団あるいは艦隊が参加した大規模作戦であった。したがって、陸軍の参謀本部、海軍の軍令部という日本軍の作戦中枢が作戦計画の策定に関与している。

(2)このことは、作戦中枢と実施部隊との間に、時間的、空間的に大きな距離があることを意味していた。さらに、実施部隊間にも程度の差があれ、同様の状況が存在した。

(3)直接戦闘部隊が高度に機械化されていたが、それに加えて補給、情報通信、後方支援などが組み合わされた統合的近代戦であった。

(4)相手側の奇襲に対応するような突発的な作戦という性格のものはほとんどなく、日本軍の作戦計画があらかじめ策定され、それに基づいて戦われたという意味で組織的であった。

以上のような作戦の共通性は、個々の戦闘状況における指揮官の誤判断や、個別の作戦上の誤りを超えて、むしろそうした状況を生むに至った日本軍の組織上の特性、すなわち、戦略発想上の特性や組織的な欠陥により大きな注意を払うべきことを示唆している。日本軍は、各々の作戦において組織として戦略を策定し、組織としてこれを実施し、結果的に組織として敗れたのである(186頁参照)。

『失敗の本質-日本軍の組織論的研究-』では、日本軍の失敗の要因は、あいまいな戦略目的(188頁参照)、短期決戦の戦略志向(195頁参照)、主観的で「帰納的」な戦略策定-空気の支配-(199頁参照)、狭くて進化のない戦略オプション(203頁参照)、アンバランスな戦闘技術体系(209頁参照)、人的ネットワーク偏重の組織構造(217頁参照)、属人的な組織の統合(224頁参照)、学習を軽視した組織(229頁参照)、プロセスや動機を重視した評価(235頁参照)などという視点から当時のアメリカの戦略や組織と比較しながら日本の戦略や組織の問題点を分析している。

最後に軍事組織の環境適応の分析枠組みを示し、戦略・戦術(247頁参照)、資源(249頁参照)、組織特性(組織構造、管理システム、組織行動)(252頁参照)、組織学習(259頁参照)、組織文化(261頁参照)という項目から環境適応に関して分析している。

「適応は適応能力を締め出す」。適応力のある組織は、環境を利用してたえず組織内に変異、緊張、危機感を発生させている(265頁参照)。日本軍は、偶然の発見を組織内に取り組むシステムや慣行を持っていたとはいえない。そもそも戦闘におけるコンティンジェンシー・プラン自体を持たなかったことは、偶然に対処するという発想が希薄であったことを示している(274頁参照)。組織はセルフ・オーガナイジング行動を通じて日々進化をとげていく。軍事組織も、決して例外ではない(265頁参照)。常時市場とつながりを持ち、そこでの競争にさらされ、結果のフィードバックを頻繁に受けるという開放体制でなければならないのである。軍事組織においても平時にいかに組織内に緊張を創造し、多様性を保持して高度に不確実な戦時に備えるかが課題となるのである(266頁参照)。

私は、ハードカバーで『失敗の本質-日本軍の組織論的研究-』を読みましたが、先日、近所の書店に行くと、文庫本の『失敗の本質-日本軍の組織論的研究-』が平積みに置かれていました。もしこの書評を読み、この本に興味を持った方がいらっしゃいましたら、文庫本もありますので、一読をお勧めします。

令和4年11月9日、エリック・A・ポスナー、E・グレン・ワイル共著、安田洋祐監訳・遠藤真美訳の『ラディカル・マーケット』という書籍を読破した。とある日、NHK教育のテレビ番組を観ていると、その番組にて、「二次の投票(QV)」(138頁参照)という斬新な投票方法を紹介していた。「二次の投票(QV)」の出典として、エリック・A・ポスナー、E・グレン・ワイル共著、安田洋祐監訳・遠藤真美訳の『ラディカル・マーケット』という書籍を挙げていた。私は、その従来とは違う投票方法に惹かれ、投票方法の詳細を知りたくて、書店で、エリック・A・ポスナー、E・グレン・ワイル共著、安田洋祐監訳・遠藤真美訳の『ラディカル・マーケット』を購入し、令和4年11月9日に読破しました。

「ラディカル(過激な・急進的な、根本的な・徹底的な)」という言葉を聞いて、大嫌いな共産主義や社会主義の臭いを少し感じながら、こよなく民主主義と資本主義を愛する私は、共産主義や社会主義の書籍だったら、途中で読むのを止めればいいやと思い、読み始めました。33頁、43頁、46頁に私が尊敬する偉大な経済学者のケインズの話が記載され、内容も民主主義や資本主義に関する話だった上、面白かったので、引き込まれるように読み進めて行った。340頁にカール・マルクスが登場し、組合、搾取、プロレタリア等の話になり、共産主義や社会主義の話になって、「えっ騙された」と感じながら、340頁迄、読み進めて、今更、止められないなと考え、最後まで読み切りました。ちなみに中央計画制という社会主義経済がなぜ失敗したのかについては、情報と計算という要因を挙げて詳細に説明しています(389頁参照)。

私の所感ですが、このエリック・A・ポスナー、E・グレン・ワイル共著の『ラディカル・マーケット』という書籍は民主主義と資本主義の書籍だと思います。スタグネクオリティ(経済成長の鈍化と格差の拡大が同時並行で起きること)(46頁参照)の時代に対する処方箋として、著者のエリック・A・ポスナー氏、E・グレン・ワイル氏は、①「二次の投票(QV)」、②「共同所有自己申告税(COST)(11頁参照)、③移住(95頁参照)、④個人間ビザ制度(VIP)(222頁参照)、⑤機関投資家への株式保有制限(277頁参照)等を提案している(383頁参照)。どの提案も斬新である。私自身の所感としては、斬新過ぎて、現実に採用かつ機能するのだろうかという疑問を感じている。しかし、環境を分析し、今、何が問題なのかが分かっていながら、その問題を解決するための具体的な方法を提示できないことが多い最中、著者のエリック・A・ポスナー氏、E・グレン・ワイル氏は、具体的な方法を提案していることに敬意を感じている。本当に素晴らしいことだと思う。かなり昔から、貧富の格差が問題視され(37頁参照)、富の分配の機能不全が指摘されているが、格差は広がる一方で、解消される気配もない。また、政治参加の希薄さ等が指摘されているが、これも改善される気配がない。これらの問題に対し、共同所有自己申告税(COST)によって、遊休資産を使用して社会の富を増加させ、富の再分配を可能にし、貧富の格差の縮小を図り、二次の投票(QV)によって、真の民意を政治に反映させようと考えている。

地主も独占者と同じように、土地を売る時に、最初に公正な価格を提示した人に売らずに、高額な価格が提示されるまで合意を渋ることで(市場への供給を絞るのと同じことになる)、売却益を増やすことができる。その間は、土地は使われないか、有効に活用されない。このため、私的所有には実際に効率的な資源配分を妨げるおそれがある(82頁参照)。著者たちは、現状の私有財産制度は、「投資効率性」においては優れているものの「配分効率性」を大きく損なう仕組みであると警告している。私的所有を認められた所有者は、その財産を「使用する権利」だけでなく、他者による所有を「排除する権利」まで持つため、独占者のように振る舞ってしまうからだ(418頁参照)。

この『ラディカル・マーケット』という書籍では、「独占」は円滑な経済活動を阻害する要因と考えている。「独占」という言葉を初めて使ったのは、アリストテレスで、数学者、哲学者であるミレトスのタレスとの議論の中で生まれたものである。アダム・スミスと、その同時代人は、国家が関係した法的な取り決めが独占の最大の源泉だと見ていた。アメリカ独立運動には、イギリス東インド会社による茶貿易の独占支配との闘争という一面もあった。スミスの時代には、大半の事業は規模が小さく、資本は地元の銀行や一族に頼っていた。運河や建設のような大規模な事業や計画になると必要となる資本は大きいので、政府が引き受けたり、取りまとめたりするのが普通だった。しかし、テクノロジーが進化し、法律が発展したことで、起業家が十分な規模をもつ事業体をつくって、巨大な産業プロジェクトを引き受けられるようになった。こうした企業の資本を確保するために、起業家は株式と債券を不特定多数の投資家に販売し、何年もかけて返済していった(252頁参照)。

このような大規模な資本プールが発展すると、経済学者は企業が競争を制限するのではないかと懸念するようになった。株式会社には特権が与えられ、所有権が保護されているため、国家から他に支援がなくても独占を達成できるようになるからだ。19世紀には、アントワーヌ・オーギュスタン・クールノーが数学的手法を用いた先駆的な経済分析を行って、取引を阻害し、生産を減少させて、より高い価格を設定できるようにする独占のインセンティブを研究した。経済学者のジュール・デュピュイは、二次の三角形を使って、独占支配がもたらす社会的な損失、いわゆる「死荷重」を例証した。レオン・ワルラスは、私的独占(土地の私的所有とともに)が自由市場の活動を妨げる最大の障害であり、格差を生み出す主要な原因であると見ていた。フランス人経済学者たちが説くまでもなく、独占は危険であることをアメリカ人は分かっていた。19世紀に巨大企業が一気に現れた。多数の会社の規模があまりにも大きくなったため、競争はほとんどなくなった。1890年、議会はシャーマン法を可決し、(特に)「取引を制限する結合」を禁じた(253頁参照)。その後も、時代と共に変わりゆく企業形態に対して、反トラスト法、クレイトン法などの法律を成立させ、独占に対処していった(255頁参照)。

競争のない市場は、そもそも市場ではない。一党独裁国家が民主主義国家になりえないのと全く同じである(292頁参照)。市場が正常に機能するため、公正な競争ができる市場を創造するのである。そして、市場経済を成立させる三つの原則があり、①自由、②競争、③開放性、である(57頁参照)。市場経済を成立させるためにも、公正な競争を守っていかなくてはならない。

ちなみに、監訳者の安田洋祐氏は、「日本語版解説」において、配分の非効率性に関して、非効率性の正の側面として、①予算制約、②生産財市場の独占化、③思考コストの三つを挙げて、非効率性を擁護している(420頁参照)。

『ラディカル・マーケット』という書籍には、経済学者等の数多くの学者の知恵が集積されているが、中でも、市場急進主義のヘンリー・ジョージ、そして、ジョージ主義の経済学者の中でも重要な人物であるウィリアム・スペンサー・ヴィックリーが挙げられる(29頁参照)。また、斬新な制度の提案においては、ハーバーガー税のアーノルド・ハーバーガーや土地税のヘンリー・ジョージに影響を受けている(420頁参照)。加えて、一連の提案も、経済理論と思想史を基礎としている(383頁参照)。故に『ラディカル・マーケット』という書籍を読むと、経済学史、思想史を学ぶことができる。経済学は、173頁のパレート効率性、200頁の自由貿易の起源、214頁のポール・サミュエルの定理、258頁のバーリ&ミーンズの所有と経営の分離、320頁の限界革命等が記載されており、経済学の発展を知ることができ、思想史は、99頁の民主主義の起源から立憲君主制、功利主義等の思想の変遷を知ることができる。

「いま当たり前のものとされている制度のすべて、自由市場も、民主主義も、法の支配も、かつてはラディカルな提案だった」(397頁参照)。私は、この『ラディカル・マーケット』という書籍を読破し、提案がかなり斬新だと感じたが、この一文を読み、確かにそうだなと思った。格差が広がり、経済が停滞し、政治が混乱する「スタグネクオリティ」の時代には、使い古されたアイデアに安住してはならない。最大のリスクは静止状態に陥ることである(397頁参照)。テクノロジーの進化と共に社会は変化し、社会に適した制度が求められてくる。貧富の格差の解消。そして、守らなくてはならない普遍的な価値観、制度である民主主義。民主主義の根幹は、公正な選挙によって、行政の長(為政者)が選ばれ、主権在民の中で、民意が政治に反映されることである。公平で公正な社会の中、民意が正しく政府に伝わる方法を考えるべき時なのかも知れない。非常に面白い書籍だった。

大前研一訳、ピーターズ・ウォータマン共著の『エクセレント・カンパニー―超優良企業の条件―(下)』という書籍を紹介する。


ひとに対する配慮なくして良い機構などというものは考えられないし、逆もまた真なのです。ピーターズ氏&ウォータマン氏はさらに研究を続けました。その結果分かったこと、それは組織づくりを知的に考えようとすれば、互いに切り離せない関係にある少なくとも七つの変数を同時に包含して扱っていかざるをえないことです。その七項目とは、機構、戦略、ひと、経営の型、体系と手順、指標となる理念、および企業文化とも言うべき共通の価値観、最後に現有する(または望ましい)企業の強さ、あるいは技術の七つです。このアイデアをより正確に規定し磨き上げたものが後に「マッキンゼーの七つのS」のフレームワークになったものです。「マッキンゼーの七つのS」とは、①共通の価値観、②機構、③システム、④スタイル、⑤スタッフ、⑥スキル、⑦戦略です。若干の無理はありましたが、これを切り貼りして形を整えることによって、七つの項目の全てが英語のSの頭文字で始まるようにし、また七つが相互依存しているという点を強調して、これをデザイン化しました(上巻・43頁参照)。


調査の結果はピーターズ氏とウォータマン氏も驚くほどめざましいものでした。超優良企業は、何よりもまず基本的なところで特に優れているということが、予想したよりもはるかにはっきりと示されたのです。手法や道具を思考に代用しません。知能を知恵よりも優先させません。分析に行動の邪魔をさせません。逆にこうした企業は、この複雑な世の中で必死に物事を単純にする努力をし、またその努力を諦めません。最高の品質にこだわります。徹底して顧客にあわせます。従業員の声に耳を傾け、大人として彼らを扱います。革新的才知のある製品開発やサービスのチャンピオンに自由にやらせます。すばやい行動と実験精神に付随して起こる多少の混乱はいとわないのです。革新的な超優良企業を最もよく特徴づける八つの基本的特質があります。それは、①行動の重視、②顧客に密着する、③自主性と企業家精神、④ひとを通じての生産性向上、⑤価値観に基づく実践、⑥基軸から離れない、⑦単純な組織・小さな本社、⑧厳しさと緩やかさの両面を同時に持つ、です(上巻・49頁参照)。


訳者の大前研一氏はこの書籍の読み方について述べています。大前研一氏は、これを“米国における”物語としてではなく、一般に企業経営の基本思想についての極めて実証的な、平易な読み物として扱うことが正しい読み方だと考えています。米国とか日本とか言って経営比較をしているうちは、まだ本物ではないのです。どんな企業でも大勢の人が思っているように企業目的に申し合わせたように精魂を込めて打ちこんでくれる、というのは大変なことです。二人でも意見があいません。10人ではまとめられない、という人間の集団を何百人、何万人と集めて共通目標に邁進させることは神技に近いのです。金を払えば全て解決、というものではありません。コストに見合う成果がなければ当然競争には負けますし、優良企業として残っていけません。まして長年にわたって好業績をあげる一兆円規模の巨大企業である超優良企業などというのは(あるいはそういう企業を作り、運営している人は)、何を考え、どのようにしているのでしょうか。こういう疑問に答えるためのヒントが、たくさんこの書籍に出ています。それを学ぶべきですというのが、大前研一氏の意見です(314頁参照)。