切り抜きがん情報 0435  2022年7月1日

 

 

2022年6月30日より

 

光免疫療法の新たな標的分子を確認

トリプルネガティブ乳がんへの臨床応用に期待

 

※画像はイメージです。

 

 乳がん全体の20%を占めると言われるトリプルネガティブ乳がん(TNBC)は、再発率が高く、他のサブタイプの乳がんと比べて治療の選択肢が少ないのが現状だ。

 

今回、関西医科大学光免疫医学研究所所長/特別教授の小林久隆氏は、2つのTNBC腫瘍モデルを用いた米国立衛生研究所(NIH)との共同研究において、光免疫療法の新規標的分子としてICAM-1を確認したとCancer Sci(2022年6月20日オンライン版)で発表した。

 

2020年に頭頸部がんで世界に先駆け日本で承認

 

 光免疫療法は手術、薬物療法、放射線療法、免疫療法に続く「第5のがん治療法」と呼ばれる。小林氏らが開発した光免疫治療法は、抗体に光感受性分子であるフタロシアニン誘導体(IR700)を結合させた抗体薬物複合体(ADC)をがん細胞に結合させ、レーザー光を照射することでがん細胞を選択的に壊死させる。正常細胞を傷害することなく、IR700の活性化により物理化学的にがん細胞を損傷させる、侵襲性の低い治療法として注目を集めている。

 

 2020年9月には頭頸部がんに対する光免疫治療薬として、抗EGFR抗体を用いたADCのツキシマブ サロタロカンナトリウム(商品名アキャルックス)が世界に先駆けて日本で承認され、保険適用となっている(関連記事「光免疫療法がもたらす頭頸部がん治療の未来」)。

 

 

標的分子としてICAM-1の有用性を検討

 

トリプルネガティブ乳がん(TNBC)は細胞表面に複数の接着分子が発現することが知られており、光免疫療法の新たな標的分子となる可能性がある。そこで、今回の研究では、トリプルネガティブ乳がんのバイオマーカーにもなっている細胞間接着分子(ICAM-1)に着目。トリプルネガティブ乳がん由来の2種類の細胞株MDAMB468-lucおよびMDAMBm231を皮下注射した移植マウスモデルを使用し、光免疫療法の新規標的分子としての有用性を検討した。

 

 まず、in vitro試験で両細胞株にレーザー光を照射したところ、どちらも用量依存的に細胞に損傷が起きることを確認した。

 

 次に、in vivoでICAM-1を標的にレーザー光を照射したところ、両細胞株ともに細胞質の空胞化といった損傷の徴候を示した。さらに、形態的に損傷がないように見えたがん細胞でも、治療後2時間以内にはアクチン細胞骨格の異常な分布と細胞増殖マーカーとして用いられるKi-67陽性の明らかな現象が認められた。さらに、レーザー光照射によるがん細胞の損傷は、その後の腫瘍増殖を有意に抑制し生存率を改善した。

 

 小林氏は「今回の結果から、トリプルネガティブ乳がんにおいてICAM-1が光免疫療法の新規標的分子となりうることを確認できた。臨床応用に至れば、急激な増殖と転移が多く現時点では効果的な治療の選択肢が少ないトリプルネガティブ乳がんに対する、新しい選択肢となることが期待される」と展望している。

 

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記事はここまで。

 

 

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