切り抜きがん情報 0114  2021年7月12日

 

 

 

日本経済新聞

(2021年7月8日号)より

 

 

 

10万人のゲノム解析 

東北大・武田など5社連携

創薬に利用、欧米を追う

 

東北大学は7日、武田薬品工業エーザイなど製薬大手5社と、10万人分のゲノムを解析するためのコンソーシアムを設立したと発表した。製薬会社が従来の10倍以上のゲノムデータを創薬や診断技術の開発などに利用できるようにする。欧米には数十万人規模のバイオバンクがすでにあり、ようやく日本もゲノムをもとに新薬を探す「ゲノム創薬」の基盤整備が進む。

 

 

バイオバンクは健康な人や患者から、血液や尿などの試料、そのゲノムを解析したデータを収集する。年齢・性別、生活習慣や病気の履歴などのデータも合わせて蓄積し、これらを創薬研究する企業や大学などに提供する。

 

データを活用すれば、新薬の開発やそれぞれの患者に適した治療をする「個別化医療」の実現に役立つ。

 

東北大が運営する東北メディカル・メガバンク機構は2012年に設置。宮城県、岩手県の15.7万人超のデータや試料をもつが、ゲノム解析に時間や費用がかかり、企業が利用できるデータは約8300人分にとどまっていた。

 

コンソーシアムは文部科学省の予算約40億円と企業の資金をもとに、24年までに10万人分のゲノム解析を目指す。

 

21年度中に6万人分の初期的な解析を終える予定だ。

 

参加するのはエーザイ、小野薬品工業、武田、第一三共、米ジョンソン・エンド・ジョンソン傘下のヤンセンファーマ。5社は10万人分のゲノムデータを優先的に利用できる。

 

記者会見した東北メディカル・メガバンク機構の山本雅之機構長は「10万人のゲノムデータがあれば、日本人で見つかる遺伝子変異を網羅的に探せるだろう」と話した。

 

製薬会社は治療薬や診断法の開発につなげる狙いだ。武田は国内でも先駆けてゲノム創薬に取り組んできた。19年には英国の「UKバイオバンク」に参加。一定の使用料を支払い、50万人規模のゲノムデータを活用している。

 

20年には東北メディカル・メガバンク機構と共同研究を開始。認知機能の低下など精神・神経疾患を引き起こす要因を中心に調べ、新薬や治療法の確立を目指している。

 

エーザイも21年5月に国立がん研究センターが持つがん組織のゲノムデータをもとに、希少がんの治療薬の開発に乗り出している。

 

もっとも、ゲノムデータ収集で先行するのは欧米だ。武田が参画する英国の「UKバイオバンク」は06年から健康な50万人を追跡。米ファイザーや英アストラゼネカなど世界のメガファーマも参画する。

 

ゲノムデータをはじめとして、生活習慣や既往歴などの情報が利用でき、創薬に利用しやすいという。

 

英国にはがんや希少疾患の患者を対象とした政府系機関によるバイオバンクもあり、18年12月に10万人のゲノム解析を終えた。米国では100万人分を目標に約49万人分を集めた取り組みなどがある。

 

ゲノム解析などに詳しいアーサー・ディ・リトル・ジャパンの小林美保シニアコンサルタントは「UKバイオバンクは英政府が支援しており、データが集まってくる仕組みがある」と指摘する。日本も国の支援のもとデータを集める仕組み作りが必要だ。

 

 

 

記事はここまで。

 

 

 

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