2020年11月7日
朝8時30分。
私と長女は大阪の中津という梅田と隣接した場所にある、済生会中津病院のPETセンター専用棟の前にいた。
表から中の様子は全く見えないが、簡単に立ち入らせない雰囲気が伺いしれた。
娘には無理を言って付き添ってもらった。
私は怖じ気づいていたのだ。
中が見えない大きな自動ドアの奥に受付があった。
名前を名乗り、受付を済ますと家族休憩室に案内された。
すでに数組の先客があり、私たち2人は空いてるソファに腰掛けた。
まわりを見渡すと、みんな不安そうな表情に見えた。
中には家族全員なのか、4~5人で来ている家族もあった。
でも全員黙りこくっている。
部屋の様子を色で例えると、限りなく黒に近いグレーだ。
無理もない。
ここでの検査の結果によっては、死刑宣告に等しい判決が下される可能性があるのだ。
私と娘も、会話らしい会話をすることもなく、安静を保ちながら呼び出しを待った。
9時を少しまわった頃、呼び出しを受け、問診室に入る。
事前に記入しておいた問診票の記入内容と照らし合わせるように問診がおこなわれる。
続けて、血糖値や血圧の測定がおこなわれ、問診は終了となる。
特別に聞かれることはなかった。
続いてその足でロッカールームに案内された。
そこには10人分くらいのロッカーが並んでいて、洗面台も付いていた。
指定された番号のロッカーの扉を開け、中の検査着に着替える。
普通のCT同様、金属類は一切NGだ。
ご丁寧に洗面台には入れ歯や小物の類いを入れる蓋付きの浅いコップのようなものまで用意されている。
事前に渡されていた小さな厚手のビニールバッグにロッカーの鍵とペットボトルのお茶を入れ、ロッカールームを出る。
今度は検査薬の注射だ。処置室に案内される。
なかなか忙しい。
緊張している暇はない。
検査薬の投与量は体重によって決まっている。
体重測定の後、検査薬が静脈にゆっくり時間をかけて注射される。
注射が終わると次は安静室だ。
数字が振られたベッドが並ぶ安静室は暗く静かだ。
指定されたベッドで身体を横にして、静かに検査薬が身体に回るのを待つ。
所要時間は約1時間。
「1時間か・・・」
「内緒でスマホ持ってくればよかった・・・」
もちろんスマホや携帯の持ち込みは禁止だ。
でもスマホは必要なかった。
5分後私はうっすらイビキをかいていた。
1時間後、担当の看護師さんの声で目が覚めた。
「今からCTを撮ります。」と告げられた。
CT室で撮影技師から簡単な説明を受けた後、検査台で横になる。
身体が動かないように何本かのベルトで固定される。
ちょっと緊張する。
スイッチが入れられ、検査台が静かに動き出す。
こんどは簡単に眠れそうもない。
遠くから低い太鼓のような動作音が一定の周期で響く。
時間にして約10分。
検査台はじれったいくらいゆっくりと進む。
10分がとてつもなく長く感じられる。
不気味な動作音が続く。
やがて静かになった。
「終了ですよ」の声に合わせてベルトが外される。
「これがペットか」
息つく間もなく今度は休息室に案内される。
休息室は安静室とほぼ同じ作りだが、部屋を間違えないためなのか、各ベッドには数字ではなく、アルファベットが付けられている。
今度はここで30分横になる。
不覚にもまた寝てしまう。
・・・・・ 2度目のCTの撮影(2回目は約5分)を終え、一連の工程はこれで完了となった。
急いで着替えを済ませた私は、娘の待つ待合室に戻った。
会計は保険対象で3万円(税別)であった。
保険がなければ10万円の検査ということだ。
事前に聞いてはいたが「結構高いな」というのが私の印象だ。
もっとも、この後繰り返される抗がん剤治療の料金に比べると安いものであったが。
私はクレジットカードで支払いを済ませ、娘とPETセンターを出た。
すでにお昼を少し過ぎていた。
2人で本館の中にあるレストランでハンバーグとエビフライのランチを食べた。
娘と二人きりで食事をするなんて何年ぶりのことだろう。
このときだけは、病気のことを忘れて久し振りに二人で他愛もない話をした。
楽しかったし、おいしかった。
「がん」のおかげと言っては言い過ぎか。
ともかく、朝ここに来たときは全く元気がなかったのに、ごはんを食べ終わる頃にはにはすっかり上機嫌になっている私がいた。
でも楽しいのはここまでだ。
1週間後には審判が下る。
今日だけは考えないことにして老舗病院を後にした。
本文ここまで、明日に続く。
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「PET-CT」とは
PETとは、positron emission tomography (陽電子放出断層撮影) の略で、放射能を含む薬剤を用いる、核医学検査の一種。
放射性薬剤を体内に投与し、その分析を特殊なカメラでとらえて画像化する。
CTなどの画像検査では、通常、頭部、胸部、腹部などと部位を絞って検査を行うが、PET検査では、全身を一度に調べることが出来る。
現在PET検査といえば大半がブドウ糖代謝の指標となる18F-FDGという薬を用いた”FDG-PET検査”を指す。
CT検査などでは形の異常を診るのに対し、PET検査では、ブドウ糖代謝などの機能から異常をみる。
「PET-CT」検査の流れ
済生会中津病院でのPET-CT検査の流れを改めて画像付けでご紹介します。
病院ではミネラルウォーターやお茶が無料で用意されていました。
・済生会中津病院PETセンターパンフレットより引用
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以上で終了です。
トータルで約3時間。案ずるより産むが易しです。
◎「がん」の嫌いな食べ物。
前々回、「がん」は甘い物が好物と書きました。
では苦手な食べ物は何でしょう。
私は医者ではないので専門的な話は控えますが、ズバリ、がんは「ゴーヤ」と「ブロッコリー」が大嫌いです。
まるで人間みたいですね。
幸い私はどちらも好きなのでモリモリ食べています。
他にアルカリ性食品、豆類とかも苦手にしていますが、この辺の話はし出すと長くなるので
またの機会とさせてください。
とりあえず、今日の晩ご飯はゴーヤチャンプルーで決まり!
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