柵飯事 2 ~shigaramimamagoto~

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yahoo からの引越し組です。
今では国宝・重要文化財や新宗教の建造物巡りの記事が多くなりましたが、古生物・化石、ジュニアテニス、社会学、コーヒー、ユーロロックのネタなども投稿しています。

 この「新」シリーズ、千葉県の土木遺産を回っていて、非常に地味な2か所を残して一昨年の8月に終えたはずでした。しかし、他の建造物探訪時に併せて立ち寄ることができましたので掲載し、今度こそ最終回とします。

 

堀江水準標石と飯沼水準原標石

 こちらは2007年に土木遺産に選奨された浦安市にある「堀江水準標石」です。装飾豊かな本殿(浦安市指定有形文化財)がある清瀧神社の隅にひっそりあります。水準点とは、そこを起点として標高を計測することろを言います。測定の方法は国土地理院のHPをご覧ください。
 1872年にオランダ人技師によって旧江戸川の水位、というか旧江戸川の水面から水準点までの高さを測量するために設置された、水準測量の原点です。
 
 

堀江水準標石、土木遺産

 銚子市にある「飯沼水準原標石」です。こちらは同年、同技師によって設置された利根川の水位測定のためのもので、同じく水準測量の原点とされています。真言宗単立寺院の円福寺の境内にあり、2015年に土木遺産に選奨されています。
 
 ちなみに円福寺の境内はめちゃくちゃ広いわけではありませんが、銚港神社を構えるほか、300年前に建立された大仏、2009年に建立された五重塔がある立派な寺院です。
 ただし、HPでは千葉県内唯一の五重塔と謳っていますが、五重塔に関しては重文の法華経寺、1991年建立の本土寺のものがあり、間違いですね。

飯沼水準原標石と寺院

 
 
 測量は河川改良事業の基盤中の基盤。非常に地味ではありますが、土木遺産としては欠かすことのできないところなのでしょう。
 なお、文化財等の指定にはその時々の選考委員等の考えが大きく影響するのもであって、他県では違う判断をする、大人の事情を考慮するってことも当然にあろうかと思いますが、土木遺産や県指定以上の文化財建造物であれば、相応の歴史的価値があろうかと思いますし、実際に回ってみて色々感じるところも出てきて非常に良かったです。
 気が変わる可能性も十分にありますが、土木遺産のシリーズはもとより、千葉県の文化財建造物探訪はひとまずここで締めくくりたいと思います。
 
【おわり】

 今回の千葉県指定有形文化財の建造物の探訪は安房地域、すなわち館山市を中心とした千葉県の南端エリアです。千葉県は下総、上総、安房の三国で構成されており、その中でも安房地域は地域信仰に根付いた寺社仏閣の文化財の宝庫です。

 

 まずは館山市の古刹、「那古寺」(なこでら) です。現在は成田山と同じく真言宗智山派です。

那古寺の多宝塔と観音堂

 多宝塔(1761年)です。多宝塔とは二重塔のことで、東日本における木造の中世ものは千葉県南総市のものを含め3塔、近世のもの関東では埼玉に3塔、福島、茨城、栃木、神奈川に1塔ずつ、そしてここだけのはずです。
 銅葺屋根というのも江戸期らしいです。他方、亀腹と呼ばれる一層と二層の間にカーブのかかった構造があり、この部分は一般的には漆喰なのですが、歪めた素木で作っているのが珍しい。
 

那古寺の多宝塔と観音堂

 その奥にある観音堂(1758年)です。これも立派なのですが、内部の厨子(仏壇のようなもの。撮影不可。)がかなりキラキラ感がありました。
 
 

安房高校旧校舎、歴史的建造物

千葉県立安房南高等学校旧第一校舎

 館山市街地の「千葉県立安房南高等学校旧第一校舎」(1930年)です。かっこいい。
 
 

大巌院四面石塔 千葉県安房地域

 

館山大巌院四面石塔

 館山市街地のはずれにある浄土宗の「大巌院」の四面石塔(1624年)です。それぞれの面に日本漢字、印度梵字、中国篆字、ハングルで南無阿弥陀仏と刻まれています。
 
 

千手院石造宝篋印塔

 真言宗智山派の無人寺、「千手院」石造宝篋印塔(1300年代中期)。保存状態はかなり良い部類です。
 寺は物置小屋か集会場を思わせるもので、実態としては敷地は古い墓地です。
 
 

手力雄神社本殿 彫刻流造

 館山市の東端の山あいにある「手力雄神社」( たぢからおじんじゃ )の本殿です。神主のいない、駐車場もない寂れた境内になかなか派手な彫刻が施された立派な流造が確認できます。1584年の建立とされていますが、1709年の改修で相当手が入っているようです。
 
 
 1600年代末建造の「石井家住宅」は解体保存作業のため見ることはできず。

 

 

 南房総市の県指定有形文化財は既に探訪済み、又は見ることができないものです。

手力雄神社本殿の彫刻

 国指定重要文化財4棟を抱える「石堂寺」山王宮(1500年代後半)。

 

 

めがね橋 (1888年)

 「めがね橋」(1888年)。

 

 

 「賀茂神社」の本殿(1574年)は覆堂の中にあり、全く見ることはできませんでした。

 

 

 さらに東の鴨川市の県指定有形文化財です。

千手院石造宝篋印塔

 前回の探訪時に撮り忘れていた「清澄寺」石幢(1424年)です。結構な急坂の上にあります。

 

 

 他の日蓮由緒寺の文化財は既に探訪済みです。

千葉県安房地域の那古寺山門

  「誕生寺」仁王門(1706年)。

 

 

手力雄神社 本殿 彫刻

 「清澄寺」中門(1647年)は建立から約200年後に大幅に仕様変更されたそうです。
 
 
薬王院の薬師堂と千枚田
 右にあるのが「清澄寺」石造宝篋印塔(1407年)。
 
 

 さて、鴨川市の次の2棟は新たに探訪したものです。

薬王院の薬師堂、千葉県指定有形文化財

 こちらもかなり僻地にある真言宗智山派の「薬王院」の薬師堂 (1648年)です。和様が強く出た建築様式です。境内の草刈りをされていた檀家さんと思しき方にだいぶん不審がられました。確かにこうしたマイナーな古い建造物を見に来る人はいないでしょうけど。
 
 
【以下、探訪時は県指定有形文化財でしたが、令和7年10月に国指定重要文化財に格上げされました。同内容の記事をタイトルを変えて掲載しています。】

手力雄神社本殿 彫刻と流造

 

手力雄神社本殿と境内

 最後は、近くの千枚田が有名な真言宗智山派「大山寺」の不動堂(1803年)です。なかなかの高台にこれだけ巨大な、特に入母屋屋根が立派な伽藍を造るのはさぞかし大変だったのでしょう。こちらも向拝(正面の庇)に波の伊八の彫刻が掲げられています。
 また、不動尊内部には宮殿(くうでん)という派手な厨子(「ずし」。仏壇の大きいバージョン)があります。宮殿は長押と呼ばれる建材以外は、素人目に見て禅宗様が出ている建築様式で、圧倒的にきらびやかです。
 寺内部ですので撮影は禁止です。
 

大山の千枚田と山並み

 ちなみに、大山の千枚田です。ブランド米、長狭米 の産地ですね。
 
 さて、今回をもってこのシリーズはお開きとなります。県指定文化財72棟のうち(探訪時。大山寺の重文への昇格により現時点では71。)、解体保存中の2棟(いずれも住宅)と覆堂の中で見えない神社本殿3棟を除き探訪しました。これに加えて2棟も覆堂で非常に見えにくかったですが管理上のためとは言え、非常にもったいない気がします。覆堂内にある本殿は、少なくとも東日本では一番多く(5/11)、地域特性というよりは県のトレンドなのでしょう。

 ただ、千葉県の神社、寺院の数はいずれも全国6位、関東ではいずれも1位ですので、良い感じに古社、古刹の建造物が残っているのも納得です。特に、各県の判断に委ねられているとは言え、地域に根ざした神社の県指定文化財の数が関東では最も多いというのも興味深いですね。中世までは東京でも神奈川でもなく、千葉が関東エリアでは重要な拠点でしたので、その影響もあるのかもしれません。
 県指定文化財だと建造物の良さと地域との関係のバランスが良く、全体的にはなかなか面白かったです。  
 
【終わり】
 今回は夷隅(いすみ)地域、すなわち九十九里海岸よりもさらに南のあたりから、その西に行った房総丘陵の真ん中あたりまでの、いわばチーバ君のおしりに相当するエリアの千葉県指定有形文化財の探訪録です。
 エリアの東から内陸に進んでいきます。
 
 いすみ市の「飯縄寺(いづなじ)」の本堂です。入口に寺務所があり、そこでお金を払って境内に進み、いすみ市指定文化財のいい感じの伽藍をいくつかやり過ごした敷地の奥に本堂があります。

飯縄寺本堂:波の伊八の彫刻と江戸中後期の様式

 
 1797年に建立された天台宗の伽藍で、千葉といえば波の伊八の龍や波の彫刻がいきなり目に入ってきます。

飯縄寺本堂の波の伊八彫刻

 撮影禁止ですが、内部にある牛若丸と大天狗の一枚板の彫り物はまさに圧巻です。建物自体は江戸中後期の典型的な様式です。
 
 
 そこからいすみ市の内陸に向かうと、同じく伊八を売りにした天台宗の古刹、「行元寺」があり、本堂の横にある旧書院が県指定有形文化財となっています。

飯縄寺本堂と緑豊かな境内

 1809年に建築されたもので、住職の書院であったものを移設後に客殿として使用していたそうです。もともとは茅葺のようですね。内部には、やはり伊八の波の彫刻の欄間がいやというほど取り付けられています。
 
 
 さらに西に向かうと、大多喜町の静かな山間に「六所神社」があります。無人の神社で、拝殿はそっけない感じですね。

大多喜町 六所神社 本殿

 
 奥の本殿が指定文化財です。1500年代後半のものと推察されていて。いかにも地方の神社らしいシンプルな流造です。素木造なのも良いです。

六所神社本殿:千葉県指定有形文化財

 

大多喜町 六所神社 本殿 白木造り

 それなりに境内は手入れされており、本殿も丁寧に扱われている感じがします。
 
 いよいよこのシリーズも次回で最後となります。