茶の湯の疑問あれこれ 其の三 莨盆(たばこぼん) | 渋谷 茶道教室「松濤庵」

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渋谷 茶道教室、松濤庵のブログ。季節に合わせた本格的なお道具を使用して稽古いたします。男性、お年を召した方、全くの未経験者も歓迎いたします。

2か月近く、ステイホームほ日々が続いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。私は家の片づけをしていて、母のお茶に関係した古い本をたくさん発見して喜んで読んでいます。

 

松濤公園の紫陽花

 

今回は「莨盆は何に使うのか?」という質問についてです。莨盆は、 煙草盆とも書きます。坐忘斎御家元は、「煙草盆」ではなく「莨盆」と箱書に書かれるそうです。香りの良い草を煙管に詰めて一服することは、席中の空気を変える、雰囲気を和らげる意味があるとのこと。残念ながら本当に莨盆を使って煙草を吸っている人を見たことはありませんが、「ごゆっくり、おくつろぎください」の意味で用意します。

 

山法師(やまぼうし)

 

莨盆は茶会の薄茶席で正客が座る位置の目印に置かれています。また、茶事では寄付、腰掛、薄茶席と3カ所にそれぞれ違う莨盆が置かれます。莨盆には火入を左に灰吹を右に置きます。正式には、煙草入と煙管(キセル)も置きます。火入には通常、風炉用の灰を入れて火をおこした火入炭を入れます。裏千家は火入炭を僅かですが左に傾けて火箸で灰に筋を入れます。なお、表千家は右側に傾け、武者小路千家は真っすぐとのこと。(その昔、三千家の御家元同士で相談して決めたのでしょうか?) 灰吹には水を少量入れます。3カ所の莨盆それぞれの火入炭の火が消えないよう用意するのはたいへんなことですが、お客様への細やかな心配りを表していると思います。

 

 

ところで、濃茶はその一碗のために亭主も客も真剣ですが、薄茶はコーヒー、紅茶のようにゆっくりくつろいでいただきます。そのため、茶事の薄茶ではお客様に座布団をお出しして、煙草盆をお出しして、それから干菓子をお出しして、薄茶の点前となります。客は遠慮することなく感謝して座布団を使わせていただきます。 以前、大橋茶寮の茶事に伺ったとき、友湖の座布団を出していただいたことがあります。恐る恐る座らせていただきましたが、とても座り心地がよく、さすが千家十職、帛紗や仕覆だけでなく何を作っても素晴らしいことを知りました。

 

薄茶席から退席する際は、床の間と点前座を拝見して名残り惜しみ、その後に莨盆、火入と火入の中のけしきを拝見するのも楽しみです。残念ながらお茶会は皆、中止になってしまい寂しい限りです。お茶会に伺える日が一日も早く来ることを願っています。