茶の湯の疑問あれこれ 其の一 風炉 | 渋谷 茶道教室「松濤庵」

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渋谷 茶道教室、松濤庵のブログ。季節に合わせた本格的なお道具を使用して稽古いたします。男性、お年を召した方、全くの未経験者も歓迎いたします。

巣ごもりの日々が続いておりますが、皆様お元気でお過ごしでしょうか。わが家は皆、変わりなく元気にしております。庭の茶花も出番がなく寂しそうなので、ブログでお披露目させてください。

 

最後の椿一輪

 

宝鏑草(ホウチャクソウ)

 

紫蘭(シラン)

 

椿の若葉の隣で、木槿(ムクゲ)の新芽も負けず元気一杯に伸びています。夏の木槿の花が楽しみです。

 

 

稽古を暫くお休みさせていただいていますが、お茶のことを忘れないでいてほしいので、日頃、疑問に思ったこと、質問いただいたことを何回かに分けて紹介させていただきたいと思います。一回目は風炉についてです。

 

質問: どうして風炉と言うのですか?

 

風呂と風炉は同じ発音ですが、呂と炉で異なります。お茶をされている方ならば、「風呂」と書かれる方はまずおられないと思います。風呂は温室と同じ意味だそうで、昔は「蒸し風呂」のことを風呂と呼んだそうです。

 

風炉の炉は火の器(うつわ)の意味で、同じ炉を使う言葉に香炉があります。炉は畳の中に切ってあり11月から4月に用いて、風炉は5月から10月に用いて、唐銅(からかね)、鉄、土、陶器、木製などでできています。なお、英語では炉を"sunken hearth"(地面にある炉床の意味)、風炉を"braizer" (火鉢の意味)と呼びます。

 

ではなぜ、「炉」の字の上に「風」の字を加えたのでしょう。

 

 

井口海仙先生の「茶の湯読本」によれば、江戸時代中期に書かれた「和漢茶誌」には、「巽主風 離主火 坎主水 風能興火 火能熱水・・・・。」とあり、風は火を興し、火は水を熱するので、風の字を加えたのだろうとのことです。巽、離、坎は陰陽五行(四象)から生じた八卦(はっけ)に含まれていて、巽は風、離は火、坎は水を表します。

 

ちなみに、風炉の灰形を作った後、底に火箸で坎(水)の卦を書き、火を鎮めるようにします。陰陽五行は茶の湯の点前、茶道具と至る所に関わりがあります。

 

 

今年は早めに炉を閉じて、風炉の用意をしています。風炉の畳に替えると茶室が広くなったような気がして新鮮な気持ちになります。皆様を5月になったら、いつでも初風炉にお迎えできるように準備したいと思います。どうか皆様もお元気で。