近年急激に普及しつつあるロードバイクにおいてのチューブレスレディだが、私あまり好きではない。その理由をこのブログはじめての記事として挙げていこうと思う。

 

まず、ロードバイクにおいての“チューブレス”の歴史を簡単に紹介していく。

 

ロードバイクのチューブレスが世に広く知れ渡ったのはシマノが初めてチューブレスホイールを出した2010年ごろだろう。これは現在一般化されているチューブレスレディと違い、シーラントを使用しない“ピュアチューブレス”。しかしこれには問題がある。タイヤとリムの精度が高くないと空気が保持できないうえ、精度がばっちり出ていてもタイヤの組付けが固く、非常に手間がかかる点。それらの問題を解決すべく登場したのがチューブレスレディだ。(その名の通り、出た当初はシーラントを使用すればチューブレス運用ができ、チューブを使えばクリンチャー運用もできる、いわゆるコンパチ使用が売りだった(気がする)。)
チューブレスレディの利点はシーラントを使用することによって、空気漏れを限りなく少なくできる点。このチューブレスレディを広めたのMAVICのUSTだろう。独自の規格でリム、タイヤ、シーラント等のチューブレスシステム全体を作り上げるこのによって、組付けからその後の運用までを圧倒的に最適化させたことにより、プロアマとわず、様々なユーザーに広まっていき、その後いろいろなメーカーがロードチューブレスレディ(以後TLRとする)に乗り出していった。

 

しかし、今現在の状況において、私はロードバイクにおいてのTLRは好きではない。

理由はいくつかあり、まずは非常に不安定はタイヤシステムであるからだ。
TLRはシーラントを用いることによって、タイヤとリムの精度の悪さを穴埋めして無理やり“チューブレス”運用しているようなもの。MAVICのUSTのようにシステム全体が統一された規格物で運用するならまだしも、様々なタイヤ、ホイールメーカーが参入している現在では機材の相性などの不確定要素が多く、この運用方法には限界がある。

その不確定要素とはなにかと言うと、わかりやすいところだとタイヤとリムの相性だ。もちろん相性が悪ければ空気は抜けやすくなってしまう。ほかにはリムテープ。ホイール指定のものもあればないものもある。幅や厚みなどさまざななブランド、種類があり、相性が悪ければ空気が抜けやすいだけでなく、シーラントがリム内に侵入してしまう恐れさえある。さらにはバルブ。これもホイール指定ものがあるものもあるが、ないものも多い。相性が悪ければリムテープと同じようになってしまう。それぞれのパーツの組み合わせはほぼ無限大で、それぞれを管理するのは大変で、さらにトラブルが発生しても、その発生源を特定するのが困難で、手間と時間がかかる。たとえ、これらの相性問題を解決できたとしても、この後の運用においても面倒なことのが多い。
まずは、シーラントの維持管理だ。シーラントは液体のため、しばらくすると乾いてしまうため、定期的に継ぎ足しが必要だ。

また、チューブレスレディは万が一タイヤに穴が開いてもシーラントが塞いでくれるというのを耳にする。しかし、タイヤが太いMTBならまだしも、ロードバイクにおいては、タイヤが細く、空気圧が高いため、シーラントがその空気に押し出され、タイヤがぷにぷになるまで空気が抜けないとシーラントが穴を塞いでくれないパターンが多い。(粘性のあるゴムの棒状のパンク修理道具もあるが、これもロードの場合は空気圧に負けて噴き出されてしまう。)シーラントで塞がらない穴が開いてしまったら悲惨だ。出先では基本的にはタイヤを外し、中にチューブを入れれば復帰できるが、タイヤを外せば中のシーラントで手やホイール、タイヤはベッタベタになる。もし、バイクがリムブレーキであればリムに付着したシーラントで、ブレーキが利かなくなる恐れさえある。

次に、メリットが少ないこと。

TLRのメリットというと乗り心地が良い、軽量などと言われるが、これは厳密にいえば間違っている。(と思う。)
まず、乗り心地が良いとされる理由は、クリンチャーに比べ、低圧運用するからだ。TLRのタイヤは空気保持層があり、タイヤ自体は固いものが多い。そのため、空気圧を乗り下げて乗り心地の悪さを帳消しにする。しかし、空気圧が低ければタイヤはヨれる。これはダンシング時などにパワーロスとなる。確かに、空気圧が低くても転がり抵抗が少ないのは事実だが、これはこのメリットを帳消しにしてしまうほどのデメリットだと思う。乗り心地のよさにおいては、ラテックスチューブ入りの高級チューブラー、もしくはクリンチャーのほうが優れていると思う。これらはタイヤとチューブがとてもしなやかなため、7気圧以上の高圧でも乗り心地が良いのだ。高圧であればタイヤはヨれないし、走りも軽快。個人的には高級チューブラーの7気圧とTLRの5気圧は同じくらいの乗り心地だと思う。

そして次に軽量性について。MTBにおいては、クリンチャー運用だとチューブが数百グラムと重量がかさむため、TLRにするだけでそれだけの軽量化が見込める。しかし、タイヤの細い、ロードにおいてはチューブの重さはせいぜい120グラム程度。その上、チューブレスレディタイヤは重い。これであれば、レースグレードのクリンチャータイヤにラテックスかTPUのチューブを入れたほうがより軽量にできるし、後の運用においてもメリットが大きいだろう。

 

ここまで私はTLRについて散々なことを書いてきたが、別にTLRを全否定しているわけではい。実際に、MTBとCXではチューブレスレディを使っている。しかし、ロードにおいてはメリットが少なく、デメリットがあまりも大きすぎるのだ。ここでさらに伝えたいのは、TLRは、低圧でこそ真価を発揮すると思う、悪路を走るMTBやCXでは低圧にしないとまともに走れない。そこで、転がり抵抗、さらに、リム打ち耐性の高いTLRは非常に有効なのだ。

 

ではここからは私の考えるロードバイクにおいての最適なTLR運用についても書いていく。
先ほどのデメリットの部分でも書いたようにTLRは不確定要素が多い。その不確定要素をなるべく少なくしていくのが良いだろう。まずはリムテープ問題。これはMAVICやカンパから出ているニップルホールレスホイールを選べば解決できる。テープを張る手間が減るだけでなく、古いシーラントを落とす掃除も簡単になる。
次になるべく新しいモデルのタイヤ、ホイールを選ぶこと、例えば4,5年前のホイールは規格等があいまいで、空気漏れがひどいもの多い、それに比べ、近年のホイールはタイヤメーカーと共同開発されたものや、前述したトラブルをフィードバックされ作られたもの多く、比較的安定運用ができる。
とはいえ、TLRの根本的なデメリットは、シーラントを使うこと。それらの解決にはならないのだ。
なので、個人的にはまたピュアチューブレスが出てくればいいなと思っている。いっそのことタイヤとリムのかみ合わせガッチガチにして、車のようにタイヤチェーンジャーを使わないといけないぐらいにしてしまえばいいと思う。しかし、その作業に耐えうる頑丈なリムを作らないといけないし、作れたとしても重量がかさんでしまうため、現実的ではないだろう。

 

以上のことから、私はロードバイクにおいてチューブレスレディをお薦めしない。