コンサドーレで涙を流す理由 | コンサが好きだから。

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Sapporo Hokkaido Japan Consadole Sapporo
J2 コンサドーレ札幌の応援ブログ。

あの瞬間、俺は涙を流した。


幼少期から絶対に泣かなかった。悲しい事があっても、怪我をしても、いじめられても。
泣くのはかっこ悪いから。たとえ泣きそうになっても必死に我慢していた。


ただ、そうはいかなかった日がある。


ルヴァンカップ決勝。
後半ロスタイム4分まで経過していた。1点リードを許す展開。時間的にラストプレーだろう。
武蔵が粘って獲得したコーナーキック。
応援のボルテージは一気に最高潮へと達した。今まで体感したことのない応援だった。

進藤も俺達サポーターを煽った。
その煽りに乗せられるかのように、
メインもバックも全部、
スタジアムの雰囲気が豹変した。


「何か起きるかもしれない。」


そう感じて一瞬、天を見上げて、

「神様お願いします」

心の中で叫んだ。


それが変とか、恥ずかしいとか、どうでもよかった。それほどあの時の精神状態は普通では無かった。


最後の望みをかけたコーナーキック。
福森がボールをセットした時、
「フクアリの奇跡」がふと頭をよぎった。

あの時のような奇跡をもう一度呼び起こしたい。その強い思いが、頭をよぎらせたのかもしれない。
首に掛けたタオルマフラーを両手でしっかり握りしめながら、足から放たれた、綺麗な軌道を描きゴール前へと流れていくボールの行方を追った。


確かに、サイドネットが揺れた。この目で見た。


起きた。奇跡だ。奇跡が起こった。それも決勝という大舞台で。
俺達のルヴァンはまだ続くんだ、まだ終わってない!
その瞬間、感情が爆発、叫び、地鳴りのような歓声、喜ぶ仲間、崩れ落ちそうな仲間、抱き合う仲間……


もう堪えきれないほどの涙が流れていた。
3年前のフクアリ以来のことだった。

タオルマフラーで拭っても拭っても止まらない涙。
こんな顔見せられないし、
ここで感極まるのはまだ早い。
そう自分自身に言い聞かせながら、必死に堪えた。


その時にはもう、試合は終わっていた。
電光掲示板に映された「延長戦」という文字。

この時初めて知ったが、深井のゴールだった。

深井……泣かせやがって。

不屈の男のゴールはドラマチックが過ぎて、まるでシナリオのある物語を見ているようだった。
安堵に包まれた。一安心。いや一安心どころじゃない。百安心くらいした。


すぐ前で応援していたお婆さんが相方に、


「神様が勝てって言ってるんだよ…!!」


それを聞いてもう感情が限界を越した。
今、普通じゃあり得ない事が起きているんだと。

危うく、涙がアンコールするところだった。


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「儚く、散った。」

この言葉が似合うだろうか。


コンサドーレは敗者となった。
紙一重だった。心から悔しかった。
ただ、このチームを心から誇りに思えた。

優勝に最も、最も、最も近づいたチームだった事に間違いはない。

あのコーナーキックのゴールが無ければ90分での敗者。
しかしあの奇跡が起きた事で、延長の逆転、そしてPK戦で優勝を確信する瞬間までもを味わえた。

それはきっと、優勝のほんの僅か手前ギリギリまで近づいた、大きくて貴重な経験なのだろう。


試合前の手記に俺はこんな事を書いていた。


元プロボクサー、モハメド・アリは言った。

「不可能とは可能性だ。不可能なんてありえない。」


まさにその言葉が全てだった。


筋書きのないドラマを魅せられた。

こんな試合、もうこの先、一生観れないかもしれない。



帰り道に勝者のカンピオーネを耳にしながら、この経験が、きっと未来に繋がることを信じた。

またこの場所で涙を流す、その瞬間まで。