冠動脈疾患患者にPCIは有効か? | 循環器内科解体サイト

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以前から冠動脈疾患患者へのPCIが有効だと言われています。

この試験は、冠動脈疾患の中でも安定性の患者に対し実施されて試験です。

 

 

安定冠動脈疾患患者を診る際にご参考にしてください。

 

トライアル名:COURAGE

 

対象:安定冠動脈疾患患者の初期(安定CAD)

 

対象群:

  PCI群:薬物療法+PCI

  非PCI群:薬物療法のみ

  (補足:2287例。

 

エンドポイント:1次=全死亡+非致死的心筋梗塞

 

結果:両軍に有意差はなかった。

詳しい結果は下部へ。

 

 

ヨーロッパやアメリカの変化

第33回欧州心臓病学会(ESC 2011)で発表された3枝病変の患者さんの登録研究(CREDO-Kyoto PCI/CABG Registry Cohort-2)ではCABGに比べPCIがネガティブ。

COURAGE発表後,米国では10〜15%くらいPCIが減。日本への影響は少ない。

 

 

【結果】

PCI施行例のうち≧1本ステント植込みは94%,DESは31例のみ。病変成功例93%。
一次エンドポイント確認前または追跡期間終了前に追跡不能となった患者は両群で9%のみ(PCI群107例,Medical群97例)。
5年間の薬物治療:ACE阻害薬(PCI群66%,Medical群62%),スタチン系薬剤(93% vs 93%),aspirin(95% vs 94%),β遮断薬(85% vs 86%),Ca拮抗薬(42% vs 52%),硝酸エステル(40% vs 57%)。LDL-Cは両群で低下(中央値:71mg/dL vs 72mg/dL)。生活習慣(食事,運動,禁煙)改善度は両群とも高かった。
一次エンドポイントはPCI群211例(19.0%),Medical群202例(18.5%)で両群同様であった(ハザード比1.05;95%信頼区間0.87~1.27, p=0.62)。死亡(7.6% vs 8.3%, 0.87;0.65~1.16, p=0.38),非致死的MI(13.2% vs 12.3%, 1.13;0.89~1.43, p=0.33),脳卒中(2.1% vs 1.8%, 1.56;0.80~3.04, p=0.19)も両群間に有意差はなかった。
二次エンドポイントである死亡+MI+脳卒中(20.0% vs 19.5%, 1.05;0.87~1.27, p=0.62),急性冠動脈疾患(ACS)による入院(12.4% vs 11.8%, 1.07;0.84~1.37, p=0.56)においても両群間に有意差はなかった。
短期の狭心症はPCI群で有意に抑制された(1年後の非発症率:66% vs 58%, p<0.001,3年後:72% vs 67%, p=0.02)が,5年後の非発症率に両群間差はみられなかった(74% vs 72%, p=0.35)。
再血行再建術はPCI群21.1%,Medical群32.6%とPCI群で有意に少なかった(p<0.001)。
多枝疾患,MI既往,糖尿病などのサブグループ解析でも一次エンドポイントに差がなかった。

【結論】
安定冠動脈疾患患者における初期治療として,至適薬物治療にPCIを併用しても,死亡,MI,その他の主要な心血管イベントのリスクは低下しなかった。

 

参考:循環器トライアルデータベース