令和6年 司法試験 民訴 再現答案 答案構成40分 7枚 再現率90%

 

第1         設問1

 1 課題1

(1)      任意訴訟的担当の意義及び明文なき訴訟担当が認められるための要件

任意的訴訟担当は、当事者適格の位置づけ場面である。当事者本人が訴訟追行するのが原則だが、第三者が本人に代わって行うことができる。訴訟担当としては法定訴訟担当と任意的訴訟担当がある。法律上当然に当事者となる場合と異なり、本人の意思により本人に代わって訴訟追行権が授与されるのが任意的訴訟担当であり、これが意義である。

 (2)任意的訴訟担当要件として、選定当事者(30条)のような明文がある場合に認められるのが原則である。それは、弁護士代理の原則(民訴法54条1項)や訴訟信託禁止の原則に反する危険があるからである。

もっとも、弁護士代理の原則(民訴法54条1項)や訴訟信託禁止の原則に反せず、これを認める合理的必要性がある場合には明文がなくても任意訴訟担当が認められる。

 2 課題2

(1)      判例の立場

 昭和45年判例では、組合独自には権利能力がないため組合から組合員に対して当事者として訴訟追行の授権という構成をとった。

組合員には業務執行権があり、独立の権利能力があり本人たる組合の意思にそった行動を期待できるため弁護士代理の原則や訴訟信託禁止の原則に反しない。

そして、組合自らが訴訟することができないため、これを認める合理的必要性があるため組合員の任意的訴訟担当を認めた。

(2)これに対して本件事案は遺産分割であり相続によるもので組合が組合に訴訟追行権を授与した事例と異なる。また、Xらが共同して訴訟追行すること自体は可能であるため上記判例の射程が及ばないとも思える。

しかし遺産分割協議では、本件建物についてXらがそれぞれ3分の1の持分で共有すること、Xら全員が賃貸人となること、本件契約の更新、賃料の徴収及び受領、本件建物の明け渡しに関する訴訟上あるいは訴訟外の業務についてはX1が自己の名で行うことが取り決められていた。このことからXらからX1に対する訴訟追行権の授権があるといえ上記判例に似た状況が生じている。

次に、共同で訴訟提起すると時間的経済的負担が大きく訴訟追行が困難になるため、判例と同じように訴訟追行権の授権をする必要がある。

X1は自ら9月に本件契約の現状を調べ、6月から8月までの3か月分の賃料未払いが判明していることから本人Xらのために訴訟追行の意思が期待できるため、弁護士代理の原則や訴訟信託禁止の原則に反しない。

自らが当事者となることは時間的、経済的負担が大きいためこれを認める合理的必要性がある。

したがって判例の射程が及ぶためX1による訴訟担当が明文なき任意訴訟担当として認められる。

第2         設問2

 1 裁判上の自白の意義および要件

(1)裁判上の自白(民訴法179条)とは、口頭弁論又は弁論準備手続における相手方の主張と一致する自己に不利益な事実を認める陳述を意味する。要件としては、口頭弁論又は弁論準備手続で行われること、相手方の主張と一致する事実であること、自己に不利益な事実を認めることである。

 自己に不利益なとは基準の明確性から相手方が証明責任を負う事実を意味する。

事実とは、権利の発生変更障害消滅に直接影響を及ぼす主要事実を意味する。証拠と共通する間接事実、補助事実に自白としての拘束力を認めると自由心証主義(247条)を害するからである。

 2 裁判上の自白が成立しないとの立場又はこれが成立するとしても撤回が許されるとの立場

結論としては、裁判上の自白の成立を認めつつ、撤回が許されるとの立場を取る。

 (1)自白が成立するかどうかにつき、まずYの陳述が主要事実を認める陳述か検討する。

ア本件訴訟の請求原因は①賃貸借契約及び引き渡し②賃貸借契約の解除原因③解除の意思表示をすることである。

まず、令和2年4月1日、AはYの間で本件契約を締結し(民法601条)、本件契約に基づき建物をYに引き渡している(借地借家法31条)。Aは令和3年7月に死亡し相続が開始(882条)している。そしてその子である相続人(897条1項)に権利義務が包括承継(896条)しており賃貸人たる地位がXに承継されており①を満たす。

次に、令和3年6月から8月までの3か月の賃料が未払いという解除原因がある(②)。そしてL1は本件契約を解除する旨を内容証明郵便でYに送付しているため解除の意思表示(540条1項)をしている(③充足)。

イこのうち、②についてYは「自分の妻が本件建物において何回か料理教室を無償で開いたことがある」と述べ、用法遵守義務違反に当たる事実を陳述している。

たしかに別の解除原因であった。しかし本件契約で賃料の未払いのみならず他の目的での使用はしないこと違反した場合に催告なしに撤回できるとしていることから未払のみならず用法遵守違反も同じく請求原因事実である。

そこでかかる事実は主要事実に当たる。そして第一回弁論準備手続において、相手方Xに証明責任のある事実を認めているため裁判上の自白が成立する。

(2)裁判上の自白の成立後の撤回が許される点

ア裁判上の自白が成立した場合には、拘束力、不可撤回効、不要証効が生じる。そして裁判上の自白が成立すれば撤回できないのが原則である。一度自白すればそれを信頼して相手方は行動するため、自由に撤回できるとなれば相手方の信頼を裏切るからである。

  一般的には自白の撤回要件としては、相手方の同意がある場合、自白が真実に反し錯誤がある場合、刑事上罰すべき行為により自白がなされた場合であるが本件はどれにも当たらない。

 しかし自白の撤回が許されない根拠、相手方の信頼保護という観点から相手方の信頼を保護する必要がない場合には撤回が許されると解する。

 そこで本件陳述がされた場面や当該手続の目的を踏まえ相手方の信頼を保護する必要がない場合には自白の撤回が許される。

  イ本件陳述がされた場面は、第一回弁論準備手続期日である。その陳述をYは第二回弁論準備手続期日前に持ち出している。

 当該手続の目的(168条)は、「争点及び証拠の整理」を行い、争点を早期に確定させる点にある。裁判官が、自由に当事者双方が議論できるように述べた理由は争点となっている信頼関係破壊の有無を早期に確定するためでさる。Yは信頼関係が破壊されていない事実として上記事実を主張している。この事実の主張を許さないとすれば当事者は自由に主張できず争点を早期に確定できない。また、今更持ち出すとかかる事実の審理を行い訴訟の遅延も生じるため争点を早期に確定するという趣旨に反する。

 また、契約解除訴訟提起の際、Yの陳述の根拠となる用法遵守義務違反の事実につきXが参加しているのであればかかる用法遵守の事実をXは知っており本件訴訟の際に併せて主張することも可能であった。なのにXは主張しなかったためXの自白が撤回されないという信頼は保護に値しない。

 したがって自白の撤回は許される。

第3         設問3

1        既判力によって基準時前の事由に関する主張が遮断される根拠

確定判決の後訴の通用力ないし拘束力たる既判力(114条1項)の正当化根拠は手続保障の充足に基づく自己責任であり、基準時は事実審の口頭弁論終結時(民事執行法35条2項参照)とされている。かかる時点までには当事者は自由に訴訟資料の提出、立証活動ができ攻撃防御方法を尽くせるため手続保障に基づく自己責任を問えるからである。

したがって既判力によって基準時前の事由に関する主張は遮断される。

2        本件判決の既判力によって解除権行使の主張を遮断することが相当かどうか

(1)訴訟上の形成権行使につき、本件判決の既判力によって遮断されるか。

紛争の一回的解決という訴訟の目的及び手続保障の調和から基準時後の形成権行使については前訴訴訟物に内在付着する瑕疵を主張する権利であれば遮断されると考えられている。

(2)反対説

用法遵守義務違反を理由とする解除権行使は前訴の権利障害事由であり、また本件セミナーの開催は基準時前に存在していたため前訴と内在付着する瑕疵といえる。そして相殺と異なり提出しても実質敗訴にならず前訴での提出は期待できるため手続保障に基づく自己責任は尽くされたといえるため遮断される。

(3)自説

しかし、前訴は賃金未払を理由とする解除及び本件建物の明け渡し請求であり、争点は賃料未払いに集中していた。別の解除原因であり前訴訴訟物と内在付着する瑕疵といえない。

そして確定後はじめて用法遵守義務違反の事実をXらが知っており前訴で提出する機会がないため前訴での提出は期待できない。

したがって遮断されない。                                            以上

 

 

実際はもう少しぐちゃぐちゃで多少修正が入っています。判例と事案の違いについて事実関係にくらいついて、かつ誘導には乗ったつもりなのでBCくらいは取れていて欲しいです。