第1 設問1

 1 本件決議の効力を争うための乙社の立場において考えられる主張

  (1)乙社としては推薦したFを新たに取締役に選任する旨の議案の要領を本件総会の招集通知に記載することを請求した(法305条、299条)ところ無視し記載せず招集通知が行われそれにより本件決議が行われている。そこで本件決議は「招集手続」が「法令」に違反しているとして会社法831条1項1号に基づき決議取消を主張することが考えられる(①主張)。

  (2)Dは乙社の代理人としてEを本件総会に出席させ動議を提出したもののAから株主総会における議決権行使の代理権の□を甲社の株主に限る旨の定めを理由に拒絶している。そこで行われた本件決議は「決議方法」が「定款」に違反しているとして決議取消を主張することが考えられる(②主張)。

 2 主張の当否

  (1)①主張

    まず、議案の通知要領請求にAは応じる義務があるか。

    そもそも議案の通知要領請求は株主の重要な権利である以上、原則として応じなければならない。もっとも権利の濫用に繋がるような請求がある場合には応じる義務がない。

 本件で乙社は甲社の株式1000株を有しており発行済株式の10分の1も保有している。また甲社の業績と経営方針に不満を持っておりAに対し繰り返し意見を述べてきた。このような事情から乙社は甲社の経営に介入し支配するような行為として通知要領請求をしたと考えられる以上権利の濫用にあたる。したがって応じる必要はない。

 したがって招集手続が法令に違反しない。

 したがって①主張は認められない。

  (2)②主張

    ア まず、株主総会における議決権行使の代理人の資格を甲社の株主に限る旨の定款の定めの有効性が問題となる。前提としてEは乙社の委任状を提示している以上310条後段の要件を満たす。議決権行使の代理人の資格制限が310条前段に反するか。

 そもそも同条は強行法規である以上、議決権行使を制限する定款の定めは無効とも思える。しかし第三者による株主総会のかくらん防止の必要性がある。そこで①議決権行使を制限する定款が合理的根拠に基づくものであり②株主の議決権行使の機会を事実上奪うものでない限り有効である。

 本件で議決権行使の制限はかくらん防止のため合理的根拠に基づく(①)。次に、Eは甲社の株主ではないがDの子でありDは甲社の株式を保有している。次にEは取締役ではないが乙社の唯一の従業員であることから乙社への忠実義務を負う取締役と同視できる。すなわちEに議決権行使させてもDの意思に反する議決権行使がされるとは考えにくい。したがって株主の議決権行使の機会を事実上奪うものであり無効である。したがって310条前段に反する。

 イ 次に、裁量棄却(831条2項)が認められるか。本件総会は甲社の総株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数が賛成しておりEを参加させれば決議の結果が変わっていた可能性があるため「違反が重要でない」といえず、「決議に影響がない」といえない。

 したがって裁量棄却も認められないので②主張は認められる。

第2 設問2

 1 乙社の立場において考えられる主張

  (1)本件発行は、公正な払込金額が1株あたり20万円なのにもかかわらず10万円で発行しており「特に有利な金額」(法199条3項、201条本文)に当たるのに株主総会決議の特別決議を経ていない(309条2項5号)結果無効になるという主張が考えられる(①主張とする)。

  (2)本件発行につて甲社は株主に対する通知及び公告を行わなかったことが201条3項、4項に違反し無効となる旨主張することが考えられる(②主張とする)。

 2 主張の当否

  (1)ア まず乙社の①主張について「特に有利な金額」の意義が問題となる。この点、既存株主の利益保護の観点から時価を基準とした公正価格より低い金額を意味する。そして199条3項の趣旨が既存株主の利益保護と資金調達の目的の調整にあるところ公正価格とは、資金調達の目的を達成する上で既存株主にとりもっとも有利な金額を意味する。

 本件で払込金額は1株10万円であり時価の2分の1である。資金調達の目的のためには1割程度差し引かざる得ないケースもあるが50%はやりすぎである。したがって「特に有利な金額」に当たる。

    イ 次に有利発行につき株主総会決議の特別決議を経ないでした効力は無効となるか。新株発行の無効事由が問題となる。

 この点、新株発行を無効にしたときに生じる取引関係者の混乱の観点から重大な法令、定款違反に限定すべきである。

 次に、有利発行につき特別決議を経ない場合、公開会社では転々株式が流通するため引受人の保護が大事である。そして会社への責任追及は423条、847条で解決できる。そこで特別決議を経ない効力は無効とならない。

   ウ したがって①主張は認められない。

  (2)②主張につき、通知公告しなかった場合の新株発行の効力が問題となる。

    ア そもそも201条3項、4項の趣旨は新株発行の差止請求権の機会を株主に与える点にあるところ差止事由があるの募集事項の公示をせず通知公告をしない場合には同条の趣旨が没却される。そこで通知公告をしない場合には、会社が差止事由がないことを立証しない限り新株発行は無効となる。

 本件で乙社は令和5年7月31日の時点で甲社の株式2400株を有するに至っており24%も支配しており支配権が大きい。そしてDは乙社に対し「対立候補を擁立するつもりである。また他の株主にも乙社の提案への賛成を呼びかけるつもりだ」と述べており通知公告すれば乙社が甲社を支配し甲社の業務が妨げられる危険がある。したがって通知公告する必要がなく差止事由がない。したがって無効とならない。

   イ したがって②主張は認められない。                                以上

 

多分厳しい評価だと思います。主要目的ルール書くの忘れました。通知要領や議決権行使の理解も怪しいと思います。Fだ、Fだと言われるかもだがFではない気がする(願望)。Dかな

 

追記 F評価でした。やはり不公正発行落としと設問1壊滅では厳しいですね。黄色のマークで囲ったところが逆鱗に触れたのかも知れません。305条の要件検討すればいいだけなのに、この人何考えているんだろうと思われれば終わりです。

 

310条前段に違反しているか法令違反が本件で問題となるのに定款違反としました。

会社が法人の議決権行使を認めた場合には、定款違反になりますが、拒絶した場合には議決権行使の対象を株主に限る旨の定款の定めに従っているから定款違反にはなりません。ただ議決権の代理権を行使できるのに拒絶している以上310条前段に反しないかが問題となります。ここを勘違いしていました。