旧司法試験の憲法の問題、出席停止の問題がでたときどう対応すればいいか伊藤塾の解答例を参考にしつつ解答考えてみたので是非とも有識者の方、どなたでもアドバイスしていただけると光栄です。令和2年11月25日判例を意識しました。京大ローでも似た問題が出たけど上手く書けませんでした。

 

★元の問題

 

国会議員が院内で人の名誉を侵害する発言をした場合、民事上、刑事上の責任を問われるか。

 

また、所属議員において、右発言を理由に除名の決議がなされた場合、当該議員はその決議の効力を訴訟で争うことができるか。地方議会の議員の場合と対比して、憲法上の観点から論ぜよ。
 

★ 旧司法試験平成6年第2問改題

 院内で人の名誉を侵害する発言を理由に出席停止の決議がなされた場合、国会議員はその決議の効力を訴訟で争うことができるか。地方議会の議員の場合と対比して、憲法上の観点から論ぜよ。

★ 考えた回答

第1 国会議員が本件発言を理由に出席停止の決議がなされた場合、当該議員はその決議の効力を争うことができるか。出席停止の決議の効力に対して司法権の行使が及ぶかが問題となる。
 1 まず司法権とは、法律上の争訟に対して法を適用して終局的に解決する国家作用である。そして法律上の争訟とは具体的な権利義務の存否に関する紛争であってそれに対し法を適用することで終局的に解決することができるものである。そうすると出席停止決議も法を適用することで終局的に解決できる以上、司法権の行使が及ぶとも思える。
 2 しかし、憲法は権力分立等の政治的仕組みを定めている。そして、出席停止決議も直接の明文の規定はないものの除名決議同様、議員懲罰権と同じように考えられるので他の機関からの干渉を排除して権力分立を達成しようとする議員の自律権の一つとして認められている。したがって、出席停止決議に司法審査が及べば権力分立に反する。
 3 したがって、出席停止の決議の効力に対して司法権の行使は及ばない。


第2 これに対して地方議員の場合はどうか。
 1 たしかに、地方議員は住民自治の原則が定められており、議会の運営に関する事項については,議事機関としての自主的かつ円滑な運営を確保すべく,その性質上,議会 の自律的な権能が尊重されるべきであり司法審査が及ばないとも思える。
 2(1)しかし、地方議員の自律権は権力分立を根拠にしたものではない。また、地方議員は,憲法上の住民自治の原則を具現化するため,議会が行う上記の各事項等について,議事に参与し,議決に加わるなどして,住民の代表としてその意思を当該普通地方公共団体の意思決定に反映させるべく活動する責務を負うものである。
  (2)また、 出席停止の懲罰は,上記の責務を負う公選の議員に対し,議会がその権能において科する処分であり,これが科されると,当該議員はその期間,会議及び委員会への出席が停止され,議事に参与して議決に加わるなどの議員としての中核的な活動をすることができず,住民の負託を受けた議員としての責務を十分に果たすこ とができなくなる。
  (3)このような出席停止の懲罰の性質や議員活動に対する制約の程度に照らすと,これが議員の権利行使の一時的制限にすぎないものとして,その適 否が専ら議会の自主的,自律的な解決に委ねられるべきであるということはできない。
  (4)したがって,普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否は,司法審査が及ぶと考えられる。 
第3 以上から上記発言を理由とした国会議員に対する出席停止の決議についてはその効力を訴訟で争うことができないのに対し、地方議員に対する出席停止の決議についてはその効力を争うことができる。                  以上