Ⅰ 問1について

 (1)Yの「千葉県に在住しているのでYとの関係では、後訴についての管轄は京都地方裁判所にない」との主張部分について

  まず、原則としては4条により被告の所在する裁判所たる千葉裁判所に管轄がある。しかし、甲建物は京都にある以上、民事訴訟法5条において「不動産に関する訴え」として京都地方裁判所に管轄があるのではないか問題になるが、XのYに対する後訴は金銭の返還を求める訴えなので不動産に関する訴えには当たらない。

 するとYの主張は認められるのが原則である。

 しかし、建物甲にZが住んでおりZの利害関係も考えるべきである。

Zとの関係では明け渡し訴訟であり、不動産に関する訴えにあたる。そしてYとZは建物所有権について重大な利害関係がある以上同一視できる。

したがって、Yに対する訴えも不動産に関する訴えにあたると考えるべきでアリ、京都裁判所に管轄があるのでYの主張は認められない。

 (2) Yに対する請求の訴額は140万円に満たないので、この請求を管轄するのは簡易裁判所であるという主張部分について

  原則としては、XのYに対する請求は36万円である以上、140万円を超えない場合として(民事訴訟法8条の2)、簡易裁判所が管轄権を有する(裁判所法33条1号)。もっとも、不動産に関する訴えにあたる場合には裁判所法24条により地方裁判所が管轄権を有するとすべきである。

 そして上述通り、YとZは建物所有権に重大な利害関係があるので不動産に関する訴えに当たる。

 したがって、裁判所24条により地方裁判所が管轄権を有すると考えるべきであり、Yの反論は認められない。

Ⅱ 問2について

 (1)和解調書に既判力を肯定する見解は、民事訴訟法267条の「確定判決と同一の効力」に文言通りの意味から確定判決の通用力ないし拘束力たる既判力を含むという見解である。

 かかる場合に和解調書を既判力が生じるとするならば①Yが建物甲の所有権がXにあるということを認めた点と②Xが向こう3年間、Yが建物甲に無償で居住することを認めた点に既判力が生じる(114条1項)。そして前訴判決の既判力は後訴に対しては①先決②矛盾③同一関係にある場合に作用する。

 本件前訴は、XのYに対する甲の所有権に基づく明け渡し請求訴訟であるが、後訴はXのYに対する代金返還訴訟であり形式的には先決矛盾同一関係にない。

 しかし、和解調書を前訴と見るならば、和解調書では、Yが建物甲に無償で居住する権利があると認めておきながら後訴では賃料相当額の不当利得に基づく返還を求めており、和解調書と後訴では矛盾関係にある。

 したがって、既判力が作用し、和解調書は後訴は許されないという影響を及ぼす。

 Zに対する関係では、既判力は115条1項の当事者にのみ及ぶのが原則である以上、何ら影響を及ぼさない。

 (2) 和解調書に既判力を否定する見解は、民事訴訟法267条の「確定判決と同一の効力」に既判力を含めないという考え方である。

   この考え方によっても、和解調書が成立すると既判力は生じないものの、執行力が生じる(民事執行法22条1項)。そして執行力が生じると和解調書は債務名義になり、和解当事者は和解にしたがった債務を履行する義務を負う。

 したがって、和解と相反する行為は許されず、後訴は前述通り許されないという影響を及ぼす。

  Zに対する関係では、和解当事者でなく和解の効力は当事者にのみ及ぶのが原則である以上、何ら影響を及ぼさない。                                                   以上

 

問1は素直にYの主張が認められるとした方がよかったのかな。変にこって論理が混乱している。既判力については時間不足になって滅茶苦茶です。