16-1. 実務において
ここまで、記名押印と印鑑証明の条文を確認してきたが、実務で関連する条文について考えたいと思う。
実務では、以下のパターンとなる。
①司法書士が申請書を作成
②お客様から委任状(+印鑑証明書)をもらう
①の司法書士が作成する申請書については、以下の条文が該当。
■申請書への記名押印(令16条・規47条)
■申請書への印鑑証明(令16条・規48条)
しかし、司法書士自身は記名押印を容易に出来るし、
不登令16条2項により、委任による代理人は申請書に印鑑証明書を添付する必要がない。
よって、これらの条文については、参考程度でよいと考える。
しかし、②の委任状に関して、規47条3号および規48条1項4号・5号が引用されるので、その部分については、きっちり押さえておく必要がある。
②のお客様からの委任状(+印鑑証明)については、以下の条文が該当。
■委任状への記名押印(令18条・規49条1項)
■委任状への印鑑証明(令18条・規49条2項)
これらは現場で必要となる場合があるので、完全に理解して、頭に入れておきたい。
16-2. 実務で必要となる条文のまとめ
■委任状へのお客様の記名押印
(原則)記名押印が必要(令18条)
(例外)法務省令で定める場合は不要。(規49条1項)
①署名+公証人等の認証(1号)
②署名+不動産登記規則47条第3号イ・ロ・ハ・二・ホのいずれにも該当しない。(2号)
イ-1 所有権の登記名義人が登記義務者となる
(抵当権の債務者変更登記を除く)
イ-2 所有権の登記名義人が共有物分割禁止の定めの変更
イ-3 所有権の登記名義人が所有権保存登記の抹消
イ-4 所有権の登記名義人が信託による権利の変更
イ-5 所有権の登記名義人が単独で仮登記の抹消
イ-6 合筆・合体の登記
ロ 所有権の登記名義人が登記識別情報を提供することなく抵当権の債務者変更
ハ 所有権以外の登記名義人が、登記識別情報を提供することなく、登記義務者となる
二 所有権以外の登記名義人が、信託による権利の変更
ホ 登記申請により登記識別情報の通知を受ける登記権利者
③復代理の場合で、代理人が復代理委任状に署名(3号)
■委任状への印鑑証明添付
(原則)記名押印した者の印鑑証明書の添付が必要。
(例外)以下の場合は不要。
・委任による代理人(令18条2項)
・官公書が登記義務者となる(令18条4項)
・法務省令で定める場合(規49条2項)
①申請登記所と印鑑証明書発行登記所が同一で、法務大臣が指定した登記所以外のもの(1号)
②記名押印+公証人等の認証(2号)
③裁判所書記官が作成した印鑑証明書を添付(3号)
④不動産登記規則48条1項4号及び5号に掲げる場合(4号)
④-1 4号 申請人が規則47条3号ホに該当する場合。
=ホ 登記申請により登記識別情報の通知を受ける登記権利者
④-2 5号 申請人が規則47条3号イ・ロ・ハ・二に該当しない場合。
=イ-1 所有権の登記名義人が登記義務者となる
(抵当権の債務者変更登記を除く)
イ-2 所有権の登記名義人が共有物分割禁止の定めの変更
イ-3 所有権の登記名義人が所有権保存登記の抹消
イ-4 所有権の登記名義人が信託による権利の変更
イ-5 所有権の登記名義人が単独で仮登記の抹消
イ-6 合筆・合体の登記
=ロ 所有権の登記名義人が登記識別情報を提供することなく抵当権の債務者変更
=ハ 所有権以外の登記名義人が、登記識別情報を提供することなく、登記義務者となる
=二 所有権以外の登記名義人が、信託による権利の変更
⑤復代理における復代理委任状(5号)
16-3. 注意点
規則47条3号ホ
(=登記申請により登記識別情報の通知を受ける登記権利者)につき、
委任状への記名押印では、ホに該当しない→記名押印が不要
委任状への記名押印では、ホに該当する→印鑑証明添付が不要
16―4. 実務場面の例
■抵当権抹消の委任状で、お客様から署名をもらったが、捺印を忘れてしまった!
→規則49条1項2号により47条3号イ・ロ・ハ・二・ホのいずれにも該当せず、署名はあるので、記名押印は不要。
→規則49条2項4号により、47条3号ホに該当するわけでもなく、47条3号イ・ロ・ハ・二のいずれにも該当しないので、印鑑証明書の添付も不要。