会計監査人設置会社の注意点~毎年登記が必要です~ | 士業・法務担当者のためのマニアックな登記・会社法・債権法改正情報~司法書士・行政書士大越一毅~

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「士業・法務担当者のための会社法入門」



第25回である今回は、前回の告知通り

「会計監査人設置会社の注意点~毎年登記が必要です~」です。


会計監査人。。そもそもなんのこっちゃ?という人も少なくないでしょう。

細かい部分は後述の解説にゆだねますが、

要は、外部の監査法人・公認会計士に会社の会計書類をチェックして

もらいましょう!という制度です。


上場会社であれば、設置は必須です。

会社法の機関としては、会社法が施行されてからできた制度

ですが、証券取引法(現:金融商品取引法)上の監査というのは、

上場会社であれば、従来から必要で、実施されていました。

会社法では、上場会社以外の会社も任意に

会計監査人を設置することにより、対外的な信用力を上げるのに

活用しようということで、定款での設置が可能になりました。

その場合には、その旨登記をします。

とはいえ、監査報酬が高額なので、設置が義務

つけられている大会社であれば、ともかく、それ以外の会社

が会計監査人を設置しているケースはほとんどないでしょう。

この会計監査人、登記実務でも毎年登記がいるなど、

結構面倒です。

もし、置かれる際には、今後の登記管理方法が変わって

きますので、必ず事前に司法書士に相談されることを

おススメします!



1.会計監査人とは

会計監査人は、株式会社の計算書類及びその付属明細書等を監査する機関であり、

会計監査報告を作成します(会社法第396条、会社法施行規則第110条)。

会計監査人が監査し、問題がないと判断された計算書類については、

定時株主総会で承認を得る必要がなく、報告をすれば足ります(会社法第439条)。

会社法の施行により、会計監査人を設置した場合には、

会計監査人設置会社である旨及び当該会計監査人の名称を登記

する必要があります(会社法第911条第3項第19号)。

この点、旧株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律下では、

登記する必要がありませんでした。

また、会社法上の大会社(最終事業年度に係る貸借対照表上の資本金額5億円以上

又は負債額200億円以上の会社)又は委員会設置会社は、


会計監査人を置かなくてはなりません(会社法第327条第5項、同法328条)。

他方で、大会社以外の会社であっても、定款に会計監査人設置会社である旨を定めれば、

任意で会計監査人を置くことが可能です。


会計監査人を置くメリットは、計算書類の正確性を確保し、

かつ金融機関等外部に対する信用性をアピールできることです。

具体的に上場準備を計画しているベンチャー企業などでは、

早い段階から上場準備の推進を目的として計算書類の適正さを確保する

必要もあるでしょうから、会計監査人設置を検討して宜しいかと考えます。

但し、会計監査人監査法人又は公認会計士である必要があります

(会社法第337条第1項)。
したがって、会計監査人設置に伴うコスト(報酬等)を鑑みて、

設置するかどうかを検討する必要がありますので、ご注意ください。



2.会計監査人設置の手続

大会社になった場合等会計監査人の設置が強制される場合も含めて、

会計監査人を設置する場合の一般的な手続は以下の通りです。

  1. 会計監査人設置の定款変更及び会計監査人選任の旨の株主総会決議
  2. 監査契約の締結(会計監査人の就任承諾)
  3. 登記申請



3.会計監査人の再任手続

会計監査人の任期は、選任後1年内に終了する事業年度のうち

最終のものに関する定時株主総会が終結する時までです(会社法第338条第1項)。


つまり、定時株主総会毎に任期が満了し、再任手続が必要になります。

但し、別の監査法人を会計監査人に選任する等

現在の会計監査人を再任しない場合を除き、

定時株主総会終結時点で現在の会計監査人の再任決議

がされたものとみなされます(以下「みなし決議」といいます。会社法第338条第2項)。


したがって、再任の場合には、定時株主総会で再任決議をする必要がありません。
しかし、再任の場合であっても、当該会計監査人再任登記は必要です。
そのため、毎年定時株主総会後に、会計監査人の再任登記が必要

になりますので、ご注意ください。


また、会計監査人との監査契約についても、

みなし決議の場合に契約を同一内容で更新(又は延長)する旨

の定めを当該監査契約書に記載していない限りは、

毎年契約を締結する必要があります。


4.有限責任監査法人制度の新設

公認会計士法等の一部が改正され(平成20年4月1日施行)、

有限責任形態の監査法人制度が創設されました。
これに伴い、既存の監査法人が有限責任制度を採用する場合、

その名称中に「有限責任」を記載しなくてはならず、名称変更する必要があります。

そのため、自社の会計監査人が有限責任制度を採用して名称変更した場合、

会計監査人の名称の変更登記をする必要があります。
変更登記については、当該会計監査人から申請することはできず、

会計監査人を設置している各会社で法務局に申請しなくてはなりませんので、ご注意ください。

ちなみに、本日現在、有限責任制度を採用している会計監査人は、17法人です。今後も有限責任制度を採用する監査法人は多くなるかと思います。


5.まとめ


上場してから何期も経過している会社の場合には、

上記会計監査人の再任手続についても、法務担当者が充分把握

していることかと思います。

一方で、会計監査人を設置してから間もない会社の場合には、

定時株主総会開催や決算の準備も慣れていないことが多く、

そちらに気をとられたがために、会計監査人の再任手続を失念してしまう

可能性も低くありません。

したがって、定時株主総会前には、念のため司法書士等専門家

に相談されることをお勧めします。


次回は、「決算公告の方法~電子公告のメリット・デメリット~」を予定しています。