取締役会開催の基本~決議事項に利害が対立する取締役の取締役会での対応~ | 士業・法務担当者のためのマニアックな登記・会社法・債権法改正情報~司法書士・行政書士大越一毅~

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士業・法務担当者のための登記パートナー 司法書士・行政書士の大越です。



「士業・法務担当者のための会社法入門」


第23回である今回は、前回の告知通り


「取締役会開催の基本~決議事項に利害が対立する取締役の取締役会での対応~」


です。


取締役会で忘れがちなのが、議案について利害関係のある

取締役は、議決権が無いこと。


例えば、社長所有の不動産を会社名義とする売買契約

について、取締役会で承認を得る場合には、社長は議決権

がありません。


したがって、社長以外の取締役の過半数の承認が必要です。

内部取引が多い、中小企業こそ忘れがちになるので、

注意しましょう。


実際、どのようなケースが利害関係があると判断されるかに

ついては、判例・解釈等でも争いがありますから、

司法書士である私に是非ご相談ください!(^^)!




1.取締役会の権限


株式会社(以下「会社」といいます。)は、会社法の施行により、
取締役会を設置しないことを選択できるようになりました(詳細については、会社法入門第5回をご参照ください。)。


しかし、会社法施行前は取締役会の設置が義務であった

こともあり、ほとんどの会社が取締役会を設置している

と思います。


取締役会は、

(1)会社の業務執行の決定

(2)取締役の職務執行の監督

(3)代表取締役の選定及び解職がその職務とされています(会社法362条)。


株主総会の開催には時間を要し(詳細については、会社法入門第21回をご参照ください。)、

又株主は会社の細かい事業内容までは通常把握していません

ので、スピーディーかつ合理的な業務執行が可能になるよう、

上記の権限を取締役会に与えています。

なお、日々の個別取引・業務運営に際し、逐一取締役会の承認

を得ることを不要とするため、ある程度の裁量を各取締役に与え、事後報告で済ませることも可能です。

但し、重要な財産の処分・多額の借財・利益相反取引に該当する場合などは、常に取締役会の承認が必要です(会社法356条、362条、365条)。


何が「重要」で「多額」かどうかについては、実務上、会社の事業規模に合わせ、取締役会規則である程度の客観的基準を設けておくのが一般的です。


その他、譲渡制限株式の譲渡承認・株式分割等会社法で取締役会の決議が必要と定める事項については、取締役会の承認が必要ですので、ご注意ください。


2.取締役会の招集・決議


取締役会を招集するには、取締役会日の1週間前までに

各取締役(業務監査権のある監査役設置会社の場合には、監査役にも)に対して

招集通知を発する必要があります(会社法368条)。


但し、定款で招集期限を短縮することができ、通常は3日前としている会社が多いです。


監査役は、議決権はありませんが、当該決議事項につき取締役会で意見を述べる義務がある(会社法383条)ため、

監査役設置会社が監査役に招集通知を送付しなかった場合には、招集手続違反となります。


招集手続違反がある取締役会は、原則として無効なので、ご注意ください。

他方で、取締役会の決議は、議決権のある取締役の過半数が

出席し、かつ当該出席取締役の過半数の賛成で可決します(会社法369条1項)。

仮に、監査役が決議事項に反対意見を述べたとしても、取締役の過半数の賛成によって、決議自体は有効に成立します。



3.特別利害関係のある取締役がいる場合

特定の取締役と会社との間の契約を承認する場合等、

決議事項につき特定の取締役と会社の利害が対立する

ことがあります。


上記のように特別利害関係のある取締役は、当該決議に参加することができません(会社法369条2項)。

したがって、特別利害関係取締役は、定足数・決議要件の数に算入しません


利害が対立する取締役を決議に参加させても、賛成して当たり前なので、取締役の職務執行を監督する取締役会の意味が薄れるからです。


また、同様の趣旨から、特別利害関係取締役はにもなれません。


通常、議長は社長とする旨定款に定めてあるのが一般的ですので、

社長が特別利害関係取締役に該当する場合には、

別の取締役を議長に選定する必要があります。

(予め別の議長を定めている場合には、その者が就任し、特段定めていない場合には同取締役会で議長の選定を行えば足ります。)

但し、特別利害関係取締役に対しても招集通知の発送は必要ですので、ご注意ください。



4.まとめ


上記の通り、取締役会決議を行う場合、特別利害関係取締役に該当する者がいないかどうかを事前に検討する必要があります。


特別利害関係に該当するかどうかについては、株式の譲渡承認につき譲受人又は譲渡人が

取締役である場合等、判例と学説の見解に差異があるケースもありますので、

事前に司法書士等専門家にご相談されることをお勧めします。



次回は、「役員の新制度~会計参与設置のメリット~」を予定しています。