特例有限会社を通常の株式会社に変更する方法 | 士業・法務担当者のためのマニアックな登記・会社法・債権法改正情報~司法書士・行政書士大越一毅~

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「士業・法務担当者のための会社法入門」



第8回である今回は、前回の告知通り、「特例有限会社を通常の株式会社に変更する方法」です。


前回、株式会社化する有限会社は減っているという話をしましたが、有限会社が新規設立できないために、希少価値を感じている人もそうでしょうし、そもそも有限会社の絶対数が減っていることもあるでしょう。

とはいえ、VCなどの外部の投資家から出資を募ったり、上場を目指すのであれば株式会社化は必須です。


また、株式会社の場合は、取締役が一人だけであっても、登記簿上「代表取締役」と表記されます!これは意外と知られていない話で、有限会社の社長と名刺交換をすると、「代表取締役」と書いてあるのに、登記簿を見ると取締役が1人しかいないので、登記簿には「取締役」としか登記されていません。

これは結構違和感ありますよね。なので、そんな違和感を解消するには、株式会社化するか、役員を増やすしか方法がないので、もし、気になる人は私にご相談ください(‐^▽^‐)



1. 株式会社に変更する方法

前回のコラムで触れました通り、特例有限会社のままで事業を継続することは可能ですが、株式会社に変更することも可能です。

その方法は、株主総会(旧:社員総会)で株式会社に商号変更する旨決議し、登記申請するだけです。

原則として、役員を再任したり、資本金の額を増加する必要はありません。一般的な手続の流れは次のとおりです。
  1. 株式会社用定款の作成 *1
  2. 株式会社への商号変更及び新定款承認のための株主総会決議 *2
  3. 法務局に株式会社設立及び有限会社解散登記申請 *3 *4
  4. 法務局に株式会社代表印の届出 *3

*1 通常の株式会社設立と異なり、公証役場での認証は不要です。
*2 外部株主が多い特例有限会社の場合には、招集手続も必要です。
*3 3と4は同時に申請可能です。
*4 実体は単なる商号変更ですが、登記申請は設立登記と解散登記が必要です。



2. 株式会社に変更する際に併せて行えること

株式会社に変更する際に、まとめて他の事項も変更したいという希望は多いでしょう。

原則として、商号や目的など御社の自由にまとめて変更できますが、一定の制限もありますので、ご注意ください。

それは次のとおりです。

  1. 増資

    資本金の額を増加する必要がないとはいえ、折角株式会社にするのだから、資本金の額を1000万円以上にしたいという経営者の方も多いと思います。
    募集株式発行(旧:新株発行)の効力発生日である払込期日が、設立登記の申請日(株主総会日ではない。)と一緒の場合に限って、同時に行うことが可能です。
    その場合には、募集株式発行所定の添付書類が必要です。

  2. 本店移転・支店設置・支店廃止

    これらについては、まとめて登記申請することが一切できません。
    したがって、株式会社に変更する際に、本店所在地の変更を考えている場合には、株式会社変更後に登記申請するか、変更前に別途登記申請するしかありません。

なお、これらの取扱いについては、今後変更することも予想されるので、ご注意ください。



3. 役員(取締役)を選任する必要があるか

上記1. でご説明しました通り、原則として既存の役員構成で株式会社になる場合には、再任する必要はありません。 しかし、特例有限会社での役員就任期間が、株式会社変更時に、株式会社の任期期間以上だった場合には、当該役員は株式会社変更と同時に任期が満了します。
したがって、その場合には、商号変更の株主総会と併せて、役員再任の決議もする必要があります。
具体例を挙げると、特例有限会社の取締役として10年間業務を行ってきた人が、株式会社の取締役にもなる場合、株式会社の取締役の任期を5年としたときには、株主総会で再任する必要があります。


4. 株式会社に変更した場合、決算申告は?

事業年度の途中で、特例有限会社から株式会社に変更する場合、上記1のとおり登記簿上は、特例有限会社を解散し、新たに株式会社を設立することになります。
しかし、事業年度は継続したものとして取り扱われるので、決算を分ける必要はありません。
したがって、決算申告も、解散時にする必要はなく、本来の申告時に申請すれば足ります。


5. まとめ

会社として大きく発展していく、又は会社法を活用したいという場合には、株式会社になることをお勧めします。

手続的には簡単そうに見えますが、株式会社用定款の作成等、検討事項は多いので、株式会社に変更する場合は、司法書士に依頼するか、ご自分でやられる場合にも一度は司法書士にご相談することをお勧めします。

必要であればお気軽に私にご相談ください。

次回は、「株式会社とLLC(合同会社)の比較・活用法」を予定しています。