株式会社設立に要する具体的費用 電子定款のメリット | 士業・法務担当者のためのマニアックな登記・会社法・債権法改正情報~司法書士・行政書士大越一毅~

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「士業・法務担当者のための会社法入門」


第二回である今回は、「株式会社設立に要する具体的費用~電子定款のメリット~」です。


今は多くの司法書士・行政書士が電子定款のシステムを導入していますから、印紙税が4万円安くなるとはいっても、それが常識化しており、これから会社を設立する方にとっては、あまりメリットと感じてもらえないかもしれませんね。


最近では、行政書士さんがコンサル顧問や許認可パック、税理士さんが税務顧問を条件に、設立手続の報酬を極端に安く、もしくは0円で受任されている先生も少なくないでしょう。


そのような中、登記が専門である司法書士としては、設立報酬を0円にするわけにはいきません。

では、どこで、他の士業と差をつけるか。。


やはり、司法書士は、商業登記と会社法の専門・プロであるということでしょう!

単なる設立手続だけであれば対応できても、設立時の定款や役員・出資者構成に潜むリスク、また設立後の会社法にまつわる相談などに自信をもって対応できる他の士業は多くないのではないでしょうか。


私は、司法書士として、↑の点を自負していますので、設立報酬が高いと思っても、怒らないでくださいね(笑)

他の士業の方にとっても、許認可や税務顧問とパックで受任するとしても、登記や会社法務に関する相談などは、無理にご自身で手掛けなくとも、専門の司法書士と提携する(たとえば、クライアントには税務顧問とパックで報酬を提案、その一部を税理士から司法書士に支払ってもらうなどすれば、クライアントの負担は変わりません。)方が、ご自身の負担が減るので、本業部分に注力できる時間が増え、結局はプラスなんじゃないでしょうか。→と、提携を期待してみる(-^□^-)




1. 株式会社設立に要する具体的費用

前回のコラムでも触れましたように、1000万円分の財産を設立時に用意する必要がなくなったとはいえ、

1円玉1枚だけでは、株式会社を設立することはできません。
では、具体的に、どれくらいかかるのでしょうか。
下記のとおり表にしてみました。参考までに、会社法施行前の株式会社(以下「旧株式会社」という。)の場合と、

会社法であたらしく認められた合同会社(「LLC」と呼ばれるものです。)の場合も掲載しましたので、

比較してみてください。


会社の種類 株式会社 旧株式会社 合同会社(LLC)
最低資本金額 好きな額
1円でも可)
1000万円又はそれに相当する財産 好きな額
(1円でも可)
定款認証代 5万円 5万円 0円(*9)
定款の印紙税 4万円 4万円 4万円
定款謄本交付代金
(1枚につき250円)
約1500円 約1500円 0円(*9)
払込金の銀行事務取扱委託手数料 0円(*1) 2万円(*7) 0円
登録免許税 15万円(*2) 15万円(*2) 6万円(*10)
印鑑証明書取得代
(1通につき500円)
2500円(*3) 2500円(*3) 2500円(*3)
登記事項証明書代
(1通につき1000円)
7000円(*3) 7000円(*3) 7000円(*3)
司法書士報酬 8万円~15万円(*4) 10万円~15万円(*4) 6万円~12万円(*4)
その他諸経費 7万円(*5) 7万円(*5) 7万円(*5)
合 計 44万1001円(*6) 1046万1000円(*8) 29万9501円(*6)


*1 発起人(複数でも可)が設立時の全ての株式を引き受ける発起設立の場合に限ります。
*2 資本金の額×0.7%です。計算した額が15万円に満たない場合は、15万円です。
*3 会社設立後、銀行や役所等に提出します。一般的に必要になる通数分です。
*4 司法書士報酬は、自由化されていますので、各司法書士によって異なります。
*5 会社代表印、銀行印、ゴム印代などです。
*6 資本金の額を1円、司法書士報酬を12万円としています。
*7 資本金の額×0.25%です。銀行によって手数料額は異なりました。
*8 資本金の額を1000万円、司法書士報酬を12万円としています。
*9 定款の認証が不要だからです。
*10 資本金の額×0.7%です。計算した額が6万円に満たない場合は6万円です。



一見すると、合同会社の設立費用が格段に安いですが、いろいろな制約があることや会社の信用度からいって、株式会社を設立される方が、まだまだ多いでしょう(合同会社の詳細は、別の回でご説明します。)。

旧株式会社との大きな違いは、資本金の額の他に、銀行事務取扱委託手数料(以下「銀行手数料」という。)が不要になったことです。



2. なぜ、銀行手数料が不要に?

旧株式会社の場合は、常に銀行手数料が必要でした。出資金を銀行に別段預金で保管してもらう必要があり、その保管証明書代として銀行手数料がかかるためです。
会社法下では、発起設立の場合には、発起人の普通預金口座に出資金を振り込むだけで、払込が完了します。
したがって、銀行に事務を委託する必要はなく、保管証明書も不要なため、銀行手数料がかからないのです。
これにより、費用が安くなるだけでなく、設立手続が今までよりも簡便かつ迅速に行えるようになりました。


3. 電子定款のメリット

旧株式会社の場合も共通ですが、定款は、Word等で作成したものを、PDF化し、それをフロッピーに入れ、公証役場に提出することにより、データに公証人の認証をもらうことができます。これを電子定款といいます。
電子定款は、データであり紙ではないので、上記表のうち、「定款の印紙税」4万円が不要になります(今後は不明ですが、現在の印紙税法の取扱ではそういう判断です。)。
これは、データで持参するだけで、費用が安くなるため、積極的に活用すべきです。
但し、電子定款を利用するには、大きな問題があります。
それは、電子定款を作成するための設備費用が、印紙税の4万円よりも高いということです。
電子証明書・電子署名するため専用ソフト等、少なくとも7~8万円は必要です。
なおかつ、パソコンに慣れない方にとっては、自分でやろうとすると多大な労力となるでしょう。

しかし、電子定款作成に対応している私に依頼すれば、ご自分でこれらのソフト等を一切購入することなく、電子定款で定款を作成することが可能ですので、ご安心ください。


4. まとめ

会社を設立するにあたり、無駄な費用をかける必要は確かにありません。
しかし、株式会社を設立する方は、会社を今後は大きくし、果ては株式上場を目指すという「希望」をお持ちの方がほとんどでしょう。
その入り口の段階を、自分でやってみるというのも、もちろんいいです。
ですが、登記に限らず、細かい手続面などは、多少の報酬を払っても専門家に任せ、社長本人は会社を大きくしていくために営業やビジネスプランを構築するなど、本業に専念することが、将来的には会社の利益になるのではと私は考えます。

次回は、「会社の根本規則「定款」の定め方」を予定しています。