Chapter 06 この時代だからこそ、めげない力
バラエティー界のお見舞い

バラエティーの現場で働く人間は、お見舞いに行く時にすら、「何か人と違っ
たことを」とアピールしたくなってしまう。

以前、デッカチャンという若手芸人が事故で大けがを負ってしまい、長期入院となった。このデッカチャン、苦節10年以上。ようやく、ちょっとテレビの仕事も舞い込んできたところでの大けが。手術費や入院費がかかるし、もともと給料が安い大貧乏芸人なので、今後の生活はかなりのピンチになる。みんなは彼のことを「運がない」と言った。

そんな彼のお見舞いに行くことにしたのだが、「何か持っていかなければ症候群」がうずきだし、僕はドン・キホーテである物を買って持っていった。


それは50万円たまる貯金箱。


「この貯金箱をベッドの横にわかりやすーく置いておけば、みんなが募金してくれるかもよ。愛はデッカチャンを救う的感じで(笑い)」

と言うと、

「看護師さんに笑われるじゃないですか~」

と苦笑しながらも、彼はそれをベッドの横に置いた。


50万円たまる貯金箱がベッドの横に堂々と置いてある病室は「お金をください!」的で、ちょっと愉快な感じになっていた。

それから1カ月以上が経ち、僕が再びお見舞いに行くと、その病室には大きな変化が起きていた。なんと50万円たまる貯金箱にかなりのお金が入っていたのだ。


僕の後に相当な数の人がお見舞いに来たらしい。ほとんどがデッカチャンと同じで、未だ貧乏生活をしている若手芸人ばかり。でも困った時はお互い様。50万円たまる貯金箱を見て、「なんだ、これ!」と笑いながらも、「仕方ねえな~」と言って、少しずつ募金していってくれたらしいのだ。

その結果、貯金箱は満タンになった。こういうことがあるから僕は芸人さんが大好きだ。


仕事をしている人が入院したら、当然、不安になる。自分なんかいなくても仕事は進んでしまうという現実を体感するから。だから、そんな不安を少しでもやわらげることが大切だと思う。笑わせたり、面白くしたりして……。

ちなみに、デッカチャン、退院後、保険金も結構おりたため、みんなの募金で結果的に収支はプラスになり、お見舞いに行った芸人から、

「金返せ」

と言われているとか。こういうところも好きだ。

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