Chapter 03 ピンチをチャンスに変える
バーターは開き直る
皆さんは、業界でよく使われる「バーター」という言葉をご存じだろうか?
昔、ファミコンのソフトが二つセットになって安売りされていた。Aという人気ソフトの「バーター」で、Bというあまり売れてないソフトがセットにされていた。バーターの語源は、ひょっとして「束」ということかもしれない?束で売る。束→バーター??
A子さんという人気タレントをブッキングするには、同じ事務所でまだブレイクしてないB子ちゃんも一緒に番組で使わないといけない。それが定番のバーター。バーターと聞いただけで、この業界にはネガティブな響きが漂う。
だが思う。このバーター、本当は悪いことではないはず。だって、B子ちゃんに本当に才能があったとしたら、テレビにとって大きな宝となる。大事なのは、バーターで使ってもらう時のお願いの仕方なのでは?と思う。
例えばマネージャーに、
「うちのB子を使わなきゃA子は出せません」
と強気で言われたとしよう。とりあえずB子ちゃんを使うが、おそらくスタッフはB子ちゃんには愛情がわかないだろう。だけど、もしマネージャーが、「僕はB子って子が本当に才能があると思うんですけど、A子と一緒にチャンスをもらえませんか?」
と言ったとしよう。ちょっとB子ちゃんに情がわいたりする。そうなれば、B子ちゃんが本番で活躍すると、2回目はB子ちゃんだけでブッキングされること
もあるはずだ。現に、そうやってブレイクした人が何人もいる。
昔、とあるマネージャーが番組収録後、スタジオの入り口でグラビアアイドルをしかっていた。
「お前、バーターで入れてやったのに、なんで面白いことを一つも言わないんだよ!!」
凄いことを言うマネージャーだ。こいつはバーターです!とみんなの前で宣言してっているのだから。でも、僕はいいことだと思った。バーターで大事なのは、まず自分がバーターだと気づくこと。だからこそ、頑張る。もっと売れたいから。
例えば愛人は、自分が愛人だとわかっているからこそ、頑張る。奥さんよりいい女だと思われたい、奥さんより愛して欲しい、と思うから頑張る(なんかテレサ・テンの歌みたい……)。
自分の状況や立場に気づけない人って、結構いる。それに気づけることも才能なんだけどね。
なんならバーターの人は、腕にバーターだとわかるリストバンドを巻いたほうがいい。バーターバンド。略してBB。「私、バーターです!」と言えたほうが、みんな温かく接してくれる気がする。バーターって、やり方一つでもっとポジティブな存在になれるのではないかと思う。
そういえば、昔セットで買ったゲーム。実はバーターだったBが意外に面白かったんだよな~。