飛び出した一歩が触れたのは、冷蔵庫の奥で忘れ去られたアイスノンみたいに冷たいアスファルトだった。せめて雪が降っていれば様になったのにと思いながら彼女は頬を拭った。雑誌で一目惚れした勢いで買った黒いコートは、丈が長過ぎてかわいらしさの欠片もない。

誰も追ってこないことなんて彼女は最初から知っている。

吐く息は、コーヒーにいれた螺旋のミルクよりも白く、手袋をしていない手はオイルのきれたロボットみたいに不自然に曲がった。このままここに立っていても、状況は変わらない。そう思った彼女は駅に向かって歩き始めた。悲しいことなどなにもない。そういい聞かせながら彼女は軽くスキップをした。泣き顔にスキップなんて、涙を頬に描いたピエロと同じじゃないかと思いながら、彼女は泣いた。

頭の中には脳みそのかわりにテディベアから抜き出した綿が入っているんじゃなかろうかと思わせるような女の子。舌足らずに話し、小さな段差に躓き、すべてのものにむかって「可愛い」と繰り返す。彼女にとって、演じることは苦痛ではなかった。いくつもの自分の仮面のうちの一つだった。演じれば演じる程、それが仮面なのか本当の自分なのかわからなくなっていったけれど、それでも彼女は幸せだった。可愛がってくれる手は大きく、頭を撫でられる度に首を傾けた。

けれど同じ役者ばかりでは、聴衆も飽きるらしい。いくら彼女が上手く演じてみても、可愛がってくれた人は離れていった。手首は痛んで、彼女は少し笑った。最後の夜には、感動も情熱もない。あったのは、バイバイではなくてさようならと言い残してきた彼女の言葉。

片手に持ったヒールを揺らして、彼女はスキップを続ける。ヘンゼルとグレーテルみたいにパンくずを道にまく必要もない。彼女がこの街に帰ってくることはもうないから。

みなさんご機嫌いかがでしょうか。私は、もうお空を飛んじゃうわ!って程機嫌がいいわけでもなく、井戸の底で一生を過ごしたいです…って程機嫌が悪くもありません。井戸って、こわいよね吸い込まれそうで。


このブログでは、ちっこいそれはもうリスの頭くらいの脳みその管理人が、息も切れぎれに恋愛小説を書いています。誰も読んでないけど!管理人の!自己満足!と、寂しさをノリでまぎらわして!みる!…後に残るのはとてつもない情けなさでございますが、皆さんの貴重なお時間を少しでもこのブログを読むことに費やしてもらえるのならば、私は床に頭をこすりつけて額から出血するほどに感謝する次第です。


あんな恋愛や、こんな恋愛をしている女の子がきっと今このときもいるんじゃないか、いて欲しい、ていうか居ろよ的なノリで書いております。やはり、恋愛している女の子のパワーはすごいです。電車は持ち上げられないけど、もうそれは他人がびっくりするようなことをやらかしちゃったりしますものね、げふげふ。



報われたい!(なんとなく締めに使ってみたけど、意味わかんない!)

結局電話をきった後、カオルは眠りにつくことができなかった。今までとは違った。今までなら明日一緒に過ごす相手が見つかったことに安心を覚えて眠ることができたのに、イツキと会うと考えると興奮して眠れなかった。明日は、授業はない。


日が昇り、カオルの部屋のピンク色のカーテンから柔らかい光が差し込んできた頃、カオルは眠ることを諦め、暖かいハーブティーをいれた。心地よい香りがだるさを和らげる。今日のイツキとの約束は夜8時。イツキの仕事が終わった後に会う約束だった。


イツキの友だち募集のメッセージを見つけたのは2か月の前のことだ。

「美容師をしているイツキです。25歳です。俳優の●●に似ていると言われます。まずはメールから仲良くなりましょう。」

美容師と、俳優の●●似というところにカオルは惹かれてメールをだした。

「大学生のカオルです。お友だちになってください。」

それから毎晩のようにメールや電話をするようになった。なぜイツキだけ、すぐに会おうと思わなかったのかは、カオル自身もわからない。ただ、イツキと電話をしているだけで、凍っていた心がゆっくりと溶けていくような気分になった。


メイクは念入りに。ネイルも塗りなおして、洋服はもちろん一番のお気に入りを。普段履いているものよりさらに3センチ高いヒールを履いてドアを開ける。少し冷たい風が、カオルの頬をゆるりと撫でてぼおとした頭をすっきりさせた。

寂しい時間を埋めても埋めても、すぐにまた孤独という穴がぽかりと空く。タカと地下鉄の駅で別れ、カオルは電車に乗った。お腹はいっぱい。けれど、心はまだ寒い。


カオルが自宅に着いたのは夜の11時だった。タカと会う前にメールをした相手からは返事がない。返事がすぐこないだけで、カオルは落ち着かなかった。顔も知らない相手。けれど、心で繋がっていると思っている相手。そんな薄っぺらい関係に頼るなんておかしいと誰かに言われれば、わかっていると答えるだろう。けれど、学校の知り合いよりもこの携帯で繋がっている相手の方がカオルには身近に感じられるのだった。


夜は更けてカオルは、ベビーピンクのシーツに寝転んだ。右手には携帯電話。眠りにつく前の時間が一番嫌いだった。うとうとしかけた頃に着信音が部屋に響いた。ディスプレイには「イツキ」の表示。返事を待っていた相手だ。わくわくしながらカオルは電話にでる。


「もしもし。」

「あ、カオル?ごめん寝てた?」

「ちょっと眠りかけてたところ。」

眠たげな声を意識して作る。


いつものように、お互いの日常を話す。しかし、今回はいつもと違う言葉がイツキの口からでた。


「カオル、明日会わない?」


カオルは、考えた。今の二人の関係が心地よかったからだ。カオルとイツキはこの様にメールや電話をするだけの関係を2か月続けてきた。実際に会うと、今の関係が変わってしまうかもしれない。しかし答えは決まっていた。


「いいよ。ちょっと緊張しちゃうかもだけどね。」




「カオルちゃん?」


顔上げると、黒い服を着た男の人が立っていた。とてもハンサムなわけでもなく、とてもブサイクなわけでもない普通の容姿をしたその男の人にカオルは、めいっぱいの笑顔を返した。

「うん、タカさんですよね?どこ行きます?」

二人は、すぐに並んで歩き始めた。傍から見れば、初めて顔をあわせた二人には見えないだろう。当たり障りのない話を繰り返す。お互いの深いところは、聞かない。


二人がたどり着いたのは、隠れ家的な創作料理店だ。周りは若いカップルばかり。私達の様な関係の人たちもこの中にいるんだろうかとカオルは考えたが、そんなことを知ったところで何にもならないとすぐに考えるのをやめた。目の前に広がるめいっぱいオシャレな雰囲気をだそうと頑張る料理達。おいしいものが食べたいから、お腹がすいてるからカオルはここにいるのではない。


当たり障りのない話は続く。オーダーした料理をすべて食べ終わり、アルコールがいい具合に二人の体にまわった頃にタカは言った。

「カオルちゃんは、すごい僕のタイプだよ。また遊ぼうね。」

カオルは、笑顔で答える。

「あはは。ありがとう。そうだね、またご飯一緒にしようね。」

カオルは、友人を増やすために出会い系をしているのではない。ただ空いた時間を埋めるだけ。口ではこうやって返事をしても、きっと次にタカから連絡があっても無視するだろう。面倒くさい関係はいらない。


「店変えて飲みなおす?」

タカは、カオルの顔を見ながら聞いた。

「ううん、今日はなんか疲れたから帰る。」


食事代は、男が払う。出会い系といえば、会ったらホテルというイメージがあるが、カオルが会う男達はそこまで露骨に飢えてはいなかった。案外、すぐホテルに直行なんて少ないのかもしれない。みんな、ただ、隙間を、埋めたいだけ。

約束の場所には、まだ7時ということもあり人がたくさんいた。黒い服を着た男の人はいない。カオルは、早く着きすぎたのかと思い腕時計をチェックした。7時5分。女の子を待たせる男は嫌いだ。15分待って来なかったら帰ろうと思いながら、カオルは携帯電話を開いた。


カオルは、まだ会ったことがない人とメール交換や電話をしていた。その人とは、もちろん出会い系サイトで知り合った。いつもなら、連絡をとってすぐに相手に会うカオルが、唯一会わないでメールや電話を続けている相手だ。メールと電話だけで恋人になったかのような錯覚。カオルは分かっていたつもりだった。それが、とてもとても薄っぺらい関係であることを。

「今日もお仕事遅いのかな?また帰ったら連絡してね♪」

メールは、顔も知らない相手にたった数秒で届く。


メールを送信し終わって、携帯を閉じようとした瞬間声をかけられた。


家についたカオルは、靴を脱ぎ、服を脱ぎ、下着を脱いで裸になった。ゆっくりとシャワールームに入り、熱いシャワーに向かって立つ。洗い流したいのは、汗ではなく学校で過ごした今日の無意味な時間たち。念入りに施された化粧をたっぷりの化粧落としで落とす。彼女は、学校の自分の仮面をはやくとってしまいたかった。全身をお気に入りの香りの石鹸で洗った後のカオルの気分は、もう憂鬱ではなかった。今夜はひとりじゃない。


さっき落としたばかりの化粧をまた最初から始める。うきうきしながらつけた可愛らしいピンクのグロスは、学校には絶対つけていかない。それはオン・オフの切り替えというより、表・裏を行き来している感覚だった。


約束の時間が近づいて、カオルはピンヒールのミュールを履いた。今夜も楽しければいい。いやなことを忘れられればいい。それでいい。





「OKです。明日夜7時に、百貨店のライオン前で会いましょう。僕は黒い服を着ていきます。」


お互い本当の名前など知らない。知る必要がないからだ。ただ誰かと一緒にいたいだけ。

「わかりました。私は、黄色のバッグを持っていきます。」

そう返信して、カオルは眠りについた。時計は午前3時をまわっていた。



楽しくない授業、バカな周りの人間、いつも消えない孤独感。はやく時間が過ぎればいいと、カオルは次の日の授業中ずっと机に顔を伏せたまま過ごした。私の居場所はここにはない。誰かが場所を作ってくれたって、ごめんだ。孤独は沈んで彼女の心の隙間にまで深く根をはった。学校の人間より、まだ出会ったことがない昨夜のメール相手の方が身近なのだ。確かにさびしいけど、可哀想なんて思わないで。カオルは、楽しそうに騒ぐ周りの学生を冷たく一瞥し、家路についた。約束の時間まで、まだ4時間。


今夜もカオルは、携帯を握ったまま眠った。




物欲しげな顔をして夜の街を独りで歩く。誰でもいいから声をかけて欲しくて、わざとミュールをひきずってゆっくりと足を前にだす。目的地はない。


カオルは、一ヶ月前に大学進学の為に一人上京してきたばかり。高校時代は成績優秀で優等生だった彼女は、必ず合格すると教師に言われていた有名大学を受験し、そして失敗した。すべり止めも受けていなかった彼女は、志望校不合格になったときに、まだ募集をしていた三流の大学を受けた。その大学に入って一ヶ月、それまでの友達とは全く違うタイプの周りの生徒たちにカオルはとまどい、そして彼らを軽蔑した。もともと人付き合いが苦手だった彼女は、周りを軽蔑することで、自分自身嫌っている人見知りの性格を肯定し、自尊心を保とうとしていた。当然、そんな彼女には仲の良い友達などできず、うわべだけの知り合いだけが少しずつ増えていった。


独りきりが好きなのよという顔をしているけれど、本当は誰かとつながっていたい。素直に誰にも言えないカオルがたどり着いたのが、携帯電話の出会い系サイトだった。出会い系といえば、変態おやじが女子高生をお金で買おうとする場所であったり、モテない男が必死で恋人を募集している場所であったりなイメージであるが、カオルにとってその場所は唯一の寂しさを紛らわせることができる場所、誰かとつながっていると思える場所であった。


絵文字をせいいっぱい使って、若い子の気をひこうとしているおやじたちのメッセージは飛ばして、20代の人のメッセージを見つけて開く。その中で連絡をとる人のポイントは「おしゃれな職業・年上・エッチっぽくない」である。理由は、普段生活しているだけでは、知り合えない様な職業の人と知り合いになると楽しい・年上ならご飯はおごり・会った時エッチなこと言われたりされたりしたら面倒という単純なもの。今夜カオルがメールを送ったのは、27歳のショップスタッフで誰かご飯でも食べにいきませんかというメッセージの送り主であった。


「サイトでメッセージ見ました。18歳の大学生です。明日都合がよければ会いませんか?」


ただ、誰かと一緒においしいご飯が食べたいだけだった。

今日から小説ブログなるものを始めることにしました。


これから、様々な女の子の様々な恋愛模様を掲載していこうと思っています。

もちろんですが、すべてオリジナルです。


よろしくお願いします。