「次はどこ行こうか……」
「すぐそこだし、洞窟の中行ってみるか」
「……まぁ、そうなるよね」
正直洞窟って暗くてジメジメしててあまり好きじゃないんだけど……そうはいっても、他に行くところなんかないしね。ま、普段は行かないところだしたまにはいいか。そんなことを考えながらてんまと二人で洞窟を探索する。宝探しの魔法を使ってはいるけど、ロクなものがない。
「……ん? 何この骨」
「それ魔王の骨じゃないか?」
「魔王の骨……?」
そんなもの初めて聞いた。そもそも魔王っていったい誰のことなんだろうか。一度も目にしたことないけど……いや、骨があるってことは実体がないのかな?
「幽霊屋敷の前に墓があっただろ、そこに変な魔王がいるんだよ」
「へぇ……知らなかった。でも、なんで骨が落ちてるの?」
「その骨を……何本だったか忘れたけど持ってこいって言われるんだよ。オレはまぁ、やるって言ったけど放置してるな」
……やっぱり幽霊屋敷の近くってロクなことがないんだね。それにしてもその変な魔王とやらはいったいなんで骨を集めてるんだろう。ここは不思議なことが多いって知ってはいたけれど、そんな変な魔王がいるとは思ってなかったな。ていうか、放置してるとか言ってたけど……変とはいえ魔王の頼み事なのに放置しててもいいものなんだろうか。
「ちなみにゆうきも放置してるって言ってたな」
「ゆうきまで!? やっぱりダメだね、バカ二人組は……」
「おい、バカ二人組って誰のことだ!」
「ゆうきとてんまのことに決まってるじゃん」
むしろその二人以外に誰がいるのだろうか。ほしぞら魔法学校屈指のバカだと思ってるんだけど。あの二人に張り合えるバカっていったら……そんなゆうきのことを溺愛しているあさひも大概おバカさんな気がするし、それくらいかな?
「それならお前だってバカだろうが!」
「は!? あたしはあんたたちほどバカじゃないから!」
「宿題の再提出食らう程度にはバカだろ!」
……それを言われるとぐうの音も出ない。いやでも、それだっててんまはあたしの二倍の量で……って、これ五十歩百歩じゃない? まぁどちらにせよあたしたちには今日サボった分の罰が何かしらあるだろう……正直もう学校に行きたくないよ。
「……ねぇ、明日と明後日休みじゃん? 怒られるの延期になったりするのかな?」
「だったらいいけど、どうせ寮でりんねとゆうきに会うし、下手したら休み無いんじゃないか」
「ヒッ! その可能性は考えてなかった……!」
そんなこと言われたら余計に学校も……寮にも行きたくない! そうはいっても、寮に帰らなかったら住む場所がないし……いくらなんでも野宿するのは無理だし。もう諦めて受け入れるしかないよね。いつまでも逃げ続けることはできないし……ずっと逃げてたらもはやここから出ていかないといけなくなっちゃうし。
「ま、今日サボっただけでもかなりの罰があるだろ」
「そうだね……昨日みたいにトイレ掃除だけで済ませてはくれないだろうね」
二人で寮に帰った後のことを考えては落ち込みを繰り返しているうちに、いつの間にか辺りが眩しく輝いており洞窟の出口がもう目の前にあることに気付いた。暗いところから一気に明るいところに出たからか、少し目が痛かった。
「もうお昼かなぁ」
「どうだろうな」
時計を持ってきていないので、正確な時間がまったく分からない。だがあたしのお腹がもうお昼であることを告げているような気がしてならない。とはいえこんなところに食べるものなんかないし、お腹が減ったところでどうすることもできないんだけど。
ってそういえば今こそあれをやるときじゃない!?
「てんま、お腹減ったでしょ? これ食べていいよ」
「いやお前が食え。それさっきのオオワライタケじゃねぇか」
あたしが渡したキノコを見た瞬間に即答された。いくらお腹が減っているとはいえ食べてくれないのか……今ならいけると思ったんだけど。いやでもたった一回で諦めるあたしじゃないんだから!
「違うよ! これは新種のワラエナイタケって言うんだから!」
「勝手に変なキノコを作るな! 自分で食えばいいだろ!」
あたしとてんまはお互いにキノコを押し付け合い続け、あたしがてんまの口の直接投げ込もうとした瞬間それを振り払われてオオワライタケは宙に舞ってしまった。それを目線で追い続けていたあたしは自然と上を向いていたら、自分の方に落ちてきた。よけなきゃ、と思う前にキレイにオオワライタケがあたしの口の中に入り、それを反射的に飲み込んでしまった。
毒キノコというと、そのまま倒れたりしてしまうイメージだったけどそんなことはなく、身体に異常は見られない。いや、もしかしたらてんまからは違って見えているのだろうか? てんまに聞いてみようと目線を下におろすとあたしの目の前にはなぜかてんまではなくあたしがいたのだ。こんなところに鏡なんかあるはずがないのに。
「なっ、なんであたしがいるの!?」
『――――ねえ、本当は気付いてるよね?』
「えっ……!?」
目の前にいるあたしは勝手に喋りだす。それも淡々と。それにしても気付いてるよね……って、いったいなんのことなんだろう。正直言ってることがまったく分からない。こいつは何が言いたいのだろう。
『気付かないフリなんてやめなよ。本当はてんまのこと――――』
「え、てんまが何? ちょっと!」
あたしが聞こうとしたら、目の前にいるあたしが突然光出し、目の前が真っ白になる。いったいこれはどういうことなんだろうか。すべてオオワライタケのせい? 何一つわからないまま、あたしはそこで意識を失ってしまった。