本編14 | ほしぞら関連専用☆

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――――時は流れ、今日の授業が終わり既に下校時刻となっていた。普段なら学生寮にいる時間帯だが、あたしはまだ校内にいる。それもこれも、校長があたしとてんまに宿題をきちんとやらなかった罰としてトイレ掃除を課したからだ。

 

「あーもう、さっさと終わらせて帰ろう!」

 

ブツブツと絶え間なく文句を言いながらトイレ掃除を進めていく。大体、トイレ掃除なんかしていたら宿題をやる時間がなくなるではないか。あの校長はいったい何を考えているのだろう。

 

「あれ、なんでショートがここにいるの?」

 

ゆうきはまだ帰っていなかったようで、カバンを持ってトイレにやってきた。それにしても、ゆうきがこんな時間に学校にいるなんて珍しい。いつもはすぐに帰ってるのに。

 

「ゆうきこそ、まだ帰ってなかったんだ」

「あたしは校長の手伝いよ、褒美付きのね!」

「あぁ……ゆうきがいつもやってるやつか……」

 

何を隠そうゆうきはそれなりの褒美があれば嫌なことでもこなしてくれる。ただ、その褒美が高すぎてあたしは何かを頼んだことはないけれど……。校長ともなれば褒美の用意も容易いのかたまに手伝いを頼んでいるようだ。

 

「ショートはなんでトイレ掃除してるの?」

「宿題を適当にやった罰。隣でてんまもやってるよ……」

「そうなんだ、じゃああたしもやってあげるわよ! こんなビショビショじゃあトイレ使えないしね」

 

珍しく協力的だと思ったらトイレが使いたかった模様。確かに一度水を床に流したのでだいぶ濡れている。あたしは掃除のためにレインブーツを借りたけど、普通の上靴だと濡れてしまうかもしれない。

 

「あ、ありがと。そしたらここを――……」

 

 

 *

 

 

――――数分後、ゆうきの手伝いもありトイレはだいぶキレイになった。が、なぜかトイレの床だけでなくあたしまで隅から隅まで濡れている。理由は簡単、ゆうきが最後の床掃除の為に水を流そうとしたときあたしに向かって水をかけたからである。

 

「ゆうきーっ!」

「ごめんごめん、わざとじゃないってぇー! あたしのカバンにタオル入ってるから使っていいよ」

「もうっ!」

 

いったい何をどうしたらあんな盛大に水を人にかけることができるのだろうか。やっぱりゆうきに頼まないほうがよかったかもしれない……。

 

「じゃ、これで掃除終わったしあたしは帰るから!」

 

ぶちまけた水をそそくさと拭いてさっさと帰るゆうき。一人でやるよりは早く終わったと思うけど……こんなビショビショになるなんて。借りたタオルだけじゃ全身拭くのは無理だし。

そんなことを考えていたら隣のトイレからてんまが出てきて、ずぶ濡れのあたしを見てギョッとする。

 

「お、お前……遊んでたのか?」

「そんなわけないでしょ! ゆうきにやられたの」

「そりゃ災難だったな。その状態で教室行ったら怒られるだろうし、オレがカバン取ってきてやるよ」

「えっ? あ、ありがと……」

 

そう言っててんまは駆け足で教室に向かっていった。……意外と気の利くやつなのかな? と、いうか……てんまもたまには優しい時もあるんだね。まぁだからなんだって話なんだけど。

 

「ほらよ、カバン」

「な、なんか戻ってくるの早くない?」

「いやいくら夏とはいえずっとそのままでいたら風邪引くだろ。また部屋にこもるハメになるぞ」

「たっ、たしかに……それはイヤかも」

「じゃあさっさと帰るぞ」

 

そう言うてんまのあとを追いかけ、一緒に学校を出る。その間、なんとなくお互い話しかけず沈黙が続く。しかし、あたしはとある重要なことを思い出した。ずぶ濡れになったせいで忘れかけていたけど、かなり大事なことだ。

 

「そういえば、再生出の山があるんだったっ! ちんたら歩いてる場合じゃないよてんま!」

「……そうだった、めんどくさ」

 

もうすでに日が傾きつつあり、今から真面目にやったところで終わるはずがない。仮に終わった分が正解だったとしても終わっていなければ怒られる。かといってやらなかったらこれの倍の宿題が課される……どっちに転んでも怒られることが目に見えているなんて、なんて最悪な状況だろうか。正直明日学校に行くこと自体がもう嫌だ。

 

「よし、もう明日は学校をサボる!」

「はぁ!? 本気か!?」

「だって今からやったって終わらないし、かといってやらないで行ったら宿題倍だし。だったらいっそ学校ごとサボってしまおうかと!」

「うーん、確かに……」

 

あたしの言葉にてんまが悩み始める。赤信号みんなで渡れば怖くないっていうし、てんまのことも巻き込むか!

 

「どうせ怒られるんだから、盛大にいこうよ!」

「よし、じゃあ明日はサボるか」

「じゃあ明日の朝、8時くらいに学生寮の外で!」

 

こうしてあたしたちは最低最悪な約束をとりつけたのだった。

 

 

 *

 

 

――――翌朝、あたしは自室のドアから顔だけ出して寮内に人がいないことを確認する。普段は偉そうに座っているテツも今はいないようだ。絶好のチャンスとばかりに部屋を飛び出し、一目散に玄関へ向かう。外に出るとすぐ近くにてんまがいた。

 

「お、来たか」

 

そう、今日は二人で学校をサボるのだ。相手がてんまというのがちょっと微妙なところではあるけれど、致し方がない。それにしてもなんだか最近てんまと二人でいることが多いような……気のせいかな。

 

「とりあえず、始業時間まではここに隠れてようか」

「そうだな……学校へ向かう連中に見つかったら面倒だしな」

 

魔法語の授業では頭を使わないのにこういうときにだけ頭を使うあたしたち。意外と気があうのかもしれない。