「さすがにそれはっ……! うぅでもなんなのか気になる……!」
「遺跡まで四人に気付かれなければいいんじゃないか? 遺跡まで行けば透明になるおまじない使えるし。それなら隠れなくても話聞けるぞ」
「……! そっか! 杜若頭いーねっ!」

そうだよね、遺跡まで行ければ透明になるおまじないできるもんね……! 全然思いつかなかった……。

「でも、皆同じ場所にいるわけじゃなさそうだよな。オレはてんま以外には気付かれにくいかもしれないけど、ショートはバレちゃうよな」
「そうだよねぇ……遺跡までそれなりに距離あるし、どーしよ……」

全力でダッシュするのもアリっちゃアリだけど、逆に怪しまれるような気がするし……。せめて四人が同じ場所にいてくれたらなぁ。でもデートって言ってたからたぶん無理だよね……。

「じゃあ、オレも一緒に行く」
「えっ!? で、でも」
「恋人のフリでもしてたらバレにくいかもしれないだろ? でもとりあえずショートは変装したほうがいいかも。姉貴の服借りて、着替えてから行こう」
「……う、うん。何から何までごめんね、ありがとう」

 *

幸い菖蒲が部屋の中にいて、頼んだら服を貸してくれた。その服を着て、結んでいた髪の毛もほどいておろすことにした。

「おぉ……服装と髪型が変わると大分違うな。ついでに伊達メガネもつけてみたら?」
「メガネいいね! 頭よさそうに見える?」
「いや全然見えない」

ガーン……。あたしってそんなにバカっぽいのかな……。ショックだ。頭が悪いのは認めるけど……そこまでとは。

「と、ところでさっ……恋人のフリって具体的にどうしたらいいの? 隣にいるだけでいいの? 普通に会話してたら、もし近くに千夏たちがいたとき、声でバレないかなぁ?」
「あー、そっか……見た目はどうにかできても、声は……あっ、そうだ! 声高の魔法使って声も変えよう」
「ええ!? って、杜若ってばあたしで遊んでない!?」
「そ、そんなことねーよ……ぷっ」
「今笑った! 絶対笑った! フンッ! もーいいよーだ、魔法なんか使わなくたって、バレないように完璧に演じて見せるもんね!」
「おうおう、頑張れよ王子サマ」

か、杜若めっ……! 思い出したくもないことを……! ていうか絶対あたしで遊んでるよね!? まったくもう……。まぁ。手伝ってる分際で、偉そうなこと言えないんだけど……。

 *

なんだかんだと言いながら、あたしと杜若は二人で夏雲魔法学校までやってきた。そして、学生寮を出て一番最初に見た光景は、あたしが一番見たくなかった光景だった。

「あはは! てんまってばシャツ裏表逆に着てない? 子供じゃないんだから~」
「う、うるせーな! ちょっとした間違いだろ!」

広場の近くで、じゃれあうてんまと千夏。あたしは二人を見ないように、杜若の陰に隠れながら歩き出す。

「……ショート」
「な、なに?」
「オレ、今のショートの気持ち痛いくらい分かる。だけどさ、逆に考えて。今千夏といるってことは、急がないともう一つの条件先に言われちゃうだろ? それじゃ、意味ないじゃん。だからさ、今はとにかく目的を達成しよう」
「……うん。ごめんね、ありがとう」

杜若にそう言われた瞬間に、思い出した。杜若が、あたしのことを好きでいてくれてる事。今のあたしは、杜若の気持ちを利用して、弄んでる、最低な女だということを。