「おやおや、随分ラブラブですねぇ。さて、それはともかく、お二人に優勝賞品を差し上げましょう」

ハッ! クレープ無料券! あたしはこれのためにてんまを犠牲にしたんだった! ていうか、優勝賞品ってクレープ無料券だけだったっけ? なんか他にもあったような気がするんだけど。なんだったかな?

「優勝賞品のクレープ一年無料券と、ヨーロッパ旅行のペアチケットです! おめでとうございます!」
「あっ、ありがとうございます!」

や、やっぱり無料券だけじゃないよね……ていうかっ、ヨーロッパ旅行のペアチケットなんかもらったって一緒に行く人いないってば! ……せっかく、無料券のために頑張ってくれたんだし、チケットは……てんまにあげようかな。

「……あ、あのさてんま、わざわざ一緒に出てくれて、ありがと」
「別にいいよ。……ま、よかったな、無料券もらえて」
「う、うん……」

てんまには、好きな子がいるんだよね。好きでもないあたしとこんなのに出てくれたんだし、てんまだっていい思い、したいよね。

「あ、あのさってんま! このペアチケットてんまにあげる! て、てんま好きな子いるんでしょ? その子と行ってきなよ」

あたしは、チケットをてんまに押し付けるように渡した。
これで、いいんだよね。あたしは今十分幸せだったんだから……。

「いや、いい」
「へっ? なんで?」
「それよりも、素直になれない怪力バカ女を喜ばせてやろうぜ」
「…………! へへっ、そーだねっ! 帰りにApple魔法学校、寄っていこうか」
「だな!」

たぶん、ゆうきに渡してもあさひのこと誘わないだろうし……あさひにゆうきのことを誘ってもらおう。きっと……いや、絶対に! ゆうきも喜んでくれるよね!

「あっ! ショートとてんまいたわよ!」
「ショート、ズルいわヨ! 抜け駆けじゃナイ!」
「ぬ、抜け駆けって……!」

別に抜け駆けでもなんでもないと思うんですけど……! 第一、金魚すくいに夢中になってたのどこの誰だよ!

「って、それクレープ無料券とペアチケットじゃない? 優勝したの!?」
「そーだよ! これであたしはクレープ食べ放題!」
「は!? 優勝!? じゃあチケットよこしなさいよ! それでてんまと一緒に行くから!」

いきなり千夏がペアチケットに手をのばし、千夏にペアチケットをとられそうになったものの、千夏より先にてんまがそれをとり、そのままポケットにしまってしまった。

「悪いけど、これはあさひにくれてやんだよ。ゆうきのためにな」
「なっ! いいじゃない、ショートはこのトーナメントで十分てんまと一緒にいられたんだし、あたしだっててんまと一緒にいたい!」

ひえぇ……千夏すごいなぁ。好きな人にそんなこと言える勇気、あたしにはないよ……。てんまと千夏が二人きりで旅行いったら、それはそれでイヤなんだけどね……。

「私だって行きたい!」
「ワタシも行きタイ! 千夏ばっかりズルイわヨ!」
「あーゴチャゴチャうるせぇ! これはあさひにくれてやるんだって言っただろ!」

4人がギャーギャーと騒いでいる。モテモテなのも大変そうだなぁ……。あたしはせっかくだし、この無料券使って早速クレープでも食べようかな……!

「分かった。じゃあそのチケットは諦める。そのかわり、条件が3つあるわ」
「な、なんだよ条件って……っつーかこれオレらがとったんだけど……?」
「1つ目は今から創立祭が終わるまでの間、ショートに近づかないで。2つ目は創立祭が終わるまで、あたしとジュディとあすかでかわりばんこでデートすること。3つ目は……あとで言うわ。あたしだって、あさひとゆうきに上手くいってほしいとは思ってるから、この条件のむならチケットは諦めるわ」

な……なにその条件……! あたし、創立祭が終わるまでてんまに近付けないの……?