――――というわけで、さっそく『できる限り』てんまは女の子らしく、あたしは礼儀正しく振舞うことにした。けど、やはり普段の口調で喋ったりしてしまうことが多々あった。

「と、ところでよ……じゃなくて、えーと……あのさ、ゆうきとりんねに説明するときはどうする……の?」
「そ、そういえば……」

今の口調で喋りながら説明したって笑い転げられるだけな気がする。うーん……紙に書いて伝えればいいかな?

「じゃ、じゃあ紙に書いて説明し……ましょう」
「それがいい……わ」

さっきから会話が進まない。目上の人でもないのに敬語で喋るのダルい……あ、てんま年上だった。すっかり忘れてたよ……あまりにバカだから。

「おい、じゃなくて……、ねぇ、今お……私のことバカにしなかった?」
「……き、気のせいです……」

恐るべしバカの勘。
……そういえば、ほかの皆はどこで練習してるんだろう。好きなところで……って言ってたけど、そんなにたくさん練習する場所無いよね……?
一緒に練習してるのかな……うーん。まぁどっちにしろあたしたちは一緒に練習出来るわけないんだけど。下手くそだから。

「そ、それじゃあ練習しよ……しましょうか!」
「そう……ね!」

……練習って言っても、あたし途中から出る役なんだよね……。最初のとこはてんまだけでやってもらうしかないかも。

「えと……まずは最初からや……りましょう」
「分かった……わ」

それにしても、この話ホントにあの校長が考えたのだろうか……そう考えるだけでやる気失せるよね。しかもなんかやたらとメルヘンというかなんというか……あ、でも一人死ぬからメルヘンではない……かも? 白雪姫の原作では生き返ったのに、こっちだと死んじゃうんだよね……そのせいで白雪姫かなり出番少ないし。まぁでもコハネにしたらラッキーなのかもしれない。男女逆転してるし。ただ死んだ後の対処がてんまも小人役の七人も酷すぎるよね。いくら何でも死体を引きずって埋めに行くのはないよ!

「あのさ……この姉に叱られるとこ、棒読みでいいから読んでくれない?」
「え、あっ……そ、うですね一人でやるのは難しい……ですよね。分かりました」

うう、ついつい普段の口調で喋りそうになる……気を付けないと。

「あはは……お姉様の化粧品を埋めてやったわ……! お母様のインコも放してやったし、お父様の大事な時計とトイレも魔法で合体させたし!」

おぉ、最初の時よりはマシになってるかも。お姉様は化粧品になってないし、インコもアンコになってないし……いや、あれがひどすぎただけ?
……っと、そういえばこのあとお姉さんのセリフか! あたしが読まないと!

「えっ……と、もう、アリス何してるのよ! これ以上私たちを困らせないで!」

……うん、あたし女なのに男の杜若がやったのより下手くそだね。ま、まぁあたしが演じるのは王子様だし、いいよね!? うん、いいはずだ! きっと!
王子様が上手く出来るようにさえなれば、誰も怒らないはずだ! むしろ王子様をきちんと出来るようになれよ、って言われるよ!

「お、お姉様……見つかってしまいましたわね……。でも私は自分の魔法が好きだから、好きなように使ってるだけよ……」

……あ、そういえばさっきはここで一旦終了したんだっけ。その後小人と出会うとこにいっちゃったんだよね……。

「て、てんま! えーっと……さっきよりはマシになってると思……いますよ!」
「ほ、ホントか……じゃなくてそうかしら?」

マシになっただけだけどね。まぁでもお姉様を化粧品にしたりしなくなっただけ良いよね。ていうか進歩したよね。
よし、とりあえず授業もないし、今日は一日劇の練習だっ……!