再び講堂内が騒がしくなる。そして男子たちが震えだしているんだけど、そこは気にしないことにした。

「はいはい、皆さん静かにしてください。とりあえず劇のタイトルを発表します」

げ、劇のタイトルかぁ……でも、それが分からないとどんな役があるかも分からないよね。どっちにしろ出演は嫌だけど……。あ、けどその劇によって衣装とかも変わってくるよね……裏方やるとしてもそこは少し重要かも。

「タイトルは『魔法の国のアリスと七人の小人』です」

校長先生がそう言うとまたまた騒がしくなる。魔法の国のアリスと七人の小人……? って、どんな劇!?
アリスまでなら分かるとして、ホントは魔法じゃなくて不思議だし、七人の小人って何!?

「皆さんご存知の『不思議の国のアリス』と『白雪姫』という童話を参考にしてます。
 そしてその二つの作品を混ぜて、アレンジしたものを皆さんにやってもらおうと思ってます」

あ、アリスと白雪姫を混ぜてアレンジ……? そういえば、白雪姫に小人……出てくるかも。
ていうか、アリスと白雪姫混ぜるのはいいけど、どっちが主人公なんだろう。タイトル的にアリスかなぁ?

「これから皆さんに台本と簡単なあらすじを配りますので、それを見て役とか決めてください。以上です」

それだけ言って校長先生がどこかに行ってしまう。それと同時にリカルド先生、ドルイドン先生、ミスキーキー先生がせっせと台本とあらすじとやらを持ってきた。
雑用はあの先生たち任せなんだね……。

「はい、ショート」
「あ、ありがとう……」

杜若があたしの分を取ってくれた。それは非常に嬉しいんだけど、劇に参加したくない故になんかフクザツ……。
まぁそんなことは置いといて、まずどんなお話なのか確認してみよう。えーと、どれどれ……?

『主人公の女の子“アリス”はイタズラ好きの魔法使い。ある日イタズラして怒られて森の中に行くと、小人に会う(以下省略させていただきます)』

って、おいいいいい!!?? 何このすごい略し方! 荒すぎるだろ! もうちょっとちゃんと書いてよ!
これじゃ台本読まなきゃお話分からないよ……。
て、いうか……アリスが魔法使いって……あ、だから魔法の国なのかな? イタズラ好きとかゆうきに似合いそうだけど、今回男女逆転なんだもんね。
――と、そんなことを考えてたら、ゆうきが先ほど校長先生のいたところに立って、指揮をとっていた。

「はいはい皆あたしに注目! これから劇の役を決めるわよーっ!」
「うげげ……」

あたしを含めた多数の人が嫌そうな声を漏らす。そして特に男子。
きっとどの男子も主役を誰に押し付けるか考えてるんだろうな……。

「えーと、そうね、まずはやっぱり主役よね! 誰か立候補する人とか……いないわよね、流石に。それじゃ、やっぱり主人公は投票形式にしましょう。
これから女子に男子全員のうちの誰かに一票だけ表を入れてもらうから、今から渡す紙に誰がいいか書いて、この箱の中に入れて頂戴!」

ゆうきが小さな箱を見せる。いつの間にあんなもの準備してたんだろう。
それにしても主人公か……えーと、今いる男子は……っと。
てんま、あさひ、コハネ、杜若、なるみ、イトくん、ゴスペルかぁ。
……よし、じゃあこの人にしよう。きっと似合うはずだから!