5月も半ば

今日も外は良い天気

時折吹きぬける風が気持ちいいと感じられるようになってきたよ


あれから3ヶ月

君の心は未だ凍りついたまま


あのとき僕が声をかけなければあんなことにはならなかったのかもしれない




『周助』

「なんだい?」


『今日も遅いの?』

「なるべく早く帰るようにはするけど」


『ならいつもの場所で待ってる』

「部室でも良いんだよ?」


『ありがと。でも部外者が入ったら手塚くんに怒られそうだし』

「クス、そっか。でも外は寒いよ?」


『大丈夫。後で周助に暖めてもらうから』



優しく笑う君の額にキスをし練習へと戻った




練習終了後、僕は急いで着替え君が待ついつもの場所へ向かっていた

「すっかり遅くなっちゃたな…」


いつもの場所

高台にある小さな公園

そこから眺める景色が好きだという君

いつのまにかここが僕らの待ち合わせの場所になっていた



「あれ?どこか寄り道でもしてきたのかな?」

もうすぐ公園へ入ろうとする君の姿が見えた

僕は思わず君の名を呼んだ


『周助?』

振り向き喜んで僕の方へ走りだしたその瞬間…







!?





目の前には信じられない光景




急いで駆け寄り君の名を呼ぶが反応がない

救急車を呼び病院へ運ばれる

幸いにも大きなケガはなかったものの一つ重要な事が抜け落ちてしまった





記憶喪失



事故のショックで記憶がなくなってしまったようだ

医者によれば何かのはずみで思い出すであろうとは話していたけれど


あのとき僕が声をかけなければこんなことにはならなかったのに…

そう思うと悔しくて自分が情けなくて練習にも身が入らなくて何度も手塚に怒られたっけ



今ではケガの方もすっかりよくなり日常生活には何も支障がない状態だ


あとは君の心が目を覚ますのを待つだけ…

勿論僕はずっと君の傍にいて毎日話しかけるよ

いつか必ず思い出すと信じてるから


幸い今日は練習もないから久しぶりにいつもの場所へ連れて行ってみようかな


手を繋いでね