訳もなくうまい、という言葉が慣用的に使われているかどうかはわかりませんが、
訳もなくうまいといえるのは、食べる側の論理であって、
作る側や採取する側には訳があるのです。
青森自慢のご当地グルメ、十三湖の”寒しじみ”、
寒とつくので、わざわざ寒い冬に取っています。
本州の最北端です。
寒くないわけがありません。いや、寒いとかいう話ではなく、凍える冷たさです。
それでも寒風吹きすさぶ中、水に入って、
「鋤簾(じょれん)」という、ツメのついた鉄製の籠を使って、
湖底20~30cmにひそんでいるシジミを漉き取るのです。
これはもう、苦行です。
氷が張るときもあるんだそうですが、そういう時は氷を割って取るそうです。
なぜそうまでしてしじみを取るのか、
もちろん売るため、というつまらないへ理屈は置いといて(だったら書かなきゃいいのに。)、
寒しじみは膨らみとつやがあり、冬を乗り越えるために栄養をため込んでいるので、味が濃くてうまいんだそうです。
それに十三湖は、白神山地や岩木山を源流とする岩木川から栄養豊富な淡水が、
満潮時にはミネラルたっぷりの日本海の海水が入ってきて交わり、他にはない「別嬪」のしじみがとれるというわけです。
なるほど、うまいものには訳がありました。
そして、寒さに負けずにしじみを取ってくれる漁師の方に、感謝。