小便小僧の恋物語

小便小僧の恋物語

「本質的なものを誇張せよ」ヴァン・ゴッホ

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 バラ色の日々が終わろうとしている。

厳密にいうとまだ終わっていないが、おれの今の力では彼女(巨乳ちゃん)との関係を修復できそうにない。

 

 カウントダウンは始まっている。

そして、きっと突然別れがやってくるに違いない。この完全に冷え切った関係から、どちらかが切り出した瞬間、なにもかも終わりになる。耐えきれずに切り出すのはおれだ。今年から始めた同棲は1年も経たず終わりを告げるのだ。

 

 一体どこでどう歯車が狂ってしまったのか。

 今月初め、2人で2泊の沖縄旅行に行った。幸せの絶頂だった。海で泳いだ。パラセーリングをした。泡盛をしこたま飲んだ。セックスも2回した。しかし、2週間経った今は、あの旅行は遠い昔に思えてくる。

 

 たしかに旅行の帰り道から、少し険悪な雰囲気だった。それは弾丸旅行による疲れからくるものだと思っていた。旅行中レンタカーで車移動だったのだが、おれがナビ通りに運転しない、とか、旅行中彼女の写真をあまり撮らなかったとか、彼女はそんな些細な不満を言っていたが、そんなことは別れの理由にならないだろう。

 

 旅行から帰ってきてからは普段通りのバラ色の日々を送っていたつもりだった。がしかし、その後、数日間少し違和感みたいなものをおれは感じていた。

 

 そして、事件が起こった。

 彼女が円型脱毛症になったというのだ。脱毛症用の塗り薬を見せられた。実際の症状を断固として見せようとしないのでまだ半信半疑の部分はあるが、でもおそらくそうなんだろう。

 

 そういう悩みを彼女に告げられた夜、おれはいつものように、

「セックスしよう」

 と言った。彼女は、

「こんなに悩んでいるのなんでセックス、セックスばかりいうの?」

 と怒った。そして、その日からお風呂は別々に入るようになり、ベッドも別々になった。態度も急変した。会話もない。彼女が俺を見る目つきは、冴えないオッサンを見る目つきだ。もうセックスどころではない。

 

 円型脱毛症の原因は一体なんだろう、と考えた。

 彼女に何度聞いてみてもわからないの一点張り。おれが原因じゃないのか、というのは誰もが考える理由だろう。実際、おれもそう思っている。

 だから別れもきっと近い。ジェットコースターの急降下のように。

 今は落ちるためにジリジリと昇っている状態で、落ちる時は一瞬だろう。恋はジェットコースターのよう、みたいな文句を世間で聞いたことあるがこういうことを言っているんだろうか。。。

 

 そんなことより、今のこんな冷え切った関係が数週間も1か月も続くはずがない。精神的に耐えられない。

 

 できれば関係を修復したい。解決方法はあるのだろうか。

 誰かこの日記を読んだ人なにか良い解決方法があったら教えてほしい。お願いします。

 彼女は3日連続で夜の帰宅が12時近い。今日も外出していて、おれはカルビーポテトチップスうすしお味を食べながら、おみあげで買ってきた泡盛の一升瓶の残りをチビチビと飲んでキーボードを叩いている。

 この泡盛がなくなるころにはおれの心は粉々に砕け散るだろう。ブロークンハート。

 

 目を閉じると、むなしく蝉の声が聞こえる。

 会社の事務のババア(ババア。ほんと典型的なクソババア。見た目はハイヒールモモコとウリふたつ。女で未婚のまま齢をとると、ほとんどバケモノと化す。世間からの疎外感とか、女としての不幸感とかそういうストレスと化学反応を起こし、醜いモンスターに成長する)が、俺に対し、

「ちょっと常識外れなんじゃないの?」

 と言ってきた。俺は、ただビックリした。

「え、」

 このババアとは会社にいてもまず絡むことはない。それなのにわざわざ、トイレに行って戻って休憩室でタバコを吸っているタイミングを見計らって説教をたれにやってきた。理由は俺が外出するときにババアに声をかけなかったこと。

 普段営業の俺は日中出っ放し。たまたま昨日は会社に戻って電話を待つ用事があり、その電話があったらすぐ出掛けないといけない、という状況で、いつもだったら社内にはババア以外にも社員はいるのだが、その日はそのババアだけでそのババアも若い来客者とくだらない話をしていた。

 俺も急いでいたから準備をしてそのまま外出した。こういう状況だったことをババアは俺に説明させようとせず、マシンガン的に口撃してきて、そして最後にこのセリフ。

「ちょっと常識外れなんじゃないの?」

 その言葉を発している時のあの顔。軽蔑と憎悪で、片方の口角だけが吊り上がり、顔が強烈に歪んでいた。これだけのことで、このババアはこれほどまでに感情を高ぶることができる。ということはちょっと精神状態がやばいんじゃないのか。一体どっちが常識から外れているのだろうか。それに営業なんて仕事はちょっと常識から外れてるくらいじゃないと務まらない。そんな考えはババアには微塵もないだろう。俺はさらに常識から外れてやろうと誓った。

 その後ムカつきの感情が沸いてきて、疲労感が半端じゃなかった。一夜明けて今日にいたるが、こうして文字を打ち込んでストレスを発散させている。久しぶりに日記を書く理由がこんなくだらないことだなんてなんだか悲しい。が、しょうがない。

 普段の俺は幸せでいっぱいだ。7歳下の巨乳の彼女と同棲していて、会社の成績も優秀。仕事もマイペース。サラリーマンだが、不満やストレスとかけ離れている生活を送っている。日記を書こうとなんて気もさらさら起きない。普段やりたいことと言えば彼女とのセックスくらいだ。

 だが、今回このようなくだらない出来事が起こってしまった。教訓は、ババアは化け物だから抵抗しない、近づかない、目も合わさない、に尽きる。

 だってババアは人間じゃないんだもの。熊に近い。

 ここに書かれていることは俺が自分のことを書いたことであり、俺の人生そのものである。日記を書いているときの俺の気分は客観的に見ると、終始ブルーだ。そういう気分になったときに俺は物を書き始める。今日は果たしてブルーな気分なんだろうか。

 

 暇だからパソコンでも開いてみるか、というどちらかというと楽観的な気分から始めてみたのだが、こうして言葉を書き連ねていくうちに、なんだか沈んだブルーな気分に変わっていく。しかし、この気分は、心が沈んではいるが妙に心地よく不思議な気分ではある。俺の2つの目は、次々にデスクトップに表示される文字を黙々と無意識に追っていく。周囲の音が聞こえなくなっていき、キーボードを打つ指はまるでピアノをたたいているようだ。このままずっと無心で死ぬまでたたき続けていければどんなにいいだろう。

 

 しかし、それは長くは続かない。俺には予定がある。夕方、正確に言えば16時30分には家を出て床屋に行かなければいけない。髪が伸びたのだ。

 東京で暮らす中小企業の会社員の俺は髪が伸びれば短くしないといけない。大企業の会社員に対して中小企業の会社員は清潔な髪形で一日に何回も頭を下げて懇願しないといけない。懇願する理由は特に俺にとっては全く意味のないことだが、間接的にサラリーにかかわってくるのでそういう意味ではとても重要なことだ。だから髪を切りに行くことは重要なことだ。今14時50分だからこんな有意義で心地よい自由な時間は2時間も続かない。

 

 さらにそのあとは、仕事が終わるのを見計らって27歳の巨乳で美人の彼女に会いに行かないといけない。世間では、休日は恋人同士は会わないといけないという暗黙のルールがあるし、それに俺は彼女に依存している。彼女も俺に依存している。金のないしがない35歳のサラリーマンが、若い巨乳美人と付き合っていられることは幸せなことだ。改めてそう思ってみると、俺は今幸福の日々を過ごしていると思う。

 今日は、彼女は生理だからセックスはなし。それでも幸せだ。生理の日は、夜と翌朝はフェラをしてもらえる。彼女の家は自宅より職場に近いからそのまま何事もなかったように出社すればいい。俺は営業職の会社員だから、日中ほとんど会社にはいず、外出していて3時間以上はさぼっている。そして18時ごろに何事もなかったかのように帰社し、21時頃までサービス残業をする。

 

 これが人の幸せというのなら俺は幸せな日々を送っているのだろう。