土葬を行うための事前知識と手続とは
近年、日本でも外国人の増加や宗教の多様化により「土葬」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
土葬とは、遺体を焼かずにそのまま地中に埋めることです。
特にイスラム教では火葬が認められていないため、日本でも土葬を希望するケースが出てきています。
なぜ、今、土葬が問題となっているのかについて、歴史や背景等から手続的なことも含めて解説していきます。
1.土葬の歴史(日本)
1)古代〜江戸時代
日本ではもともと土葬が一般的でした。
特に農村では、遺体を棺に入れて土中に埋める埋葬が普通でした。
主な特徴としては、村の共同墓地で行われ、遺体は木棺、家族や地域で埋葬作業を行い、僧侶や宗教儀礼は後付けでした。
一方、仏教の影響により火葬も奈良時代から存在しました。
2)明治時代(火葬普及の転機)
明治政府は一時期、神道重視政策の影響で火葬禁止令(1873年)を出しますが、2年ほどで撤回されます。
その後、1897年の伝染病予防法、コレラなど感染症対策により感染症患者の火葬が義務化されました。
これにより、「火葬=衛生的」、「土葬=不衛生」というイメージが広がりました。
3) 戦後〜現代
1948年に墓地、埋葬等に関する法律(墓地埋葬法)が制定されました。
ただし、土葬そのものは禁止されていません。
しかし、地方条例や火葬施設の整備、都市化により、現在は火葬率 99.9%以上の世界一の火葬国になりました。
2.土葬に対する思想・宗教観
土葬は単なる葬法ではなく、死生観に深く関係します。
1)仏教圏
火葬が多いです。
理由としては、身体は仮のものであり、輪廻転生という考え方からです。
2) 一神教(イスラム教・キリスト教・ユダヤ教)
土葬が基本です。
理由としては、終末の日に身体が復活するという思想によるためです。
特にイスラム教では、火葬は禁止で必ず土葬とされています。
3)日本の死生観
日本では、神道 → 死は穢れ、仏教 → 供養
この二つの影響で、死を早く処理する文化が生まれ、結果として火葬文化が定着しました。
3.土葬のメリット
土葬を行うメリットとしては、
1)宗教的自由の尊重
イスラム教・キリスト教などの宗教的要請を満たせるため。
2) 自然回帰
土に還るという思想に基づくため。
最近は、自然葬やエコ葬と共通する部分もあります。
3)遺体との関わりが深い
土葬では、湯灌や遺体を家族が扱うなどの死と向き合う文化があります。
4.土葬のデメリット
デメリットとして日本社会で反対される理由です。
1)衛生問題
地下水汚染や感染症が懸念されるため。
実際に衛生問題が出た例は少ないが、心理的抵抗が強いです。
2)土地問題
墓地は永久占有であるためです。
日本では、土地不足や都市化の問題が大きい。
3)管理コスト
土葬墓地は区画が大きいのと長期管理が必要となります。
4)社会的抵抗感
日本では火葬文化がほぼ100%なので、土葬への心理的拒否感が強いです。
5.土葬の手続(墓地埋葬法の実務)
土葬を行う場合でも、基本的な手続は火葬と同じです。
流れは次の通りです。
1)死亡届の提出
死亡後7日以内に市区町村へ提出します。
2)埋葬許可証の取得
死亡届を提出すると、自治体から埋葬許可証が交付されます。
この許可証がないと埋葬できません。
3)土葬可能墓地の確保
重要なポイントはここです。
土葬は、土葬が認められている墓地でしか行えません。
通常の墓地では火葬を前提としているため、遺体のまま埋葬することはできません。
4)埋葬の実施
自治体の基準に従い埋葬します。
一般的な基準としては、
※深さ1.5〜2m以上
※地下水への影響防止
※木棺使用
等です。
6.日本で土葬できる地域
法律上は禁止されていませんが、実際に土葬できる墓地は日本でもごくわずかです。
現在、土葬が可能とされる墓地は主に、茨城県・千葉県・山梨県・静岡県・神奈川県などに点在しています。
全国でも10か所前後と言われています。
また、土葬墓地の多くは、外国人向け、イスラム教徒向けとして整備されています。
近年では、北海道や九州等でも土葬墓地の計画が議論されています。
7.大分県で問題になっている土葬墓地
近年、日本で大きな議論となったのが大分県日出町で計画されたイスラム教徒向け土葬墓地です。
この計画では、約100区画の土葬墓地と国内のイスラム教徒向けとして整備が検討されました。
しかしながら、地元住民からは、地下水汚染の懸念や水源地への影響、外部から遺体が集まることへの不安などの理由で反対運動が起こりました。
この問題は、宗教の自由や多文化共生、日本の葬送文化が衝突した象徴的な事例として全国的な議論になりました。
以上となります。
日本では火葬が常識となっていますが、歴史を振り返ると土葬は決して珍しいものではありません。
しかし宗教観・土地問題・衛生観念などが重なり、日本では土葬がほぼ消えました。
一方、外国人の増加により「土葬の墓地をどうするか」という問題が現実のものとなっています。
土葬問題は単なる葬儀の話ではなく、日本社会の宗教観や多文化共生を映し出すテーマなのです。
今後の動向を見守っていく必要があります。
