http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2016/nagahama2/nagahama2_ja.htm

 

「「観音の里の祈りとくらし展Ⅱ」の特別内覧会に参加させていただきましたのでレポートします。なお、掲載の写真は主催者より許可をいただいて撮影したものです。

 

ホームページから開催主旨を引用します。

長浜市には、130を超える観音をはじめとするたくさんの仏像が伝わり、古くは奈良・平安時代に遡るものも多くあります。また、この地域は、戦国時代には「近江を制する者が、天下を制す」と言われ、幾多の戦乱や災害に見舞われましたが、そのたびに、地域住民の手によって観音像は難を逃れ、今日まで大切に守り継がれてきました。
これらの仏像は、大きな寺社に守られてきたのではありません。地域の暮らしに根付き、そこに住む人々の信仰や生活、地域の風土などと深く結び付きながら、今なお大切にひそやかに守り継がれています。
この展覧会では、このようなホトケたちの優れた造形とともに、こうした精神文化や生活文化を「祈りの文化」として紹介し、長い歴史の中で守り継がれてきた地域に息づく信仰のこころを全国に発信していきたいと考えています。
歴史・文化に彩られた北近江の長浜、この地に息づく「祈りの文化」と「観音の里」の魅力を通して、一人でも多くの方に、ホトケたちとそれを守る人びとの姿を感じ取って頂ければと考えています。

 

恥ずかしながら、このようなことは初めて知った次第ですが、

内覧会を鑑賞して「もう一度来たい!」と思った次第。

何しろ本展の出陳点数は49点、内国指定重要文化財16点、堂外初公開15点というすごい内容。内覧会は1時間でしたので、解説を聞いてキャプション読んで、写真撮ってということで時間が足りませんでした。どれも美術品というよりはこの地の信仰・祈りと結びついた魅力的な容姿の観音様たち。いつもはお堂に入っているので正面からちょっとしか見れない観音様たちを間近で360度から見ることができる貴重な機会なのです。

しかも内覧会では私は手を合わせることをしなかったのです。会場を後にしてから、この観音様たちを守ってきた皆さまと気持ちをシンクロさせて祈ることが大事と気づいたのです。

だからもう一度行きます。

そしてこれから行かれる方はぜひ十分時間を確保して、じっくり鑑賞するとともに心の中で祈っていただくことをオススメします。

 

以下何点かピックアップしておきます。

 

まず観音様。

重要文化財で何と堂外初公開のものを3点。

 

伝千手観音立像、木之本町黒田 観音寺蔵 木造 素地 200.0cm 平安時代

 

この観音様は、軍師官兵衛の黒田家発祥の地観音寺本堂に安置。無住で住職が兼務のため維持管理や参拝者対応は三人の世話方が行っているとのこと。まさにこの地の人々の祈りとともに人々によって守られてきたもので本展を象徴する観音様ですね。

大きくてたくましい観音様なので頼りたいって気持ちになります。

 

 

十一面観音立像 木之本町大見 医王寺蔵 木造 漆箔 145.4cm 平安時代

 

明治初期の廃仏毀釈によって流出し、明治20年頃にときの医王寺の僧が長浜の古物商から買い求めたという観音様。今は観音堂に安置され大見集落の住民に手厚く管理されているそうです。

ふくよかなお顔で穏やかな感じで癒やされます。

 

観音菩薩立像 余呉町菅並 洞寿院蔵 木造 素地 172.7cm 鎌倉時代(1216年)

 

この観音様は三十三年に一度開帳される秘仏。そして今年9月がご開帳にあたるとのことですが、その秘仏を本展で拝見できるのです。いつもは観音堂に安置されていますが、住職が兼務のためやはり地元の人達によって維持管理されています。

細長い目の鋭い瞳で見つめられると何故かまいりました!という気持ちになります。

ちなみに観音が世を救済するに、広く衆生の機根(性格や仏の教えを聞ける器)に応じて、「仏身」「声聞身」「梵王身」など、33の姿に変身するとのことなので、33年はここからきているものと思います。

 

次に観音様以外のものを2つピックアップしておきます。いずれも重要文化財です。

 

伝薬師如来立像 高月町西野 充満時蔵(薬師堂安置) 木造 漆箔・古色 159.4cm 平安時代

 

手に注目。右手を上げて左手を下げて共に手の平を前に向け、それぞれの手の親指と人差し指で輪を作ってます。これは信者の臨終に際して、阿弥陀如来が西方極楽浄土から迎えに来る時の印相なので、阿弥陀如来像かと思いきや、薬師如来であると。実はこの手は後補。しかしながら元は薬師如来の通例である右手は右手を施無畏印、左手を与願印とし、左手に薬壺を持っていたかは不明とのこと。

この薬師如来様も地元の奉賛会が維持管理しているものであって、みなさんが薬師如来って言っているのだからそれでいいのだ!

病気平癒の祈りを静かに聞き入れてくれそうなお顔ですね。

 

 

愛染明王坐像 宮前町 舎那院蔵 木造 彩色 49.4cm 鎌倉時代

 

 

昭和45年まで秘仏で堂外では初公開。

保存状態がいいので截金(きりかね)の金がはっきりわかりますね。面白いのは左第三手には何も持っていませんが祈祷の目的により品を変えるそうです。

本面と獅子頭には玉眼を嵌入しており、愛染明王の特徴である憤怒の表情がシャープに表されてます。

 

最後に私が最も気に入った像。長浜市指定文化財。

 

弁才天坐像 早崎町(竹生島) 宝厳寺蔵 木造 彩色 38.5cm 室町時代(1557年)

 

琵琶湖に浮かぶ信仰の島竹生島で地元の人によって育まれてきた弁才天信仰。毎年8月の蓮華会の際に頭人が奉納した最古の像だそうです。

水神浅井姫命と習合した弁才天様は、女性らしい優しいお顔ながら凛としてます。やはりここにもう一度来て願いをきいてもらいたいですね。何しろ日本三大弁才天のひとつなのですから。ちなみにあと二つは、大願寺(広島県廿日市市、宮島と江島神社(神奈川県藤沢市、江ノ島)。

 

【開催概要】

会期: 2016年7月5日(火)- 8月7日(日)
    午前10時 - 午後5時(金曜日は午後8時まで)
    入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(ただし、7月18日は開館)、7月19日休館
会場: 東京藝術大学大学美術館 本館 展示室3、4
観覧料: 一般1,200(1,000)円 高校・大学生700(600)円(中学生以下は無料)
* ( )は20名以上の団体料金
* 団体観覧者20名につき1名の引率者は無料
* 心身に障害のある方および付添者1名は無料(入館の際に障害者手帳をご提示ください)
* 本展をご覧のお客様は当日に限り、

 同時開催「平櫛田中コレクション展」を無料でご覧いただけます。

 

本展を鑑賞したら、「平櫛田中コレクション展」を見てみましょう。

中世~室町時代に制作された木彫の観音さまたちを拝見したあとは、近代の木彫作品って趣向です。

http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2016/denchu2016/denchu2016_ja.htm

 

Webサイトから引用します。

平櫛󠄁田中(1872-1979) は、100 才を超えても現役の作家として活躍した日本彫刻界を代表する木彫家の一人です。後に自分のコレクションの散逸を防ぐためと、学生の制作の糧となる作品を残したいという本人たっての思いから、本学へ自作を含めた近代彫刻のコレクションが計149 点寄贈され、平櫛󠄁田中コレクションとして現在当館に収蔵されています。本コレクションの中から、近代彫刻の名品をご紹介します。

 

平櫛田中さんのことはあまり知りませんでしたので、まずは田中さんの作品を。

(なお、掲載の写真は主催者より許可を得て撮影したものです。)

 

左:平櫛田中、鏡獅子試作、昭和13年、木・彩色

右:平櫛田中、転生、大正9年、木・彩色

 

「転生」は必見ですね。

このキャプションは「食べた人間が生ぬるく、そのまずさに鬼が吐き出している様子。生ぬるい(何事も中途半端な)人間は鬼も食べないという田中の郷里の伝承を題材に、自戒を込め作られた」と。

「進撃の巨人」よりも怖いですね。鬼が吐き出してしまうような人間だとしたら、生きている意味があるのかと迫ってくるんですね。

 

平櫛田中さんが収集した中では、橋本平八さんの作品がぐっときました。橋本平八さんのことは全く知らなかったので、初見です。

左:橋本平八、花園に遊ぶ天女、昭和5年、木・淡彩

右:橋本平八、或日の少女、昭和9年、木・彩色

 

右奥の少女が無心に祈っているこの声を、手前の天女の少女が耳を澄ませて聴いているような不思議で幻想的な雰囲気が感じられましたね。

再訪したらこの天女の少女に私の祈りを聞いてもらうことにします。

 

【開催概要】

平櫛󠄁田中コレクション展
会期:  2016年7月5日(火)- 8月7日(日)
    午前10時 - 午後5時 (金曜日は午後8時まで)
    入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(ただし、7月18日は開館)、7月19日は休館     
会場:    東京藝術大学大学美術館 本館 展示室2
観覧料:    一般430円(320円)、高校・大学生110円(60円)、中学生以下は無料
      * ( )は20名以上の団体料金
      * 団体観覧者20名につき1名の引率者は無料
      * 障がい者手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料
      * 同時開催 「観音の里の祈りとくらし展Ⅱ-びわ湖・長浜のホトケたち-」を

       ご覧のお客様は当日に限り、本展を無料でご覧いただけます。