インクルーシブ自転車レースとは
今回紹介したいのが、こちらの大会。
「杉浦佳子杯・第1回インクルーシブ自転車レース成田下総」
インクルーシブ自転車レース公式ホームページ
Qリーグ・Nリーグの運営をしている二人が次なる一手を打とうとしている。
そのレースは非常に画期的で、実行したいことは理解しやすい反面、コンセプトが多岐にわたるため選手への訴求が難しいと感じた。
なので今回はレースの概要や、秘められた可能性について紹介していこう。
「インクルーシブ自転車レース」を一言で言うなら、
⇒これまでの自転車レースが抱えてきた悩みを、少し違う視点から見直そうとする試み
年齢、性別、障がい、国籍などに囚われることなく、「誰でも参加できる、皆に開かれた」レースイベントを目指している。
その本質は、「誰も排除されず、自然に参加できる状態」をつくることなのだとか。
レース内容
1.個人タイムトライアル(個人TT)
15~20秒間隔の単独スタートし、全員1回走る。
この個人TTで記録したタイムにより、クラスAからDの4つに振り分ける。

2.個人ロードレース
AからDのクラスでそれぞれレースを行う。

※車種自由(ママチャリもOK)
※コスプレOK(ガンダムは視界不良のためNGヘルメットは必ず着用)
従来の自転車レースでよく聞く悩み
① ビギナー同士でも脚力差が大きい
市民レースでは、「初心者クラス」「ビギナークラス」が用意されていることが多い。
しかし「ビギナークラス」の資格を有していても、脚力の差によって同じビギナーでも集団がすぐにばらけてしまうことがある。
その結果、早い段階で置いていかれることになり、一人で走る時間が長くなる。
どのレースイベントにも言えることだが、初心者の受け皿として機能しているとは言い難い。
② 人数の少ないカテゴリが成り立ちにくい
特にこの悩みとして挙がりやすいのが、女子カテゴリ。
人数が少ないと集団走行になりにくく、①と同様に一人で走る時間が長くなってしまう。
③ 自分のレースが終わると一区切り
多くの選手は、自分の出番が終わったら帰る。
他のカテゴリのレースは表彰式の待ち時間に観戦する程度。
つまり多くの選手にとって、他のカテゴリのレースは「時間を持て余してしまう場面」になりがち。
会場には同じ時間を過ごしている人がたくさんいるのに、イベント全体としての一体感は生まれにくい構造になってしまっている。
インクルーシブ自転車レースの問題点
このインクルーシブ自転車レースは、先ほどの①②の悩みは解消できるだろう。
しかし③に関しては、このままでは解決は難しいと思う。
さらに問題点は他にもある。
振り分けがされたとしても、Aグループ内の一番タイムが良かった選手と最も悪かった選手の差が大きい可能性があることだ。
そしてそれはB、C、Dグループも同様である。
インクルーシブ自転車レースがもたらす可能性
そこで提案したいのが「紅白戦」だ。
これは個人TTの結果によりA、B、C、Dのグループに振り分ける際、バランスよく赤組・白組に振り分ける。
そして、各グループのレース結果をポイントとして集計し、チーム同士で勝敗を競う形式だ。
もちろん個人の順位やタイムを表彰することに変わりはない。
しかしこの紅白戦の魅力は、自分が上位に入れなくてもチームに貢献できることと、選手同士の境がぼやけることで、チームプレーや一体感が生まれやすくなることにある。
チーム戦になることで、自分が走っていないレースでも、性別やハンディキャップの有無や年齢関係なく、同じチームの選手を応援しやすくなる。
その結果、③の悩みの解消につながるのだ。
この大会で期待できること
このイベントは、ビギナーが参加しやすくなることや、人数の少ないカテゴリでもレースを成立させやすい事。さらに身体・機材のハンディキャップが障壁になりにくくなり、参加者同士の交流が生まれやすいイベントになる。
紅白戦が無くても、十分に魅力的なイベントである。
しかし、主催の二人が頭を悩ませていた問題があり、それは間口が広いイベント故に訴求の仕方がかなり難しいということ。
訴求の仕方によっては福祉系のイベントになり、競技性を求める選手が集まりにくくなる。
逆もまたしかりだ。
ただ明確なのは、これまで当たり前だと思われてきたレースの形を見直し、「誰でも参加できる、皆に開かれた」イベントを企画しようとする姿勢を持っていること。
そしてその途中段階であるということ。
まだ進化し続けると言うことだ。
これからの発信の仕方や開催を重ねる中で、集まった選手たちと共に、このイベントがどんな形に育っていくのか注目していきたい。