授業が終わり、部活も終わり、先生の仕事も終わり。
この学校の中には誰もいない、はずだった。

走って廊下を駆ける音。
廊下は走るものではないと言われようが、今の状況で気にしてはいられない。
だってここで止まれば、自分は大切なものを失ってしまうのだから。



スクールウォーズ!





ある日皆斗(ミナト)学園に通う八人に招待状が届いた。
その招待状にはPM23:00に学校に来なければ存在が消えると言うものだった。

招待状の通りに学校へ行くと学校にあるもののみを使って戦えという声が。
戦わない、もしくは戦いに負けたら大切なものを消され、その大切なものを消されたまま生きていかなければならないという。
最後まで勝ち残ったものは願いを叶えてくれるという。
叶えてほしい願いを叶えるために、大切なものを消さないために八人は戦う。




私には夢がある
──────保育士。
私がそう言うと誰もが意外だという
けれど私はそんな勝手なイメージで人を見る社会にあえて抗う
逆ギレと思うなら思えばいい
理不尽と思うなら思えばいい

私には失いたくないものがある
友達や家族ではないけれど
それでも守りたいもの
夢。将来の…ユメ。
とても小さくて、とても遠い夢
私の事で精一杯
他人を守るなんて偽善は嫌い。
自分を傷つけても人は救えないから

それでもいつも自分の中にあったものは…保育士。
昔誰かに言われたことがある。
「君は何を見て何を望んでいるの?独りで生きて向かった先に何があるの?この子を見てごらん…君にこの子の目の輝きを守ろうと思える心があるかい?」
確かに、その言葉にこの子を見たとき、今まで感じなかった温かいものを感じた。
守らなければいけないと思った。

だから私は戦う
夢を守り、叶える為に
自分も子供(夢)も傷つけないように。




スクールウォーズ!



「来ないで!嫌い!」なんて叫び、後ろのやつらとの距離を突き放す。
長い渡り廊下を駆け込んだ先、実習棟。
其処は職員すらも滅多に通る事がない空き教室の集落。

一方、さっきまで居たらしい二階職員室の中には七人の人物の姿。

奇妙な双子の兄弟ペア
可憐な少女とその従者
怒れる女用心棒
部屋の一角を見つめる生徒会長の男子
一人ハーモニカを吹く普通生徒の女子

双子の兄は気が狂っているらしく、部屋の一角で不気味な笑い声をあげている。
弟は対照的に、兄を心配そうに見守っている。
弟「兄さん…今笑うのは良くないよ…」
兄「イッヒッ!…君にはわからないのか!?他人が悲しみや憤慨に打ち震える瞬間!………それにさぁ…僕の事を兄さんと呼ぶな。そんな戯言、虫唾が走る!」
「そんな…兄さ…」
「やめろよ!…僕は君の存在を認めない。何故か君の不満げな歪んだ顔を見ても満たされない…僕と同じ顔…木之本貞女(キノモトサダメ)、気色悪い!」
「………………」

場の空気は一気に氷点下に達した。

実の弟にそう言い放ったのは木之本孤薄(キノモトコハク)。

用心棒「フン、気分が悪い…私は外の空気を吸ってくる。」
少女「わ、わたしも…その…行きます!」
従者「お待ちを!私も行きます!」

用心棒の名前は葛原叉夜(クズハラサヤ)。
可憐な少女は小日向ことり(コヒナタコトリ)。
従者の名は名倉愛人(ナクラアイト)。

ぞろぞろと部屋を出て行く中、その場に残る者もいた。

ハーモニカの少女、茨菰薊(ホオズキアザミ)

薊「鳴海遥日(ナルミハルカ)…どうしたというの?」
先程部屋を飛び出した親友のフルネームを響かない声で一人呟いてみる。
当然、答は返ってこない。
それに、まるで周りの壁が息をしているんじゃないかと思うくらい、静かで息苦しい。
息苦しさを紛らわすために窓を開け放ち、ハーモニカを吹くのだった。

その部屋のドアの裏で様子を見ていた生徒会長男子、橘薫(タチバナカオル)は人間観察を趣味としている。橘は茨菰のハーモニカの哀しい旋律を聴きながら目を瞑った。

つづく。