ケース1と2はSクリニックで数回植毛を受けた方のヘアラインです。
ちょっとわかりにくいのですが、さわると植えつけた範囲全体が土手のように硬くもり上がっています。特に1の方の場合にはもともと頭皮が柔らかいこともあって、横方向にも畝のように波状にもり上がっていて、その頂の部分の移植毛は左右に分かれて薄く見えています。とても違和感が強い状態です。
このようなケースは大きな株を使うクリニックで時折見られリッジング( Ridging )といいます。
私の知る限りこの“失敗”は今まで語られたことはなかったと思います。
つまりここで初めて登場した言葉というわけです。
リッジングとは?
植毛医でさえこの現象はほとんど知られていませんが、リッジングの意味は辞書をひくと隆起、尾根、山脈、波がしらなどとなっています。
生え際の植えつけた範囲が帯状に隆起している状態で、パンチ式植毛の時代ではけっこう見られたのですがFU株の時代にはほとんどなくなりました。失敗の全滅危惧種というわけです。
ただ今でもダブルフォリキュラー株によると思われる軽い程度のケースは時々見受けられます。
なぜリッジングが起こるのか
受ける方の体質は大いに関係しています。植えつける範囲に株のボリュームが加わるためにふくらむというのは一見説得力がありますが、FU株による高密度植毛でもこの現象はないのでそうともいえないようです。
むしろ大きなニードルやブレードあるいはパンチをつかったために頭皮組織に過大なダメージが加わり線維化がおこったためだと考えられます。
パンチ式植毛の時代には多発したといいましたが、国際毛髪外科学会が発行している『植毛フォーラム:Hair Transplant Forum』の1993年度版にこのテーマについての3名の有名な植毛医の論文がありましたので紹介しておきます。
リッジングの改善策は?
リッジングの予防策はMFU株をつかわないということになりますが、もし起こった場合は改善策としては、
(1)確実な解消策はその部分を切り取ってしまうしかありません。ただしこの方法を受けいれる方はほとんどいないと思います。
(2)ステロイドの局所注射。
(3)FU株をもり上がっている部分に植えてカモフラージュする。
などが考えられます。
リッジングは改善するのがむずかしくやっかいな状態です。なおケース2では(3)を行いました。