他院での自毛植毛の失敗、経過など写真付きで解説 -2ページ目

他院での自毛植毛の失敗、経過など写真付きで解説

自毛植毛の失敗で悩んでいる方 植毛のやり直しは任せてください
植毛はオーダーメイドでありその人に合った治療が必要です。
何より大事なことは、正しい知識と技術を持って治療することです。

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ケース1と2はSクリニックで数回植毛を受けた方のヘアラインです。
ちょっとわかりにくいのですが、さわると植えつけた範囲全体が土手のように硬くもり上がっています。特に1の方の場合にはもともと頭皮が柔らかいこともあって、横方向にも畝のように波状にもり上がっていて、その頂の部分の移植毛は左右に分かれて薄く見えています。とても違和感が強い状態です。
このようなケースは大きな株を使うクリニックで時折見られリッジング( Ridging )といいます。
私の知る限りこの“失敗”は今まで語られたことはなかったと思います。
つまりここで初めて登場した言葉というわけです。


リッジングとは?

植毛医でさえこの現象はほとんど知られていませんが、リッジングの意味は辞書をひくと隆起、尾根、山脈、波がしらなどとなっています。
生え際の植えつけた範囲が帯状に隆起している状態で、パンチ式植毛の時代ではけっこう見られたのですがFU株の時代にはほとんどなくなりました。失敗の全滅危惧種というわけです。
ただ今でもダブルフォリキュラー株によると思われる軽い程度のケースは時々見受けられます。


なぜリッジングが起こるのか

受ける方の体質は大いに関係しています。植えつける範囲に株のボリュームが加わるためにふくらむというのは一見説得力がありますが、FU株による高密度植毛でもこの現象はないのでそうともいえないようです。
むしろ大きなニードルやブレードあるいはパンチをつかったために頭皮組織に過大なダメージが加わり線維化がおこったためだと考えられます。
パンチ式植毛の時代には多発したといいましたが、国際毛髪外科学会が発行している『植毛フォーラム:Hair Transplant Forum』の1993年度版にこのテーマについての3名の有名な植毛医の論文がありましたので紹介しておきます。


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リッジングの改善策は?

リッジングの予防策はMFU株をつかわないということになりますが、もし起こった場合は改善策としては、

(1)確実な解消策はその部分を切り取ってしまうしかありません。ただしこの方法を受けいれる方はほとんどいないと思います。

(2)ステロイドの局所注射。

(3)FU株をもり上がっている部分に植えてカモフラージュする。

などが考えられます。
リッジングは改善するのがむずかしくやっかいな状態です。なおケース2では(3)を行いました。
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ケース1、2、3ともBクリニックで施術を受けた方の生え際の写真です。
同じクリニックでも担当医によってずいぶんと様相が違う生え際になることがわかります。

1、2は複数回の施術を頑張ったようで、しっかりと濃くなっています。
ただ失敗とまでは言えないにしても私は正直、違和感を覚えます。ノープロブレムとおっしゃるおおらかな方も多いとは思いますが。生え際はふつう少し薄い前列からしだいに濃くなるのですが、ケース1,2とも急に濃くなっています。表現しづらいのですが“人工的で”なんだかカツラやフラップ手術のヘアラインみたいです。
これはFU株より大きなMFU株が生え際2、3列目以降から植えつけられているためだと思います。

ケース3ではMFU株が列で生えていて、あたかも田んぼの畦のようにみえます。大きなスリットを使って密度を上げようと機械的に植えつけると、時にこのようになってしまいます。



MFU株とは?

第4回でふれたパンチ式植毛を今でも行っているクリニックはほとんどないと思いますが、現在でもMFU株をつかうクリニックは結構あります。歴史的にはマイクロミニ植毛までは医師が恣意的に希望する大きさの株に株分けする方法(cut-to-sizeといいます)でしたが、1994年にテキサスの皮膚科医リマーが顕微鏡を使って一個のFUごとに採取する“cut-to-FU”ともいうべきFU株の概念を発表し、現在はFUTとFUEがトレンドです。

2004年にカナダのアンガー博士が新しい株の分類法を提唱して、すべての株を一つのFUを含む株(FU株とそれより小さな株)と複数のFUを含むマルチフォリキュラー株(MFU株)に大別しました。パンチグラフトやミニグラフトも今ではMFU株の中に分類されていて、その最小のものはダブルFU株です。
ニューヨークのバーンスタイン博士は、インターネット上でMFU株という言葉を盛んにつかう植毛医達を批判して、『本質的にMFU株はミニグラフトと同じなので、紛らわしい言い方ではなくミニグラフトに統一した方が良い』といっています。



FU株とMFU株による複合植毛のどちらが良いのか?

極言すればFU株のデメリットの大半は医師側にとってのデメリットで、MFU株を使った複合移植のデメリットのそれはうける側のものです。
MFU株には最低2つのFUの間の頭皮(hair less skin)も含まれ、複合移植ではそこに存在するかもしれない休止期のFUが温存されやすいのではないかという主張に対しては、リマー医師は『休止期の毛髪の大部分は拡大鏡下や肉眼でも確認できる』とそれを否定しています。
またMFU株は、FU株より濃く仕上げられるという主張もあり、それらの優劣についての討論が以前は盛んに行われました。

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FUによる新しい株の分類




2008年のモントリオールにおける国際毛髪外科学会総会で複合移植側に立ったストラウプ医師はMFU株を使う場合でも以下の注意が必要であると述べています。

・MFU株よりFU株を多く使うべきである。

・MFU株の周囲にFU株を植えてその不自然さをカムフラージュするべきである。

・黒髪では1回目の施術にMFU株を使うべきではないし、2回目以降の施術でも注意が必要である。

・MFU株は適切なサイズのスリットを使い、決して大きすぎたり小さすぎたりすべきではない。

・白髪や金髪の場合はMFU株を使っても不自然さは少ないので許容できる。

・へアライン付近にはMFU株を絶対に使うべきではない。

日本人は黒髪で径が太く(77μに対し白人は72μ)、毛髪密度が低く(80~90FU/cm2に対し白人は100FU/cm2)、また1つのFUあたりの毛髪数が少ない(1.7~2.0本/FUに対し白人は2.25本/FU)という人種的特徴があります。
そのため日本人ではMFU株の欠点の不自然さはより際立ち、MFU株のサイズが白人より大きくなるので植えつけ密度の点で不利となり、スリットが大きくなるので瘢痕化や既存毛の脱毛の危険性はより高くなります。
また一株あたりのヘア数が少ないために複合移植の利点といわれた濃さも得られにくく、FU株で高密度植毛した方が濃さにおいても有利であるというのが私の結論です。


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不自然さの解消法は?

(1)ヘアラインを下げて濃すぎる範囲をぼかす

(2)MFU株の一部or全部をFUEの要領でくり抜いて、それをなるべく再利用する

(3)FUTやFUEによる密度アップを行う

ケース1では(1)で、ケース2では(2)で、ケース3では(3)を行っています。
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写真はAクリニックで植毛を受けた方のヘアラインですがこれをご覧になっている方は違和感を感じると思います。いくつもの“失敗”が重なった生え際の典型例です。


不自然に見える原因は?

1)生え際が直線すぎる
生え際は直線ではありません。多くの場合には真中にいわゆる“富士額”といわれるピークはあって、よく見るとピークの外側に少し小さいピークがあります。その3つの大きなピークの他に小さな無数の凹凸があって不規則なヘアラインを形成しています。


2)ソリが不自然
思春期までは男女とも同じような形の女性型に近い生え際ですが、成人に近づくにつれて男性は額の生え際とコメカミの生え際が作る角度は90度かそれより小さくなっていきます。もちろん成人後でも女性型に近いパターンの方もいらっしゃいますが少数派です。ちなみにアメリカのクリントン元大統領はこのタイプです。このタイプは幼児型の生え際とされており、口の悪いアメリカの植毛医はApe’s hairline つまり“おさるさんの生え際”などと揶揄しています。
植毛を受ける方は往々にしてこの形の生え際を希望しますが、年をとっても移植毛は生え続け、その時には違和感が出るとして原則としては男性の方にはすすめません。担当医はこのルールを知らなかったに違いありません。


3)大きな株をヘアラインの前列に植えつけている
生え際は少し薄く見えて奥にいくにつれてしだいに濃くなっていきます。女性の場合には産毛からそうなっていく方が圧倒的に多いと思います。自然のこういった状態を再現するために生え際には細い1本毛をつかうべきですが担当医はこのルールを知らなかったに違いありません。1~3のケースではこれみよがしに大きな株を最前列に植えつけられています。


4)移植毛とコメカミの既存毛の境がハッキリして不自然
コメカミのヘアは細く1本毛が多いのですが、額の生え際だけを植えつけるとそこの境界がすごくはっきりします。なんだか帽子を被ったように見えるはずです。濃くできても不自然であれば良い植毛とはいえません。


5)まばらな植えつけ
まばらで大きい株が植えられているととても不自然です。普通そのような状態は存在しませんから。

6)ピットスカー
ピットスカーについては、「第3回株の根本の凹みが気になる」に詳しく記載しております。


1~5の各々については、いずれもっと詳しくふれる機会があると思います。担当医はこの6つの“失敗”を同時におかしてしまっているわけです。


不自然さの解消法は?

(1)もったいない話ですが移植毛を脱毛して男性型の生え際にする。その場合には針脱毛ないしレーザー脱毛を用いるかFUEでくり抜いて再利用します。

(2)コメカミの生え際にも移植毛を植えつけて額の生え際との境界をぼかします。

(3)前回の範囲に再度植毛を行って密度を上げます。

(4)最前列の2本の株より前に1本毛を植えます。

(5)最前列の大きな株の根元に絶縁針を挿入して針脱毛して脱毛するor1本毛にするor産毛化します。



修正にはいろいろなシナリオがある

修正には患者さんの希望が優先されると思います。前回作った生え際のデザインを変更するのか?しないのか?をよく確認することが大切です。

今回は3つのちがった修正のシナリオを紹介します。
・デザインを変更したケース
・デザインを変更しなかったケース
・もとの状態に戻して欲しいといわれたケース

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ケース1は(1)(2)(3)(4)(5)を同時に行いました。①移植毛を針脱毛で抜去して②コメカミにも植えつけを行い③全体的に密アップを図りました。(写真は修正前のデザイン)




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ケース2は希望によって密度アップだけを図りました。(写真はアフター)
 
ケース3は植毛はもうしたくないということで前回の移植毛をすべて針脱毛とレーザー脱毛の併用でもとの状態に戻しました。このようなケースは以前はごくまれだったのですが少しづつ増えてきたように思いますしとても気になる傾向です。
パンチ式植毛とは?

パンチ式植毛の始まりは戦前の日本人医師奥田庄二先生からといわれていますが、1959年にニューヨークの皮膚科医オーレントリックがそれをAGAに応用して以来30年以上にわたって行われ続けました。


3、4ミリ径のパンチを使って頭皮から直接一株一株くり抜いた株を、少し小さい径のパンチ穴でくり抜いた薄毛の範囲に植えつける方法で、原理としてはFUEと同じです。
通常これをオセロゲームのように3、4回繰り返して薄毛の範囲を埋めていったわけです。当院でもかなりのケースを行ったのですが、某カツラメーカー経営のクリニックチェーンでは一株5万円ほどだったとのことで、数回の施術は費用的に難しかったようです。

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この方法は一回の施術だけでは植えつけた部分が田植え状になり、私達日本人の黒髪では不自然さが特に際立つことになりました。
これが日本で人工毛の盛んになった理由かもしれません。
その当時当院ではスタンプ法といってパンチを列にデザインしてそれを帯状に一塊に切り取って線の傷にしたのですが、他院のそれは俗に“ショットガン”で撃たれた傷跡と揶揄されるような瘢痕になりました。

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パンチ式を失敗といえるのか?

90年代始めまで植毛イコールパンチ式だったので“失敗”という言葉は使えません。問題なのはつい最近までこれを行った事例があることです。
21世紀にパンチ式を行っていたとしたらやはり“失敗”といえるのかもしれません。明らかに行った医師の勉強不足といえます。


不自然さの解消法は?

今でもパンチ式植毛を受けて不自然さに悩む方はいらっしゃいますが、今回どのようにそれを解消したら良いのかその方法を紹介します。

(1)FUTやFUEによる密度アップ
パンチグラフの周りにFU株を植えてボリュームアップをはかる。ただこれはそんなに簡単ではなく複数回の施術が必要なことが多いと思います。

(2)パンチグラフトの部分切除とその再利用
パンチグラフトの一部をFUEでくり抜いて株を小さくして、くり抜いたFU株はなるべく再利用して薄毛の所に植えつけます。

(3)頭皮の切除と植毛による瘢痕のカモフラージュ
パンチグラフトの頭皮に凹凸が出きて影を作る、つまり大きなピットスカーができたら頭皮自体を切り取って線の傷にして、傷にFU株を植えつけます。

(4)ドナー部分の傷跡部位にFUTを行うと丸い瘢痕が線の傷に置き換わって悩みは解消します。その線の傷が気になればそこにFUEを行います。


【ケース1】(1)で改善したケース

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【ケース2】(1)と(2)で改善したケース

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写真の数々は某クリニックで植毛を受けた方の移植部分のクローズアップです。移植毛の根本がへこんで影を作っているのがわかります。これをピットスカーといいます。ピットスカーは植えられた株が頭皮表面から陥没して光が当たるとそのへこみが目立つ状態で次の原因でおこります。

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(1) 植えつけのスリットやパンチが株よりも相対的に深すぎるために、株が沈み込む。

(2) 植えつけのスリットやパンチが株よりも相対的に大きすぎるために、株が沈み込む。

これはミニグラフトを使ったマイクロ・ミニ植毛の時代ではよく見られ、当院でもかなり以前には掲示板やほかのサイトで指摘されたこともありましたが、FU株を使うようになった最近ではとてもめずらしくなりました。ただ今でも特定のクリニックのケースでひんぱんに見られます。経験不足や乱暴な(?)な操作を行うとこのような状態がおこりますが、私はその犯人はパンチを使った植えつけではないかと思います。パンチでは深さの調節が難しいという点以外、頭皮に垂直でないパンチ穴の繰り抜きではパンチ穴が楕円形になってその断面の面積が大きくなるからです。

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パンチを斜めに使うと抜いた断面積が大きくなる

ちなみに毛皮角(頭皮と移植毛の角度)は小さいほうが濃く見えるとされていますが、そのように植えるためにはパンチは不向きです。それが理由でそのクリニックではこめかみへの植毛はできないはずです。ピットスカーが目立つこのクリニックの技術では、多くの場合ヘアラインの不適切なデザインと不自然な移植毛の配列(先端部に二本毛や三本毛がとても多く植えつけられているなど)が一緒に見られます。これらについては別の機会に語らせてもらいます。


ピットスカーの予防策としては、
(1) マルチフォリキュラー株は使わない

(2) 株のサイズに合ったスリットをつかう。

(3) パンチ穴を使わない。

(4) スリットを使うにしても、その深さを調節する工夫をおこなう。

改善策としては
ピットを作るクリニックはもともと高密度植毛ができないはずですから植えつけはまばらです。
移植毛の間に再度植毛を行って密度を上げると目立たなくなることが期待できます。その時にとてもひどいピットスカーにはパンチを使ってへこみを株ごとくり抜く( FUEと同じ要領です)とより目立たないと思い。


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もともと植毛手術は他の手術と比較して医学的な合併症は少ないといわれています。

ここでカリスマ植毛医として世界的に有名なアメリカのラスマン博士らが執筆した一般向け書籍“ Hair Loss & Replacement for Dummies”から植毛の合併症の頻度を引用しておきます。

◆手術中
麻酔剤へのアレルギー反応 …… 1%以下
不整脈 …… 1%以下
心臓発作 …… 0.0001%以下
しゃっくり …… 不明


◆手術後
血腫 …… 1%以下
感染 …… 1%以下
化膿性毛のう炎 …… 5%以下
ショックロス …… 不明
ドナー部の一時的なしびれ、あるいは知覚過敏 …… 永久に残るのは0.001%以下
一時的な顔面のむくみ …… 10%以下かそれ以上

これらはしっかりした研修をうけた医師が行うという前提の数字で、国際毛髪外科専門医の認定試験を受ける時にも救急医療の講習(BLSとACLS)が受験の際の必須条件になっているほどです。

植毛は安全な手術といっても良いと思います。ただ医療に100%はありませんし植毛を受ける方々でもともと持病のある方もいらっしゃいます。それらの方々に対応しなければならないのは当然です。


植毛は誰がやるべきか ?

よく聞かれる質問ですが、結論からいえば植毛は皮膚外科の手術ですから、それを行うべき医師の出身科目は形成外科か皮膚科ということになります。実際国際毛髪外科学会メンバーの3分の2以上がその2科目出身者、その他の出身科目が3分の1弱というデータになっています。日本は医師が研修なしに自由に診療科目を選択して標榜できますが、海外ではそのようなシステムの国はむしろ少数派です。フランスなどはサルコジ大統領になってから植毛は形成外科医に限るという規制ができて、ヨーロッパ毛髪学会を設立した世界的に超有名な植毛医も特例が認められずに、循環器出身の医師だったという理由でクリニックをパリからスイスに引っ越さなければならなかったという話も耳にしました。

一方日本では本来植毛を担うべき皮膚科や形成外科出身の植毛医はほとんど見当たらず精神科医や内科医もいます。極端な例では医学部を卒業してすぐに植毛を始めた専門分野を持たない医師もいます。彼らはヨーロッパのルールでは排除されるはずです。ただまあ結果が良ければ目くじらをたてる必要もないのかもしれませんが。

日本の形成外科医、美容外科医は長時間の退屈な(?)植毛に魅力を感じないのかもしれませんが、もう少し関心を持ってくれるとよいと思います。

また皮膚科医も従来は外科的な研修を受けなかったのでたいていの場合植毛が苦手です。ただ現在の研修制度は外科的な研修が義務づけられているのでそういったことはなくなってくるはずです。
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失敗は減らない!

植毛は比較的安全だとされるのは医学的な医療事故や合併症のリスクが小さいということであって、クレームというか、仕上がりに対する不満は必ずしも少なくありません。


最近の技術の進歩のために受けた方の満足度は向上すると思われていましたが、しかし実際にはそうなっていません。

植毛のドンと云われるオーストラリアのシール博士は10年前に『パンチ式からマイクロミニ植毛さらにFUTに至る技術革新にもかかわらずクレームの比率はほとんど変わっていないのは驚くべきことだ』と述べています。

以前には“発毛”という事実だけでも納得したかも知れませんが、しだいに結果に対する期待度も高まっていったということです。


なぜ植毛の失敗は多いのか?


ブラジルの友人の形成外科医は”形成外科の施術のうちで植毛が一番むずかしい”と言っていましたが、その理由は以下の特徴のためでしょう。

*植毛は結果が判定されるまで1年近くかかるので、自分の行った結果を確認できるまで最低1年の経験が必要になります。

*植毛はヘアラインのデザインをどうするかなど、他の施術よりもアーティスティックなセンスが必要な分野で、それはなかなか簡単に習得しにくいところです。

*拡大鏡を使う緻密で長時間の作業が必要です。自然さだけでなく十分な濃さという2つの目的の達成が必要になってきます。

*植毛の研修施設は少ないのでトレーニングを受ける機会を得るのが難しいことになります。ちゃんとした研修なしの初心者ではどうしても失敗が多くなります。植毛は他の医師の施術を見学しただけではうまくできません。

*十分な植毛の知識を得るためにはヘア関連の学会に出席が必須ですが、海外では言葉の壁もありますし、第一時間もなかなか採れないのが実情です。世界のトップクラスの結果を見ないと自分の結果との比較もできません。他店の旨いラーメンを食べたことのないラーメン屋の主人は自分のイメージしたラーメンしか作くれないのとおなじです。そんな店主に限ってこういって居直ります。”俺のこの味で客は来ているんだ、この味でなにが悪い!”と。

ある学会で某チェーンクリニックの植毛医がこう言いました。

”先生は100点を目指すかもしれませんが、私どもは平均点を目指します”。

100点をめざしても80点しかとれないこともあります。平均点の60点でよしとするとせいぜい80点、場合によって40点もあるでしょう。それでは患者さんがかわいそうです。


失敗にはクリニック毎パターンがある

美容的な不満足例つまり”失敗”には誰が見ても明らかなものもあれば、受けた方の主観はそうだが第三者からみると客観的には必ずしもそうともいえないものがあります。このブログではそのどちらのケースもあえて”失敗”と呼ぶことにします。

最近は当院の症例の半分近くは他院のやりなおしですが、それらを検討するとクリニック毎に一定の特徴があるのに気づきます。A クリニックなら大きな株による失敗、B クリニックなら不自然なヘアラインとか特徴があって、しかも1つだけの”失敗“ではありません。ヘアラインのデザイン、株の配置、植えつけ密度、角度などいくつもの”失敗“が同時に存在します。初診の時に一見しただけでどこのクリニックで施術を受けたか大体わかります。

同じ方法で行われるチェーンクリニックの中でも術者の癖や経験によって結果が大きく違い、例えばAクリニックでY医師が行ったのか、T 医師が行ったのか?は8割ぐらいの確率で言い当てることができます。植毛はもともと“個人技“といっても良く、チェーン展開が不向きな業界かもしれません。


失敗の修正は本当に難しい

どんな手術でも初回のそれよりも修正の方がずっと難しいものです。
それは以下の理由によると思います。

*植えつけ範囲には移植毛の定着率の低下というハンデがあります。

*植えつけ範囲にパンチや大きなニードル・ブレードによる植え付けがあると特に瘢痕化がひどくなって、高密度に植えられません。

*FUTや複合移植の場合ドナー部位の頭皮の伸び具合が悪くて採取幅を広くとれないので初回ほど移植毛が採れません。

*FUTや複合移植の場合前回のドナー部位周辺のFU密度が低くなっていて初回ほど移植毛が採れません。

*前のドナー部位の線の傷が汚いとそこからは多くの移植毛が採れません。

*前のドナー部位の線の傷が不適切でそこから再度移植毛を採ると傷が汚くなります。それは修正医の仕業に見られます。

*二回目のFUEは初回に比べて少し大変です

*大きな株を使った植え付けの後にFUTを行うと自然すぎて発毛自体がわかりにくいといった不満もありました。(笑) 

修正する医師は割に合わない役目を果たさなければならないことが多々あります。少々愚痴っぽくなってしまいました。