※こちらのお話しは個人的な妄想を題材にした、恋愛妄想小説です。ご理解頂ける方のみお進み下さい。






「今日の暑さヤバいなあ…な?」


「本当、どこまで暑くなるんだろうね…」



学校帰りの電車の中は外の熱気とは違い、束の間の涼を求めて学生たちが乗り込んでいた

いつもの車両、いつものドアに体を預ける自分に対して、周りの全てから守るように立つ目の前の彼は、汗を拭う仕草も嫌味なほど様になる


一緒に電車に乗り始めた頃には周りの女子高生から黄色い声も聞こえていたが、繰り返されてきたこの光景も今では日常に溶け込んでいるらしい



次の駅でドアが開いて母親に手を引かれ乗ってきた子供が横を通り過ぎる、その手には紫と赤の短冊が握り締められていた



「短冊か…なあ、」


「ん…?」


「お前だったら…何を願う?」


「俺?う~ん…願い…か…。あの位の頃は沢山の夢があって、願い事も沢山あったのに…言われてみれば何だろうと考えちゃうね?あ、俺よりも…翔くんの夢は…?」


「ああ…俺の夢か。…大切なものをずっと守りたい…かな?」



そう言って窓の外を見つめる眼差しは真っ直ぐで、何かを覚悟したような横顔が凄く大人に見えて、何故だか胸が苦しくなっていた








…ねえ翔くん、今夜は七夕だって

この時期になるとあの日の横顔を思い出す

あの時直ぐには答えられなかった願い事も、今は直ぐに答えられる

その願いが叶うのかは分からないけれど、それでもいつかは叶うと信じて今年も短冊に願いを込めた

見上げた夜空には薄らと星が輝いていた















 …いつか翔くんと逢えますように。 潤