※こちらのお話しは個人的な妄想を題材にした、妄想恋愛小説です。ご理解頂ける方のみお進み下さい。






 ーピッ…カチャ。



「入れよ…」


そこは幼い頃の鮮明な記憶の場所、懐かしさが漂うあの部屋だった



「ねえ本当なの?俺……聞いてないよ」


「…話してないからな」


「ふざけないで、…ちゃんと説明しろって言ってるの!」



今まで常に自分の前を歩いていた、その背中を目標に追い付きたくて必死だった、この先もそれが当たり前だと思っていた
ただし、そう思っていたのは自分だけなのだと思い知らされる


「大学を辞める…辞めてアメリカの大学に行く。だから親父の会社は継がない、全てを親父と弟に託した。俺には…向こうで学びたい事があるんだ」

「どう…して?」

「そうだなあ、何から話せばいいか…」


そして翔は話し始めた、かなり前から決めていたと
幼い頃は、大きくなったら父親の会社を継ぐものだと当たり前に思っていた
しかし、新しい母親との間に生まれた年の離れた弟の存在が、少しずつ自分の考えを変えていったと言う

別に母親や弟と仲が悪い訳ではない、父親も自分と弟を分け隔てなく育ててくれた
ただ、大きくなるにつれ家族の中で自分の居場所を探し始めていたらしい


「今となっては自分でも明確な理由なんて分からない。…反抗期とか、多感な年頃を迎えてたからなあ…斜に構えて見てたってわけ」

「…翔くん」

「勿論、今はそんな事を思わないけど。その頃かな…決められた道じゃなく、自分の力で…自分の足で歩いてみたい、誰にも文句を言わせないくらいでっかくなってやる!と思ったのは。それに…」

「…それ…に……?」

「ん?ああ…まあ、俺にもいろいろあんだよ。言わなかったのは悪いと思ってる、けど…この先どうなるのか自分でも分からないし、最悪な結果になったら格好悪いだろ?俺…ははっ」

「…………。」

「……泣くなよ、…お前に泣かれると決心が鈍る」

「な、泣いて…なんか…ない」


慌ててゴシゴシと涙を拭い、震える声で何かを言おうとしても無駄だった
自分の前から居なくなる現実と喪失感が、後から後から涙となって零れ落ちる

自分が知らない間に男として成長して、大事な事を勝手に決めて、何も言わずに居なくなる翔に対して言いたい事は山ほどある

でも潤は気づいてしまう、涙を流すほどの喪失感も自分を置いて居なくなる事への怒りも全て、翔が大切な存在だからだと
ただの憧れではないと、初めて自分の気持ちを知ったことに戸惑いを隠せないでいた


「あ~あ、綺麗な顔が台無しだぞ。…少しでも、淋しいと泣いてくれるのか?」

「……少し…じゃない。…ズルいよ…だっ…て、…俺は」

「だって…俺は…?」


泣きながらも翔を見つめる瞳は真っ直ぐで、誰よりも美しくそして儚い
それを受けた翔もまた、真っ直ぐに潤の瞳を見つめ返す


「……ふっ、ったくお前は…」

一瞬だけ微笑んだあと俯いて、次に顔を上げた時の翔の強い眼差しに息を飲む


「………っ、」

絡む視線はそのままにゆっくり進み、潤の前で歩みを止めた翔
 伸ばされた手が頭に触れたかと思えば直ぐに、後頭部をぐっと引き寄せ潤を腕の中に捕らえた

今までもこんな事は数え切れないほどあった
躓いて倒れそうな体を引き寄せられたり、満員電車の中で人混みから守るためだったり…
でも今は違う、自分の気持ちに気づいてしまった今は切なさが心を占めていた


「…翔…くん…?」

「ちょっと、黙ってろ…」

速く大きくなる心音が潤の全身を包んでゆく、そこに聞こえてきたもう一つの心音が重なる


「……はぁ…、俺もまだまだ…だな」

「………?」

「………潤」

「なぁ……に…?」

「…マーキング、させろ」

「はあ?何言ってんの?今は真面目な話をしてんの!それに前にも言ったけど、俺は電柱じゃ………んっ」


抗議のために顔を上げた潤の唇は、言葉と共に翔の唇に塞がれた















こんばんは。読んで頂きましてありがとうございます。
初めに、先日のアメンバー募集に申請を頂きまして、ありがとうございました<(_ _)>
新しくアメンバーさんになられた方々、宜しくお願い致します。
また、今回は色々な都合で承認出来なかった方々、申し訳ありませんでした。次回お待ちしております。

それからお話しですが、明日、明後日とアメ限になります。ソフトな感じですので大丈夫です。
そして21日(金)は私の都合でお休みします。重ね重ね申し訳ありませんが宜しくお願い致します<(_ _)>


本日もありがとうございました<(_ _)>