※こちらのお話しは個人的な妄想を題材にした、妄想恋愛小説です。ご理解頂ける方のみお進み下さい。






「……大…丈夫か?」


「うん…」



沈黙が続く気まずい空気の中で、俯散らばったノートや筆箱を俯いたまま拾い上げていた

何かをしていなければ、怖さが体を包み震えてしまいそうだったのだ



「…潤?」


「……っ!」



後ろから不意に肩を掴まれ、体を強張らせた事で潤の心情を翔も知ることになる



「……やっ、」



一度は離れかけた手が今度は両肩を掴み、ゆっくりと向き合うような体制になるも震えは止まらない

例え相手が翔だと分かっていても、今は誰かに触れられる事に拒否反応を示してしまう



そんな潤の反応を分かっていながらも、翔は肩に置いていた手をゆっくり動かして、壊れ物を扱うように優しく頬に触れ目を合わせてこう告げた



「潤?…俺が分かるか?目の前にいるのが誰か分かるか?」


「しょお……くん…?」


「そうだ、…俺だよ。もう大丈夫だから、もう…」


「…っく、……うぅ……」



ぽろぽろと真珠のような涙を流す潤を見つめる翔の顔は、苦悶に満ちていた

涙で滲む瞳では翔の顔が歪んで良く見えない、だからじっと見つめていた



「…ん?」


「どう…して…ここに…?」



たまたま自習の時間だった翔は、午後から生徒会室を使用する前の準備として確認の為に出向いていた

廊下の角を曲がった所で潤の声と、三人がこの部屋に入って行くのに気がついたと言う



「…あり…がとう、…しょ…くん」


瞬きする度に一つ、また一つと玉のような涙を流し、未だに微かに震えている唇が言葉を紡ぐ

上手く笑える事など出来る筈もないのに、それでも心配させまいと笑顔を作る潤を見ていた



「……潤」


「……しょお、く……っ」



ゆっくりと顔が近づく

唇に優しくふわりと人肌の温もりが触れ

その温もりが潤の強張る体を、震えを溶かしてゆく



 …安心する

 …凄く温かくて

 …柔らかくて

 …甘くて、しょっぱくて

 …胸が…ぎゅっとする

 …翔くんの…唇って

 …ん?…しょおくんの…

 …くち…びる……?



「……ぷは、…ハア…ハア…な、な、何して///」


「何って?…お前が泣いてるから…キスしたんだよ」


「キ、キ、キ、……キス!?///」


「ああ、お前の涙を止めるのは…俺の役目だからな」


「えっ、………あ、」



それは遠い昔、初めて出逢ったあの日

『お前が泣いてるから』と頬にキスをしたあの日の出来事と重なった



「だ、だからって…お、俺の…は、初めての…あっ!」


「へぇ…初めてか、…そうかそうか…ふふふ」


「俺は…翔くんとは違うの!」


「涙も震えも…止まったようだな。お前の初めてね…でも、俺は謝らないからな」


「…しょおくん……?」


「早く来いよ、先生の処へ行って一緒に謝ってやるから」


「いいよ、その位自分で、」


「俺はこれでも、先生方からの信頼は厚いんだ。つべこべ言わずに着いて来い、行くぞ」


「…むぅ。」



部屋から出て行く背中を見ていた

謝らないと宣言する意味が潤には分からなかった



…そしてもう一つ

胸に灯った温かく甘い優しさと、相反する少ししょっぱい切なさの意味が分からないでいた

あの瞬間、自分に生まれた感情は何だったのか、それを知るのはもう少し先の事だった
















こんばんは。

本日もありがとうございます。


ええと、明日から少しの間お休みを頂きます。

この先の展開を丁寧に書きたいことと、ストックも残り少なくなってきことで時間を頂きたいと思います。

申し訳ありませんが、宜しくお願い致します<(_ _)>


その間にアメンバーの募集を考えています。

宜しければご検討下さいね。




 本日もお付き合い下さり、ありがとうございました。