※こちらのお話しは個人的な妄想を題材した、恋愛妄想小説です。ご理解頂ける方のみお進み下さい。






「生徒会があるから今日は一緒に帰れないぞ、気をつけて帰れよ」

「そんなに一緒に帰らなくても大丈夫だって…俺だって成長してるし、それに…」

「ああ分かった、分かった。本当はお前も生徒会に入れたいけど…それは追々な?とにかく、気をつけて帰れ、じゃあな」


入学してから予定がない日もある日も、こうして教室まで来る事も数知れず
翔が高等部へ、潤が二年生になってもこの光景は続いていた
あれ程ザワついていたクラスの生徒も今では見向きもしない


「相変わらずの過保護だね、翔さんは」

「カズ…」

「翔さんが居ないのなら、今日は私と帰りませんか?家の車で送りますよ…たまにはいいでしょう?」

「え?…いいの?」

「…はい、遠慮なく」

「ありがとう!」


一緒に帰っていた翔から、解放された嬉しさと、それとは反対に淋しいような...??
むむっ!ぶんぶんと頭を振りあり得ない思考を逃し、気持ちを切り替えた潤は


「カズ…帰りにどこか寄らない? …甘い物を食べたいなあ……だめ?」

「甘い物ですか、……もう充分に摂取しましたと言いたいところだけど、 潤くんと久しぶりのデートだから行きますか?」

「ん?いつの間に甘い物を食べたの?でも、やった!カズ、大好き!」

「はいはい、私もですよ」


持つべきはものは友だち、いや親友のカズだと改めて思う瞬間だ
こんなぽわぽわした時を過ごしていた潤に、その日は突然やって来た



ーーーーー



「あっ!…忘れ物した、カズ、先に行って?」

「一人で大丈夫?」

「うん、あ、でも…先生に遅れると伝えてよ」

「仕方がありませんね、分かりました」


初等科では同じクラスになれなかった二宮とも、中等部では一緒だった
特別教室は高等部の校舎内にあり、中等部の生徒たちも使う事になる


 …鍵を取りに行かないと


特別教室に全員が移動すると、教室には鍵が掛けられ職員室で管理される
忘れ物をした場合には一度職員室に鍵を取りに行き、教室に開け鍵を閉めてまた職員室に戻す事になる

始業のチャイムが鳴ってから大分経ってしまった
早く教室に行かなければと中等部と高等部の境目、あの生徒会室の前を歩いていた


『あれ~サボりか?』

授業中にも拘わらず、前方から高等部の生徒らしき三人が歩いてきた
俯いて目を合わせず通り過ぎようとした潤の前に、三人が立ちはだかる


『…ん?…お前…良く見たら中等部の入学式にいたヤツじゃん…なあ?』
『ああ…コイツ、初等科の時にたしか…あ、『姫』って呼ばれてたよな?』
『へえ~確かに綺麗な顔してんな』

「…急いで いるので通してもらえませんか?」


この頃には入学当初に翔から言われた『お兄さんたちに気をつけろ』の意味も薄々分かっていた
ただそれは『お兄さんたち』だけてなく、時には同級生や後輩も含めてなのだが


『もうこの時間だぜ?お前…確か櫻井と仲いいよな?俺たちとも仲良くしようじゃないか、んで…櫻井に言ってくれないかなあ』


務めて冷静で慎重にを心掛けてはいたが、翔の名前を出された途端にすうっと心に何かが落ちた


「はあ?」

不機嫌極まりない声で返してしまった事を後悔しても遅かった