※こちらのお話しは個人的な妄想を題材にした、妄想恋愛小説です。ご理解頂ける方のみお進み下さい。






「なあ、」


「ん…?」


「お前……迎えは?」


「来ないよ、…電車だし」


「マジで?おじさんたち良く許したなあ」


「もう中学生だよ?当たり前だよ」


「そうか…そうだな、…じゃあ途中まで一緒に帰るか」


「……っ、」



不意に頭に置かれた手が幼い頃からの記憶と重なり、未だに子供扱いされた事を不満に思う

この学校の多くの生徒は送迎付きである

両親は電車で通うことに対していい顔はしなかったが、翔が車を利用せずに電車で通っていることを知り自分もと、社会勉強だと適当な理由を付けて納得させたのだった



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「………ん?」

多くの学生が乗るこの時間帯、周りの学生たちの視線が二人に集まっている


「…どうした?」

「いや、何となく見られているような…」

「そうか?」

「うん、今だって…」


今まさに会話している二人を見て、『きゃ』とか『わぁ』』とかの声が聞こえ、その多くが女子学生の物である


「ん…?…何だよ」

「…別に」


恐らく、いや確実に注目の的である翔と目が合い、慌てて見ていた視線を横に逸らす
離れていた二年の間もきっと、こうして過ごしていたのだと安易に想像ができた


「翔くんて…モテるんだね?皆が見てる」

「まあな…否定はしない。けど今日は俺じゃなくて…潤、お前だよ」

「……は?ちょ、ちょっと近いよ、翔くん///」

「…クスクス……気にすんな、ただのマーキングだから」

「……???俺…電柱じゃないけど…」

「……ぷっ、あはははっ…お前はそのまんまでいろよ」


『潤、お前だよ』と耳元に近づく顔に周りの反応が大きくなり、ふわりと頭に置かれた手に更に反応は大きくなる


この時初めて二人の立ち位置や距離の近さに気づいた潤、さほど混んでいない車内のドアの脇、手摺りの所に立つ潤を庇うように隠すように立つ翔に…



 …むぅ。


守られているような子供扱いされた事に少しばかり睨み返しても、当の本人はどこ吹く風だ
反対に目を細め綺麗に弧を描く口元に、大人の余裕が見てとれた


窓の外を流れる景色に目を移し、人知れず小さく溜め息をついた潤だった