※こちらのお話しは個人的な妄想を題材にした、妄想恋愛小説です。ご理解頂ける方のみお進み下さい。






入学式の後、学校生活の指導や時間割などクラスでの簡単なホームルームも終わり帰り支度を始めていた

すると教室の後ろ扉の辺りが何やら騒がしくなる

何かあったのかと気になりつつも荷物を纏める手は止めないでいた



『松本くん、…櫻井先輩が呼んでる』



クラスメイトに呼ばれ振り返り顔を向ければ、『よっ、』と片手を挙げて扉にもたれ掛かるその姿に深いため息しか出ない

その姿を見なかった事にして、席を立ち鞄を手にそのまま横を通り過ぎようとして



「待てよ、話があるから」


「…俺にはないよ」



歩き出した潤の腕を取り行く手を阻む翔に、これ以上ここでの遣り取りは無用だと諦め一緒に歩き出した

クラスの生徒が『あの二人は幼馴染みだから』『昔からだよね』とひそひそ話す声が聞こえる



「時間は…?」


「…大丈夫」


自分で連れ出しておきながら、こうして相手を気遣う所は昔のままだ、そこに爽やかさが加わった今は見た目も人柄も最強だろうと思う

一通り学校を案内された後に、最後に一つの扉の前に立つ翔

そこは中等部と高等部の境目にある、合同の生徒会室だった



「何かあれば…俺は此処にいるから…」


「何かって?何でわざわざ…そんな事を」


「お前…あんま目立つなよ?」


「は?」



自分の存在が目立つなど思ってはいない潤

それよりも、自分にその言葉を投げ掛けた目の前の男の方が遙かに目立つと思うのに



「言ってる意味が分かんない、…目立ってるのは…翔くんでしょ、」


「俺はいいの、俺は。あのな、式の時に上の…高等部のお兄さまたちがさ、アヒルの中に白鳥がいるぞって騒いでたから念の為な?」


「…もっと意味分かんない、それは俺の事じゃなくて…新しく入った先生とかじゃない…?」


「本当にお前は…ま、とにかく気をつけろよ、いいな?」



初等科から大学まであるこの学校は、男女共に机を並べるのは初等科までで、その先の中等部や高等部は男子校と女子高に別れ大学でまた共学となる

だから翔が言う『白鳥』が、自分を指し示す事だとは1ミリも思っていなかった



隣を歩く横顔を一歩後ろから眺めている

会わずにいた二年という時の流れは翔を変えた

前を見つめる瞳は強く自信に溢れ、成長した端整な顔立ちが大人の落ち着きを見せていた



 …何だかズルいよな。



縮まるどころか自分との違いが開いてゆくのを感じ、恨めしげに見ていた